映画評「リアル~完全なる首長竜の日~」
☆☆★(5点/10点満点中)
2013年日本映画 監督・黒沢清
重要なネタバレあり。未鑑賞の人は要注意。
タイトルからヤング・アダルト向け映画を想像したが、黒沢清が監督と知り観ることにした。
自殺を試みて昏睡状態に陥った恋人の漫画家・綾瀬はるかの為に佐藤健が“センシング”という最新治療の被験者となる。相手の意識の中に入っていき会話等をするSF的着想である。
彼女から「少女時代に書いた首長竜の絵を探してほしい」と言われ、それが彼女の回復の為に必要と考える佐藤君が懸命に探し出す。二人が知り合った孤島・飛古根島にあると思って実際にスケッチブックを探し当てるが、肝心の絵が不鮮明である為、今度は意識下で島に飛ぶものの、そこに見出すのはブランクのスケッチブックである。
というのが開巻から三分の二くらいまでのお話で、ここから物語は急転する。
ネタバレすると、実は昏睡状態に陥っていたのは佐藤君の方で、センシングをしていたのがはるか嬢の方と判明、15年前に起きた事件を忘れようとする心理学的作用が昏睡状態の彼にかような混乱をもたらしていることが観客にも判って来る。
と、例によって黒沢監督らしく形而上的ホラーと言うべき作品になっている一方で、真相探しのミステリー映画の様相も呈している。現に、乾緑郎の原作は「このミステリーがすごい!」大賞を受賞していて、紛れもないミステリーなのだろう。
しかし、黒沢監督のこの手の作品を何本も観てきた立場としては、ホラー映画的部分は新味がない上に僕が観たどの旧作より迫力で劣り、意識の中の出来事とは言え実際に恐竜が出て来たところでかなり興醒めさせられる。途中まではともかく、真相が解り始めてから本当にヤング・アダルト向けの言って良い甘いお話になり、がっかりせざるを得ない。
ミステリーとしては一応新感覚であるが、ミステリー趣味をごく控えめにして黒沢流にもっと形而上的なホラー映画に徹した方が、大衆向きではなくなるにしても、もっと興味深い作品になったはず。
「この映画はすごくない」大賞を進呈いたします。
2013年日本映画 監督・黒沢清
重要なネタバレあり。未鑑賞の人は要注意。
タイトルからヤング・アダルト向け映画を想像したが、黒沢清が監督と知り観ることにした。
自殺を試みて昏睡状態に陥った恋人の漫画家・綾瀬はるかの為に佐藤健が“センシング”という最新治療の被験者となる。相手の意識の中に入っていき会話等をするSF的着想である。
彼女から「少女時代に書いた首長竜の絵を探してほしい」と言われ、それが彼女の回復の為に必要と考える佐藤君が懸命に探し出す。二人が知り合った孤島・飛古根島にあると思って実際にスケッチブックを探し当てるが、肝心の絵が不鮮明である為、今度は意識下で島に飛ぶものの、そこに見出すのはブランクのスケッチブックである。
というのが開巻から三分の二くらいまでのお話で、ここから物語は急転する。
ネタバレすると、実は昏睡状態に陥っていたのは佐藤君の方で、センシングをしていたのがはるか嬢の方と判明、15年前に起きた事件を忘れようとする心理学的作用が昏睡状態の彼にかような混乱をもたらしていることが観客にも判って来る。
と、例によって黒沢監督らしく形而上的ホラーと言うべき作品になっている一方で、真相探しのミステリー映画の様相も呈している。現に、乾緑郎の原作は「このミステリーがすごい!」大賞を受賞していて、紛れもないミステリーなのだろう。
しかし、黒沢監督のこの手の作品を何本も観てきた立場としては、ホラー映画的部分は新味がない上に僕が観たどの旧作より迫力で劣り、意識の中の出来事とは言え実際に恐竜が出て来たところでかなり興醒めさせられる。途中まではともかく、真相が解り始めてから本当にヤング・アダルト向けの言って良い甘いお話になり、がっかりせざるを得ない。
ミステリーとしては一応新感覚であるが、ミステリー趣味をごく控えめにして黒沢流にもっと形而上的なホラー映画に徹した方が、大衆向きではなくなるにしても、もっと興味深い作品になったはず。
「この映画はすごくない」大賞を進呈いたします。
この記事へのコメント
この小説をミステリーと呼ぶのには疑問がありました。
おっさんとしては「あまい!」と言いたいところです。
映画はもっと甘かったな~(*_*)
本格推理でないことは、映画版からでも想像がつきますがね^^;
余り感興が湧かないですなあ。
黒沢清監督しては、人気俳優の起用に自重した?