映画評「ローマでアモーレ」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2012年アメリカ=イタリア=スペイン合作映画 監督ウッディー・アレン
ネタバレあり
毎年コンスタントに作品を発表しているウッディー・アレンの群像コメディー。「ロシアより愛をこめて」をもじった原題"To Rome With Love" が洒落ている。
国内外を問わずローマにやって来た、若しくは住んでいるカップルのてんやわんやを人物を交錯させることなく、セム・オムニバス形式で展開する。
娘がローマの若者と結婚することになったアメリカのクラシック音楽関係者ウッディー・アレンは婿候補の父親(葬儀屋)がもの凄い歌唱力を持っているのに驚く。が、彼はシャワーを浴びていないと上手く歌えないので、オペラ舞台でもシャワーが導入され珍演出が行われる。歌は評価されるが、演出はこてんぱんに批判される。
ジャズ中心だったアレンの映画でアリアがたっぷり聴けるのも何だか妙な印象を受けるオールド・ファンであります。音楽と言えば、かの「ボラーレ」から始まり、「アリヴェデルチ(さらば)・ローマ」もかかり、正にローマ気分満点。
新婚カップルの夫君アレッサンドロ・ティベリが誤解が元で娼婦ペネロペ・クルスと付き合う羽目になり、町で携帯電話を落とした夫人アレッサンドラ・マストロナルディのほうは町をうろうろするうちにスター俳優にホテルに連れ込まれそこへ強盗へ現れ、予期せぬ方向へお話が進んでいく。
若い建築家ジェシー・アイゼンバーグが恋人の友人エレン・ペイジに魅力を覚えていく。このカップルのお話は非常に単純なのだが、異化効果を狙ったような演出が非常に興味深い。
彼は有名建築家アレック・ボールドウィンと街角で出会うのだが、彼が未来のアイゼンバーグと解釈できる作り方をしているのである。内心の声としてボールドウィンがアドバイスをしているように思われるのは、彼が突然フレーム・インしてくるからで、話し手への俳優の顔の向きを含めて、試みとしてはなかなか面白い。
最後は、「変身」のグレゴール・ザムザが害虫になった如くある朝起きてみると有名人になっていたロベルト・ベニーニがパパラッチ等に追われて大変な目に遭うが、ある時突然に無名の人に戻る。
「あなたは有名であることで有名なのです」という不条理な台詞が傑作で、有名であることに関する諧謔がたっぷり味わえ、お話自体はこれが一番秀逸だろうか。
全般的に前作「ミッドナイト・イン・パリ」ほどの捻りがなく、いつも通りのお話という感が強く☆★は程々に留めたものの、☆★から受けるであろう印象よりは楽しめた。
それほど傑作でなくてもアレンは保存しているです。
2012年アメリカ=イタリア=スペイン合作映画 監督ウッディー・アレン
ネタバレあり
毎年コンスタントに作品を発表しているウッディー・アレンの群像コメディー。「ロシアより愛をこめて」をもじった原題"To Rome With Love" が洒落ている。
国内外を問わずローマにやって来た、若しくは住んでいるカップルのてんやわんやを人物を交錯させることなく、セム・オムニバス形式で展開する。
娘がローマの若者と結婚することになったアメリカのクラシック音楽関係者ウッディー・アレンは婿候補の父親(葬儀屋)がもの凄い歌唱力を持っているのに驚く。が、彼はシャワーを浴びていないと上手く歌えないので、オペラ舞台でもシャワーが導入され珍演出が行われる。歌は評価されるが、演出はこてんぱんに批判される。
ジャズ中心だったアレンの映画でアリアがたっぷり聴けるのも何だか妙な印象を受けるオールド・ファンであります。音楽と言えば、かの「ボラーレ」から始まり、「アリヴェデルチ(さらば)・ローマ」もかかり、正にローマ気分満点。
新婚カップルの夫君アレッサンドロ・ティベリが誤解が元で娼婦ペネロペ・クルスと付き合う羽目になり、町で携帯電話を落とした夫人アレッサンドラ・マストロナルディのほうは町をうろうろするうちにスター俳優にホテルに連れ込まれそこへ強盗へ現れ、予期せぬ方向へお話が進んでいく。
若い建築家ジェシー・アイゼンバーグが恋人の友人エレン・ペイジに魅力を覚えていく。このカップルのお話は非常に単純なのだが、異化効果を狙ったような演出が非常に興味深い。
彼は有名建築家アレック・ボールドウィンと街角で出会うのだが、彼が未来のアイゼンバーグと解釈できる作り方をしているのである。内心の声としてボールドウィンがアドバイスをしているように思われるのは、彼が突然フレーム・インしてくるからで、話し手への俳優の顔の向きを含めて、試みとしてはなかなか面白い。
最後は、「変身」のグレゴール・ザムザが害虫になった如くある朝起きてみると有名人になっていたロベルト・ベニーニがパパラッチ等に追われて大変な目に遭うが、ある時突然に無名の人に戻る。
「あなたは有名であることで有名なのです」という不条理な台詞が傑作で、有名であることに関する諧謔がたっぷり味わえ、お話自体はこれが一番秀逸だろうか。
全般的に前作「ミッドナイト・イン・パリ」ほどの捻りがなく、いつも通りのお話という感が強く☆★は程々に留めたものの、☆★から受けるであろう印象よりは楽しめた。
それほど傑作でなくてもアレンは保存しているです。
この記事へのコメント
なんだよ~でありました。
アイデア倒れでありますな。
文字通り苦肉の策でしたね。
それを知らない批評家が真面目に批評するのが可笑しいのかも。