映画評「華麗なるギャツビー」(2013年版)
☆☆☆(6点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督バズ・ラーマン
ネタバレあり
7~8年前に原作を読み、5年前に1974年版を再鑑賞してさほど年月を経ていないので、お話は大体記憶していた。面倒臭いので、ストーリーは74年版からほぼそのまま引用する。
従妹デイジー(キャリー・マリガン)が富豪の夫トム・ブキャナン(ジョエル・エドガートン)と過しているニューヨーク郊外のロングアイランドに中西部から越してきた作家志望の証券マン、ニック(トビー・マグワイア)が、彼の家の隣で日夜パーティーが繰り広げられる豪邸に住む主ジェイ・ギャツビー(レオナルド・ディカプリオ)に興味を持つ。
やがて、ギャツビーが戦争へ行っている間にトムと結婚した昔の恋人デイジーを取り戻そうと密造酒の販売や麻薬取引などで金持ちになり、チャンスを狙っていることが判って来るが、ギャツビーの車を運転するデイジーが接近してきたトムの浮気相手マートル(アイラ・フィッシャー)を轢き逃げするという事件が発生、ギャツビーは嘘を教えられた彼女の夫ウィルスン(ジェースン・クラーク)に射殺される。
物質的豊かさを頂点とした射幸心に溺れる者が迎える悲劇で、その中にジャズ・エイジと言われた1920年代の退廃と虚飾を浮かび上がらせたF・スコット・フィッツジェラルドの代表作の6度目かの映像化で、74年版を別にすると「暗黒街の巨頭」(1949年)が有名。ロマンティシズムを求める男性と現実主義の権化の正体を現す女性との対照も一大テーマになっていると思う。
監督がバズ・ラーマンだからとにかく絢爛たる映像が繰り広げられるが、映像がやたらに動き回りVFX処理をしているのが見え見えなのでどうも白けた気分が先行した。
そこに加えて1920年代ではなく21世紀の音楽が乗るから益々白ける。「ムーラン・ルージュ」はミュージカルだから時代の違う音楽でも楽しめたが、純ドラマとなるとそういうわけには参らぬ。中盤近くなってガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」がかかり漸く気分が出て来るのでは遅すぎる。
配役は概ね74年版の方ががっちりしているが、ミア・ファローはさすがに世紀のミスキャストと今でも思う。今回のキャリー・マリガンはそれよりは大分良いもののやはり些か庶民的に過ぎる。ギャツビーは五十歩百歩でどちらも満点を進呈できないが、好みでロバート・レッドフォードを推しておきたい。
そう言えば、マートルを圧倒的な下種ぶりで演じたカレン・ブラックが昨年亡くなった。大したニュースにならなかったが、70年代半ば物凄い演技派として絶頂だった。意外と早く話題作に使われくなったのは今でも不思議である。
21世紀米国文学で一番最初に読んだのは、ヘミングウェイでもスタインベックでもなく、フィッツジェラルドでした。
2013年アメリカ映画 監督バズ・ラーマン
ネタバレあり
7~8年前に原作を読み、5年前に1974年版を再鑑賞してさほど年月を経ていないので、お話は大体記憶していた。面倒臭いので、ストーリーは74年版からほぼそのまま引用する。
従妹デイジー(キャリー・マリガン)が富豪の夫トム・ブキャナン(ジョエル・エドガートン)と過しているニューヨーク郊外のロングアイランドに中西部から越してきた作家志望の証券マン、ニック(トビー・マグワイア)が、彼の家の隣で日夜パーティーが繰り広げられる豪邸に住む主ジェイ・ギャツビー(レオナルド・ディカプリオ)に興味を持つ。
やがて、ギャツビーが戦争へ行っている間にトムと結婚した昔の恋人デイジーを取り戻そうと密造酒の販売や麻薬取引などで金持ちになり、チャンスを狙っていることが判って来るが、ギャツビーの車を運転するデイジーが接近してきたトムの浮気相手マートル(アイラ・フィッシャー)を轢き逃げするという事件が発生、ギャツビーは嘘を教えられた彼女の夫ウィルスン(ジェースン・クラーク)に射殺される。
物質的豊かさを頂点とした射幸心に溺れる者が迎える悲劇で、その中にジャズ・エイジと言われた1920年代の退廃と虚飾を浮かび上がらせたF・スコット・フィッツジェラルドの代表作の6度目かの映像化で、74年版を別にすると「暗黒街の巨頭」(1949年)が有名。ロマンティシズムを求める男性と現実主義の権化の正体を現す女性との対照も一大テーマになっていると思う。
監督がバズ・ラーマンだからとにかく絢爛たる映像が繰り広げられるが、映像がやたらに動き回りVFX処理をしているのが見え見えなのでどうも白けた気分が先行した。
そこに加えて1920年代ではなく21世紀の音楽が乗るから益々白ける。「ムーラン・ルージュ」はミュージカルだから時代の違う音楽でも楽しめたが、純ドラマとなるとそういうわけには参らぬ。中盤近くなってガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」がかかり漸く気分が出て来るのでは遅すぎる。
配役は概ね74年版の方ががっちりしているが、ミア・ファローはさすがに世紀のミスキャストと今でも思う。今回のキャリー・マリガンはそれよりは大分良いもののやはり些か庶民的に過ぎる。ギャツビーは五十歩百歩でどちらも満点を進呈できないが、好みでロバート・レッドフォードを推しておきたい。
そう言えば、マートルを圧倒的な下種ぶりで演じたカレン・ブラックが昨年亡くなった。大したニュースにならなかったが、70年代半ば物凄い演技派として絶頂だった。意外と早く話題作に使われくなったのは今でも不思議である。
21世紀米国文学で一番最初に読んだのは、ヘミングウェイでもスタインベックでもなく、フィッツジェラルドでした。
この記事へのコメント
最近では「マーダー・ライド・ショー」の殺人鬼一家のお母さん役が印象に残っています。映画自体はB級ホラーになりますかね。
フェイ・ダナウェイとカレン・ブラックは、70年代のスターという印象が強すぎて、それで後年損しているのかなあ、と。日本だと、桃井かおりというのが、そういうかんじでしょうか。
カレン・ブラックは、フィルモグラフィーを調べると、コンスタントに作品には出ていたのですが、日本の配給会社が輸入して劇場公開するレベルの作品が殆どなかったようなんですね。演技力は抜群だったけどなあ。
その点はフェイ・ダナウェイは大分マシで、主演はともかく一応メジャー映画には出ていました。80年代に一時の勢いが急激になくなった感は否めませんが。
個性的すぎると、飽きられるのも早いということがあるのかもしれませんね。
両親のおかげなんでありますな~
>ミア・ファロー
父親はちょっとした監督だったジョン・ファロー、母親は「ターザン」のジェーン役でお馴染みのモーリン・オサリヴァン。
「フォロー・ミー」など若い時はエキセントリックな役に使われると面白い女優でしたが、「ギャツビー」はいかんかったなあ(笑)