映画評「夕陽に立つ保安官」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1969年アメリカ映画 監督バート・ケネディー
ネタバレあり

三作続けての再鑑賞。

バート・ケネディーはコメディー西部劇の名手で、面白い作品が多く、結構お気に入りの監督である。
 本作はコメディーであっても設定は本格的で、主人公のガンマンがずっこけではなく射撃の名手であるなど、コメディーの定石を外しているのは特に評価しておきたい。

ゴールドラッシュで湧く出来たばかりの町に、ジェームズ・ガーナーが豪州へ渡る資金稼ぎの為に黄金を探し出そうとやってきて、ウォルター・ブレナンを家長とするならず者一家の息子の一人ブルース・ダーンの卑怯な殺人現場に遭遇する。黄金を探し当てるまで食いつなぐ為、町長が切望している保安官に志願、銃の得意そうな馬番ジャック・イーラムを副保安官に任命し、早速ダーンを留置所にぶち込む。
 留置所なのに鉄格子がなく、それをダーンが協力して作るなどおとぼけも良いところで、精神状態の良い時に見たら腹がよじれそうである。ブレナンと他の息子たちが窓の格子を外そうと馬に引かせるが格子が外れず、三人が馬から落ちてしまう・・・という定石の逆を行く可笑しさ。

新任保安官がならず者一家と対峙するという構図は「荒野の決闘」というかOK牧場挿話からの拝借で、「リオ・ブラボー」に似ているところも多い。留置場に入れられるならず者の名前は共にジョーである。「リオ・ブラボー」では主人公側だったブレナンが悪役で出て来るのも作者たちが意識しての配役なのだろう。

こうした場面の合間を繋ぐ役目を負っているのが変てこな町長令嬢ジョーン・ハケットで、ガーナーと彼女とのやり取りにはジョン・ウェインとモーリン・オハラのパロディー的なところがある。当時モーリンがもう少し若かったら学校の先生みたいな印象のジョーンより適役で、もっと笑えたに違いない。

男優陣のおとぼけは概ね良いが、ご贔屓ダーンのずっこけぶりが彼らしくて特にヨロシイ。今回は家が水浸しになった翌々日という、最悪の精神状態で観た為余り笑う気にもなれず、さほど楽しめなかったが、採点は昔観た時の記録と同じにしやした。

春よ来い。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年06月01日 05:31
ジェームス・ガーナーのとぼけた味わいは好きですな~
品もありますしね。
オカピー
2014年06月01日 16:40
ねこのひげさん、こんにちは。

ガーナーのおとぼけ、見事でしたね。
日本では大人気があったわけではありませんが、隠れファンが案外多かったのではないでしょうか?
蟷螂の斧
2023年11月19日 17:41
こんばんは。昭和50年頃、テレビドラマ『ロックフォード氏の事件メモ』(吹替版)が日本で大人気!「西部無法伝」に続いて、この「夕陽に立つ保安官」もテレビで放映されました。勿論吹替版です。家族で見て楽しみました。ジャック・イーラムが出ていたのを数日前にネットで知りました。
子供の頃でしたから、ジェームズ・ガーナ―の吹替が小林修さん(「荒野の七人」のユル・ブリンナー)なのが違和感を感じました。
あれから四十数年が過ぎました。BSまたはムービープラス等で放映して欲しいです。

>ガーナーとゴセットとのやり取りなどもっと字余り・字足らずなく見せればぐっと可笑しくなったでしょう。

やはり、そのあたりが監督の才能や資質なんでしょうか?

>大学生の時は、☆★が夢に出てきましたよ^^

25点ですか?
オカピー
2023年11月19日 21:24
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>あれから四十数年が過ぎました。BSまたはムービープラス等で放映して欲しいです。

10年近く前にNHK-BSプレミアムで観たものですから、また出る可能性はありますね。古い映画の放映権に昔のような規制はないでしょう。

>やはり、そのあたりが監督の才能や資質なんでしょうか?

そうです。
監督が脚本も書いているのは1割未満ですから、大体において監督の第一の仕事は演技指導です。
編集については、アメリカの職人監督(脚本や編集にタッチする映画作家というタイプもあります)は殆ど口を出していないと思われるので、本当は余り関係ないのでしょうが、何故か演技指導(の良し悪し)が編集の呼吸まで影響を与えることが多いようです。

>>大学生の時は、☆★が夢に出てきましたよ^^
>25点ですか?

いや。(採点の)星について夢を見るんですよ。
星の数が十個くらいあったり、星が○だったり、夢の中で「こんな採点もあるんだなあ」と首を傾げていました。明るいうちから一日中、双葉的採点法を考えていたので、夢に出て来たんでしょうね。

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