映画評「地球へ2千万マイル」

☆☆★(5点/10点満点中)
1957年アメリカ映画 監督ネイサン・ジュラン
ネタバレあり

WOWOWによるSFXの大家レイ・ハリーハウゼン特集の一本。日本劇場未公開。
 Allcinemaによれば、別邦題として「金星怪獣イーマの襲撃(JSB)」と書かれているので、WOWOWがJSBと言っていたごく初期の頃最初に放映したらしい。タイトルが変わっていたせいもあって未見のつもりであったが、観続けるうちに「どうも観ているぞ」と思い始め、後でチェックすると確かにIMDbに今回と同じ5点を進呈していた。

僕は格別特撮(SFX)ファンでもないし、まして怪獣映画ファンでもない。それでも、昨今の乱造気味のアメ・コミ映画やそのもどきよりこういうSFX映画のほうが映画らしい手作り感があって「観たい」気持ちにさせられる。

アメリカが秘かに打ち上げた金星探索ロケットが、謎の生命隊を標本ケースに入れて持ち帰り帰還直前にイタリアの海に墜落、少年の手を経てキャンピング・カーで移動中の医師父娘に渡る。偶然にもその娘ジョーン・テイラーが、宇宙船からの唯一の生存帰還者ウィリアム・ホッパーを診た見習い医師で、やがて恋愛関係に移行するのは当時の特撮映画のお約束みたいなもの。怪獣映画ファンにはどうでも良い描写で、実際、恋愛の進み具合は奇妙千万。
 ともかく、その二足歩行の恐竜もどきの金星の生命体は誕生当初は猫ほどの大きさだったのが、父娘が移送中に牧場へ脱け出す頃には人間並みの大きさとなり、ローマへたどり着く頃には巨象よりも大きくなる。そしてコロシアム近くで象と一騎打ちとなってこれを倒し、しかし、遂に人類の武器の前に倒れる。

この倒され方が「キング・コング」の影響大で、そもそも、人間がその利己主義ゆえに持ち帰った、悪とは言えない怪物が不幸にも人類に倒されるというお話の骨格が「キング・コング」に似ている。確か「レイ・ハリーハウゼン 特殊効果の巨人」でご本人が「キング・コング」に多大に影響された旨語っていたと思う。

怪物映画にはお話が大して面白くないものが多い。本来子供向けと思われるものに恋愛要素を入れてまだるっこくし、社会風刺を露骨に入れておためごかしをするからだろう。本作は大したおためごかしはないものの、前述通り恋愛要素は定石通り取り込んだ。為に物語には退屈な部分が多く、総合的に星(☆★)はこれでも多すぎるくらいで、星の大半は少々拙い動きの怪獣に進呈されたものとご理解されたし。特に巨象との対決はコマ撮りの楽しさに満ち、ハイライト。

最大に離れても金星から地球まで2000万マイルはないと思うけど、太陽への接近を回避することを考えると、出鱈目な数字ではなさそう。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年06月01日 05:28
太陽を避けて楕円軌道を描いて帰るとなるとそのぐらいの距離はあるかもしれませんね。
それだけはるかに遠いという意味もあるのでしょう。
オカピー
2014年06月01日 16:35
ねこのひげさん、こんにちは。

>それだけはるかに遠い
昔の中国人が“白髪三千丈”などと言った表現に近いでしょうかねえ。
太陽まで900万マイル強しかないのに「でたらめな」と最初考えましたが、惑星同士ですから離れる時はそれより遥かに遠くなると思って調べました(笑)

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