映画評「終戦のエンペラー」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年日本=アメリカ合作映画 監督ピーター・ウェバー
ネタバレあり
1945年8月14日から15日の玉音放送までに起きた日本の混乱を描いた傑作「日本のいちばん長い日」(1967年)の続編のような日米合作映画。アメリカ側の視点で作られた日本映画もどきといった印象が残る。
マッカーサー元帥(トミー・リー・ジョーンズ)がポツダム宣言を受諾した日本に上陸、日本娘アヤ(初音映莉子)を恋人にしていた知日派のフェラーズ准将(マシュー・フォックス)に、昭和天皇に戦争責任はあるか、というアメリカにとって本当の意味での戦争終結を意味する至上命題を解決するよう命ずる。
知日派とは言っても、戦前彼女の叔父の鹿島大将(西田敏行)から“建前と本音”の日本的精神を少し教えられたくらいで、難問である。戦前の首相で後に自殺する近衛文麿(中村雅俊)の意見を聞いても抽象的で納得しきれず、最後の命綱は側近木戸幸一(伊武雅刀)である。彼が会合に現れなかった為その綱は切れたかと思い、後日「天皇に責任あり」と書こうと思った矢先、彼が現れ「戦争を終結したのは天皇に他ならない」と聞くに及び、「責任以上に終結した貢献が大きく無罪」という判断を元帥に提示する。
これを受けて元帥は昭和天皇(片岡孝太郎)と面会、宮内次官・関谷貞三郎(夏八木勲)から言われた御法度も殆ど無視して、ここにやっと平和への道が訪れるのである。
アメリカの視点と言っても、原作が岡本嗣郎のノンフィクション、脚本がアメリカ側ということにつき、各々の民族描写についてなかなかバランスの取れた内容で、厳しさは全く足りない(アメリカ流の脚色のせいだろう)が、僕のような細かい事情に疎いノンポリには、ミーハー的に大変見やすい作品となっている。史実や歴史観・民族観にひどく拘らない限り、後味良く楽しめると思う。
架空の女性アヤとその叔父たる大将を交えたことでお話としてかなり甘くなったのは否めないものの、ロマンスが史実に沿った些かお堅い戦争終結の問題に対する潤滑油となり、中間小説ならぬ中間映画といった立場から面白く観られるし、知っていそうで知らない太平洋戦争の戦後処理(厳密に言えば史実と違う部分が多いらしいが)、アメリカ人がどうしても理解できない日本人の精神的部分などそれなりに勉強になるところもある。
作劇上の難点を言えば、ロマンスの扱いが大きすぎる。准将もロマンスも事実上狂言回しだから、もう少し控えめに扱っていたら狂言回しとしての印象が前に出て、もっとまとまりのある佳作になったにちがいない。
アレクサンドル・ソクーロフ監督の「太陽」と併せて観るとなおよろし。
2012年日本=アメリカ合作映画 監督ピーター・ウェバー
ネタバレあり
1945年8月14日から15日の玉音放送までに起きた日本の混乱を描いた傑作「日本のいちばん長い日」(1967年)の続編のような日米合作映画。アメリカ側の視点で作られた日本映画もどきといった印象が残る。
マッカーサー元帥(トミー・リー・ジョーンズ)がポツダム宣言を受諾した日本に上陸、日本娘アヤ(初音映莉子)を恋人にしていた知日派のフェラーズ准将(マシュー・フォックス)に、昭和天皇に戦争責任はあるか、というアメリカにとって本当の意味での戦争終結を意味する至上命題を解決するよう命ずる。
知日派とは言っても、戦前彼女の叔父の鹿島大将(西田敏行)から“建前と本音”の日本的精神を少し教えられたくらいで、難問である。戦前の首相で後に自殺する近衛文麿(中村雅俊)の意見を聞いても抽象的で納得しきれず、最後の命綱は側近木戸幸一(伊武雅刀)である。彼が会合に現れなかった為その綱は切れたかと思い、後日「天皇に責任あり」と書こうと思った矢先、彼が現れ「戦争を終結したのは天皇に他ならない」と聞くに及び、「責任以上に終結した貢献が大きく無罪」という判断を元帥に提示する。
これを受けて元帥は昭和天皇(片岡孝太郎)と面会、宮内次官・関谷貞三郎(夏八木勲)から言われた御法度も殆ど無視して、ここにやっと平和への道が訪れるのである。
アメリカの視点と言っても、原作が岡本嗣郎のノンフィクション、脚本がアメリカ側ということにつき、各々の民族描写についてなかなかバランスの取れた内容で、厳しさは全く足りない(アメリカ流の脚色のせいだろう)が、僕のような細かい事情に疎いノンポリには、ミーハー的に大変見やすい作品となっている。史実や歴史観・民族観にひどく拘らない限り、後味良く楽しめると思う。
架空の女性アヤとその叔父たる大将を交えたことでお話としてかなり甘くなったのは否めないものの、ロマンスが史実に沿った些かお堅い戦争終結の問題に対する潤滑油となり、中間小説ならぬ中間映画といった立場から面白く観られるし、知っていそうで知らない太平洋戦争の戦後処理(厳密に言えば史実と違う部分が多いらしいが)、アメリカ人がどうしても理解できない日本人の精神的部分などそれなりに勉強になるところもある。
作劇上の難点を言えば、ロマンスの扱いが大きすぎる。准将もロマンスも事実上狂言回しだから、もう少し控えめに扱っていたら狂言回しとしての印象が前に出て、もっとまとまりのある佳作になったにちがいない。
アレクサンドル・ソクーロフ監督の「太陽」と併せて観るとなおよろし。
この記事へのコメント
オバマ大統領が初めて日本本土を爆撃した連中に勲章をやる神経などわかりませんですよ。
戦争で民間人を攻撃してはならないという自分たちで作ったルールを無視してますからね。
東京裁判で戦争犯罪者として裁かれるべきは彼らであり、命令を出した大統領だと思うんですがね。
ねこのひげのオフクロも買い物帰りに、あぜ道を歩いていたらグラマンに銃撃されたそうです。
田んぼに飛び込んで助かったそうです。
その時笑っていた操縦士の顔が忘れられんと言っておりました。
勝てば官軍ですからねえ。
しかし、それで根付いた平和憲法を「アメリカへの協力」を理由に変えようと為政者の気持ちは僕は解らないのです。
国外で自衛隊が戦う分には個人的には知ったこっちゃありませんが、国土が戦場に成ったり、自衛隊員の減少で徴兵制若しくは兵役義務が発生したら嫌ですね。年寄の僕らは行かないにしても、日本をよくするかもしれない優秀な若い人が70年前のように犠牲になりかねない。
うちの母親も東京時代に空襲に遭っているんですよね。何度か聞いたことがあります。爆弾を落とした顔は見えなかったようですが。