映画評「アルゴ探検隊の大冒険」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1963年イギリス=アメリカ合作映画 監督ドン・チャフィー
ネタバレあり
「アルゴ」という実話サスペンスが公開された時、本作のリメイクと思ったのは本当の話です。
昨年読み直したオウィディウスの「変身物語」にも出て来るギリシャ神話におけるイアソンの冒険の前半部分を映画化した特撮映画で、今風に言えば冒険ファンタジーであるが、ほぼ同時代の人間としては、この時代の作品をカタカナでファンタジー(僕らの子供の頃そんな言葉は日本語として定着していなかった)と紹介する気にはなれない。監督は後年幾つも冒険ファンタジーを作るドン・チャフィー。しかし、「SF巨大生物の島」(1961年)同様、この頃レイ・ハリーハウゼンが特撮技術者として携わった作品では彼自身が総監督という感じであったらしい。
彼自身の発言によれば、ハリーハウゼン特撮映画は基本的に特撮ありきでお話が案出される。その結果「地球へ2千万マイル」(1957年)のようにお話がもう一つのものが多いが、ハリーハウゼンの作品で一番評価の高い本作はギリシャ神話のエピソードに沿って作られている為お話も一応形になっている部類。
ギリシャの一王国の王位継承者であるイアソン(トッド・アームストロング)が、王座を奪った男とも知らずぺリアス(ダグラス・ウィルマー)を助け、そのおためごかしの助言に従って、秘宝の黄金羊皮を得ようと他の勇者たちと共に大型船アルゴ号により目的地コルキス国を目指し、途上救った女性がたまたま同国の女神官メディア(ナンシー・コヴァック)であった為、その案内ですんなりと到着することに成功するが、中にぺリアスの王子がいた為に捕えられてしまう。しかし、イアソンに惹かれたメディアにより助け出され、黄金羊皮のある難所を目指す。
というお話も前述通り当時のこの手の作品としてはそれなりに楽しめるが、やはり眼目はその間に出て来るコマ撮りの怪獣(?)群、即ち、大魔神の如く動き出す巨大なタロス像、人面の怪鳥二羽、流れの激しい海峡に苦労する一行を助けてくれるポセイドン神、黄金羊皮の置かれた場所に住むギリシャ版ヤマタノオロチであるヒドラ、そして最後にこの作品を語る時に欠かせないヒドラの骨から生まれた七体の骸骨兵士である。
動きがCGのようにスムーズでない(と言っても当時の他のストップ・アニメーション作品よりずっと滑らか)のが却って迫力とエモーションを生じさせているように感じるし、指摘する方は少ないものの、人間を撮った実写とアニメとの合成の出来栄えがなかなか良い。いずれ捨てがたい中でも、1966年に作られる「大魔神」にインスピレーションを与えたにちがいないタロス像と骸骨兵士が特に楽しい。
僕が本作を観たのは公開より十年くらい後、新米映画ファンであった中学生の時で、この作品によりハリーハウゼンの名前を知った。ともかく、その時の鑑賞より今回の方が面白く感じられた(ような気がする・・・何分大昔なのでその時の印象自体が定かではない。記憶が曖昧ということは、物凄く面白いとも思わなければ、退屈もしなかったということだろう)のは幸い。
有名なヘラクレス(英語ではハーキュリーズ)などは一般的な古代ギリシャ語的表記なのに、イアソンは英語発音のジェイソンになっているなど、字幕における固有名詞表記が中途半端で気に入らない。
1963年イギリス=アメリカ合作映画 監督ドン・チャフィー
ネタバレあり
「アルゴ」という実話サスペンスが公開された時、本作のリメイクと思ったのは本当の話です。
昨年読み直したオウィディウスの「変身物語」にも出て来るギリシャ神話におけるイアソンの冒険の前半部分を映画化した特撮映画で、今風に言えば冒険ファンタジーであるが、ほぼ同時代の人間としては、この時代の作品をカタカナでファンタジー(僕らの子供の頃そんな言葉は日本語として定着していなかった)と紹介する気にはなれない。監督は後年幾つも冒険ファンタジーを作るドン・チャフィー。しかし、「SF巨大生物の島」(1961年)同様、この頃レイ・ハリーハウゼンが特撮技術者として携わった作品では彼自身が総監督という感じであったらしい。
彼自身の発言によれば、ハリーハウゼン特撮映画は基本的に特撮ありきでお話が案出される。その結果「地球へ2千万マイル」(1957年)のようにお話がもう一つのものが多いが、ハリーハウゼンの作品で一番評価の高い本作はギリシャ神話のエピソードに沿って作られている為お話も一応形になっている部類。
ギリシャの一王国の王位継承者であるイアソン(トッド・アームストロング)が、王座を奪った男とも知らずぺリアス(ダグラス・ウィルマー)を助け、そのおためごかしの助言に従って、秘宝の黄金羊皮を得ようと他の勇者たちと共に大型船アルゴ号により目的地コルキス国を目指し、途上救った女性がたまたま同国の女神官メディア(ナンシー・コヴァック)であった為、その案内ですんなりと到着することに成功するが、中にぺリアスの王子がいた為に捕えられてしまう。しかし、イアソンに惹かれたメディアにより助け出され、黄金羊皮のある難所を目指す。
というお話も前述通り当時のこの手の作品としてはそれなりに楽しめるが、やはり眼目はその間に出て来るコマ撮りの怪獣(?)群、即ち、大魔神の如く動き出す巨大なタロス像、人面の怪鳥二羽、流れの激しい海峡に苦労する一行を助けてくれるポセイドン神、黄金羊皮の置かれた場所に住むギリシャ版ヤマタノオロチであるヒドラ、そして最後にこの作品を語る時に欠かせないヒドラの骨から生まれた七体の骸骨兵士である。
動きがCGのようにスムーズでない(と言っても当時の他のストップ・アニメーション作品よりずっと滑らか)のが却って迫力とエモーションを生じさせているように感じるし、指摘する方は少ないものの、人間を撮った実写とアニメとの合成の出来栄えがなかなか良い。いずれ捨てがたい中でも、1966年に作られる「大魔神」にインスピレーションを与えたにちがいないタロス像と骸骨兵士が特に楽しい。
僕が本作を観たのは公開より十年くらい後、新米映画ファンであった中学生の時で、この作品によりハリーハウゼンの名前を知った。ともかく、その時の鑑賞より今回の方が面白く感じられた(ような気がする・・・何分大昔なのでその時の印象自体が定かではない。記憶が曖昧ということは、物凄く面白いとも思わなければ、退屈もしなかったということだろう)のは幸い。
有名なヘラクレス(英語ではハーキュリーズ)などは一般的な古代ギリシャ語的表記なのに、イアソンは英語発音のジェイソンになっているなど、字幕における固有名詞表記が中途半端で気に入らない。
この記事へのコメント
ガハハハハ・・・・('◇')ゞ
コマドリでの巨人や怪獣、海神、骸骨が次々と出てくるのが楽しいですね~
CGで作られた怪物というのはリアルであればあるほど偽物ぽくなるのはなぜなんでしょうね~( 一一)
>CG
よく解りませんが、「CGは何でもできる」という心理が働くのでしょうねえ。見かけは現実と近いけれど、実際には漫画。「鉄腕アトム」が空を飛ぶのと変わらないわけですからね。派手すぎるのもいかんのかも。