映画評「SF巨大生物の島」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1961年イギリス=アメリカ合作映画 監督サイ・エンドフィールド
ネタバレあり

再鑑賞シリーズその4。

ジュール・ヴェルヌ「神秘の島」をベースに映画化した古典SFで、サイ・エンドフィールドが監督を務めているが、貢献度は特撮のレイ・ハリーハウゼンが筆頭に来ると考えて良いのであろう。この作品は1970年代初頭、中学生の時に日本未公開と知っていながらTVで観た。その時の印象度は余り芳しくなかったらしく、大きな鳥獣以外に殆ど記憶になかった。

1860年代、南北戦争で南軍の捕虜になっていたマイケル・クレイグ以下北軍将兵三名が観測用の気球に乗って脱走、南軍兵士一人に操縦させるが、操縦不能になって太平洋のどこかの島の近くに不時着する。南洋らしい雰囲気の中突然人間より巨大なカニに襲われ大格闘が始まり、ここからいよいよハリーハウゼンが一コマずつ撮った特撮の数々が本格的に繰り出される。

男ばかりでは芸がないと、漂流中の男女が現れる。男はこれ以上増えても絵的にも物語的にもつまらないので死体として、英国貴婦人ジョーン・グリーンウッドとその姪べス・ローガンが生存した状態で発見されるというのが愉快。観客を意識した作者の考えが露骨に透けて見える作劇だからである。

その後間もなく巨大な鶏が登場、女性陣二人が襲われ、べスに気のある若い兵卒マイケル・カランが飛び乗って大奮闘する。コマ撮リが丁寧で、秀逸と言って良い出来。
 その若い男女が巨大な蜂により巣に閉じ込められた後「海底二万哩」に出てきたネモ船長のノーチラス号を発見、銃器などを手に入れ(厳密には銃器等が先に発見されているのだが)、海賊と対決することになるが、海賊船が突然沈没したので一同驚く。直後に貝殻を利用した潜水具を装着した、ハーバート・ロム扮するネモ船長と出会い、巨大生物による食糧確保で戦争撲滅の説教を聞かされた後、送り込んだ空気で補修した海賊船を浮かせ、噴火で崩壊していく島を後にする。

空気を送っていた平和主義者の船長がマッド・サイエンティストのような最期を遂げるのが心情的に些か気に入らないものの、普通サイズの鳥やヤギがいるかと思えば巨大な鳥獣がいるのもネモ船長の生物学的操作と判明して疑問が解け、船を浮かせる際に気球を再利用するのはSF的にうまい着想。ドラマ的に相当デタラメなのはご愛嬌である。

カラーの状態も昔地上波(勿論当時は地上波しかなかった)で観た時とは比較にならず良好。

昔の映画は解りやすくて良いや。

この記事へのコメント

2014年05月30日 20:24
ジュールと名乗っておきながら、ウィキで調べると知らない本の方が多いことに改めて気付きました。
今作品もタイトルには記憶がありますが、原作は多分読んではいないですね。
気球が出てきたりネモ船長が出てきたりと、ジュールファンには楽しめる1編かも。
巨大な鳥獣はジュラシックパークを思い出させそうですね。
オカピー
2014年05月30日 20:54
十瑠さん、こんにちは。

あっ、十瑠さんは・・・そうか(笑)。
ジュール・ヴェルヌは結構多作だったようで、読んでいないのも結構ありますね。
「海底二万哩」は読みましたが、「神秘の島」は読んでおりません。原作では子供が主人公のようです。
気球も何となく憶えていましたが、観ているうちに思い出したという感じ。

終盤出て来るイカはともかく、鶏がそのまま大きかったりするのは、観ていて落ち着かない印象もありますけどね(笑)。
芸術的には大いに問題ありますが(笑)、のんびりと楽しめる作品であります。

1970年代に「巨大生物の島」というのが公開された時リメイクかと思いましたが、違いました。
ねこのひげ
2014年06月01日 05:56
食糧の確保で戦争をなくそうという発想がわかりやすくてよいですな~
映画の出来もよくて何回も見直しましたよ。

『ゴジラ』の最初の作品でも大人の観客を呼び込むために女性の裸を出せと映画会社から迫られて、熟考したうえに風呂場のシーンを入れたそうでありますね。
オカピー
2014年06月01日 16:44
ねこのひげさん、こんにちは。

恐らく人気俳優が出ていないので、日本での劇場公開が見送られたのでしょうが。

>『ゴジラ』
大人の事情というやつですね^^
本作も若い方の女性が必要以上の超ミニで出てきて、下着とも言えない下着を見せていました・・・全くしようもない(笑)

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