映画評「ベラミ 愛を弄ぶ男」

☆☆★(5点/10点満点中)
2012年イギリス映画 監督デクラン・ドネラン、ニック・オーメロッド
ネタバレあり

中学辺りから映画鑑賞と共に急速に本格的に傾倒した読書。一番早く惹かれたのはフランス文学で、その中でもモーパッサンは好きだった。しかし、読み返していないので一番お気に入りの「死の如く強し」を久しぶりに読もうかなあと思っていたところ、これもまた代表作たる「ベラミ」の映画化らしいのが放映されると知って観てみた。

お金も地位もない青年ジョルジュ・デュロワ(ロバート・パティンスン)が酒場で再会した軍隊時代の知り合いで新聞社会部部長をしているフォレスティエに推薦され、才能がないにも拘わらず雇ってもらい、社長夫人(クリスティン・スコット・トーマス)の入れ知恵で、文才あるフォレスティエ夫人(ウーマ・サーマン)に代筆して貰ってお金を稼ぎ、社交界の華たるクロティルド(クリスティナ・リッチ)と首尾よく懇ろになり、首が飛びそうになった頃フォレスティエが病死した為後釜になり、さらに社長夫人にまで手を延ばす。
 新聞社が派兵を反対する社説とは逆に派兵を進めて大儲けする陰謀を知った彼は中枢人物を姦通罪で失脚させ、社長の娘を強引にものにして実権を握ってしまう。

女性を踏み台に出世を企む青年が野望を着実に実現していく様子を描く内容は原作同様なかなか面白い。しかし、デクラン・ドネランとニック・オーメロッドの新人二人組監督の展開ぶりは拙速気味で若干粗いので、モーパッサン本来の残酷さを味わう余裕がなく物足りない。英国製の為フランス的ムードが希薄であることについては文句を言わないことにする。

依然苦手ではあるもののパティンスンにヤングアダルト映画を超える才能があることは「リメンバー・ミー」で確認できたが、クリスティン・スコット・トーマス、ウーマ・サーマン、クリスティナ・リッチの女優陣の前に多少影が薄いだろうか。

バルザック、スタンダールも良いなあ。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年04月27日 08:04
映画としては、もうちょいかな?ではありますが・・・・
良いものが生き残って古典と呼ばれ名作と呼ばれるんでしょうな~
先日もSF小説の古典ホーガンの『星を継ぐもの』が読んでほしい作品の1位に選ばれておりましたよ。
この小説も映画化して欲しいのですが、下手な脚本家や監督では無理で、いまだに誰も手を出しておりません。
オカピー
2014年04月27日 21:15
ねこのひげさん、こんにちは。

>『星を継ぐもの』
そうですか。
早速図書館蔵書を調べましたらありましたので、いずれ読んでみましょう^^

大昔の古典以上に比較的最近の定評ある作品の映画化は難しいのでしょうねえ。
愛着が評価を曲げてしまうことも多いので、やるなら出版早々にさっさとやってという感じ(笑)
「模倣犯」のバッシングは実にひどかった。原作など全く知らない僕には、それほどひどい映画ではないと思われましたが。

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