映画評「インポッシブル」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2012年スペイン=アメリカ合作映画 監督J・A・バヨナ
ネタバレあり
何もなければ21日にアップする予定であったが、水の縁か、我が家が水浸しになってしまい、今日にずれ込んだ。何とか気力を振り絞って書いてみます。
2004年末にスマトラ沖大地震が起きTVを通じて津波の怖さを目にした時6年と4か月後に日本がそれに類する大津波に襲われることなど、少なくとも僕は夢にも思わなかった。
本作は、タイの観光地で大津波に遭遇した夫婦と息子三人から成る一家族に起きた奇跡的な実話を映画化したものである。
襲われるのは、クリスマス直前に休暇でタイにやって来たユアン・マクレガーとナオミ・ワッツの夫婦とトム・ホランドを長男とする三人の子供たちで、ナオミとトム君は互いの生存を確認したものの、マクレガーと次男・三男の行方が解らない。胸と足に瀕死の重傷を負った母親は現地の人の親切で病院に運び込まれる。母に言われてトム君は自分たちと同じように家族を探している人に代わって病院内を駆け巡る。
他方、実は崩れたホテルで生き延びていたマクレガーは同じくほぼ無傷で済んだ息子2人を現地の人に預けて妻と長男を探す病院めぐりを始める。題名から想像がつくので結末を明かしてしまえば、一家は見事全員生還という形で再会するのである。
僕も人の子、この家族の力強く利他的で思想・行動は立派で、こうした人々だからこそ気の利いた天の配剤も起こり得たのではないかなどと思って胸を打たれてしまう。
しかるに、人は、実話と聞くとその感動を、知らず増幅させてしまう癖がある。映画を批評する際には、それを評価に加味すべからず。監督J・A・バヨナの展開ぶりもしっかりしていて十分“感動的”なお話であることは認めつつも、映画としてはいかにも曲がなさすぎる。単純なプロットにもかかわらず先を見続けさせる力があるとは言え、そこには実話という先入観がプラスに働いているのではないかと疑って、印象度より★一つ分マイナス。
映画の中ではどこの国民かはっきりしないが、実話の家族はスペイン人。ナオミ・ワッツ、ユアン・マクレガーという英米の俳優を使いながら何ゆえの実質スペイン映画なのかという疑問がこれで解ける。因みに、彼らは何故か日本居住者(という設定)らしく、そう考える人が他にもいらっしゃるように、3・11を念頭に置いての設定なのかもしれない。
雨に家がやられるとは・・・しかも人災・・・とほほ。
2012年スペイン=アメリカ合作映画 監督J・A・バヨナ
ネタバレあり
何もなければ21日にアップする予定であったが、水の縁か、我が家が水浸しになってしまい、今日にずれ込んだ。何とか気力を振り絞って書いてみます。
2004年末にスマトラ沖大地震が起きTVを通じて津波の怖さを目にした時6年と4か月後に日本がそれに類する大津波に襲われることなど、少なくとも僕は夢にも思わなかった。
本作は、タイの観光地で大津波に遭遇した夫婦と息子三人から成る一家族に起きた奇跡的な実話を映画化したものである。
襲われるのは、クリスマス直前に休暇でタイにやって来たユアン・マクレガーとナオミ・ワッツの夫婦とトム・ホランドを長男とする三人の子供たちで、ナオミとトム君は互いの生存を確認したものの、マクレガーと次男・三男の行方が解らない。胸と足に瀕死の重傷を負った母親は現地の人の親切で病院に運び込まれる。母に言われてトム君は自分たちと同じように家族を探している人に代わって病院内を駆け巡る。
他方、実は崩れたホテルで生き延びていたマクレガーは同じくほぼ無傷で済んだ息子2人を現地の人に預けて妻と長男を探す病院めぐりを始める。題名から想像がつくので結末を明かしてしまえば、一家は見事全員生還という形で再会するのである。
僕も人の子、この家族の力強く利他的で思想・行動は立派で、こうした人々だからこそ気の利いた天の配剤も起こり得たのではないかなどと思って胸を打たれてしまう。
しかるに、人は、実話と聞くとその感動を、知らず増幅させてしまう癖がある。映画を批評する際には、それを評価に加味すべからず。監督J・A・バヨナの展開ぶりもしっかりしていて十分“感動的”なお話であることは認めつつも、映画としてはいかにも曲がなさすぎる。単純なプロットにもかかわらず先を見続けさせる力があるとは言え、そこには実話という先入観がプラスに働いているのではないかと疑って、印象度より★一つ分マイナス。
映画の中ではどこの国民かはっきりしないが、実話の家族はスペイン人。ナオミ・ワッツ、ユアン・マクレガーという英米の俳優を使いながら何ゆえの実質スペイン映画なのかという疑問がこれで解ける。因みに、彼らは何故か日本居住者(という設定)らしく、そう考える人が他にもいらっしゃるように、3・11を念頭に置いての設定なのかもしれない。
雨に家がやられるとは・・・しかも人災・・・とほほ。
この記事へのコメント
プロフェッサー、大丈夫ですか~?
ちゃんと生きてます?ご飯食べてます~?
しばらくはお休みかと思ってましたら
意地とコンジョの記事UPとな。
いやはや、映画魂は死なず、本物の人です。
ところで本作公開時観ましたけれど、
何の印象もなく忘却の彼方。すみません。^^;
>人は、実話と聞くとその感動を、知らず増幅
同感。
大して関心示してなかったのが
「実話ベースなのよ」と付け加えると
俄然色めき立ってくるあのわかりやすい一般
ピーポーの反応は一体何なんでしょうか。
>ちゃんと生きてます?
何とか・・・精神的には半分死んでいますかねえ。とにかく、次々と事件が起こり、疲れました。
心臓や頭が痛くなっても、不思議と食欲だけは減退しないのです。不思議です。
胃が痛くなることはあります。
膵炎があるので、大したものは食べていませんけどね。
>意地とコンジョ
僕にはそれしかないですから。
>「実話ベースなのよ」
劇映画は最終的にはフィクションでありますから、実話がベースだろうが、フィクションであろうが、出来栄えで判断すればよいと思っています。
特に最初に「実話が基になっている」と出すのは、一般ピーポーの反応を考えると少々卑怯かもしれませんね。
お父さんを長塚京三が演じると話したらお父さんは大喜び、お母さんは原田美枝子さんが演じると言ったら似ていると言われたことがあると言ったそうです。
全然似てなかったそうですけどね(笑)
映画が公開される前にお母さんは亡くなったそうです・・・
3・11以降家族の映画が増えましたね~
>3・11以降家族の映画が増えましたね~
9・11以降アメリカでも異様に家族(の再生)を描いた映画が増えました。6~7年間くらいそういう傾向があったと思います。
2010年辺りから普通に戻った印象を受けております。
やはり観客の受けが良いのか、それとも面白い話を書ける人が減ったのか、実話ものも1990年代末くらいから異様に多くなっていますね。