映画評「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」
☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1985年スウェーデン映画 監督ラッセ・ハルストレム
ネタバレあり
映画館で本作を観てラッセ・ハルストレムの名が深く脳裏に刻まれることになった。とにかく気に入った。彼の作品を観て感じるのは、抽象的な表現になるが、【透明感】である。特にこの作品に覚えた透明なイメージは未だに鮮烈に残っている。気負いもてらいも感じられない自然な、しかも正統的なタッチがそう思わせるのだろう。
1950年代末、十歳くらいの少年イングマル(アントン・グランセリウス)は、宇宙に旅立って死んだライカ犬の運命と比較すれば自分の人生など大した悲劇ではない、と思おうとする。
少年は南洋に仕事に出たまま帰って来ない父親の留守を預かる母親が病弱である為に一時的にガラス工場があるだけの小さな村に暮らす叔父(トーマス・フォン・ブレムセン)夫婦に預けられ、サッカーの上手い少年と親しくなる。この少年が、実はサガという名の短髪美少女(メリンダ・キンナマン)であると判明、互いに仄かな思慕を覚えていく。
最近この二人の関係にそっくりな情景を観たと思い、暫し考えた。「HOME 愛しの座敷わらし」であった。原作を書いた萩原浩氏はこの映画を観ているのではないだろうか?
閑話休題。
一旦母親の許に戻った彼は愛犬シッカンがいないことに気付くが、間もなく母親が死去して(直接描写なし)、再び叔父さんの下で暮らすうちに、やがてシッカンが死んだことを知り、ひどく落ち込む。しかし、村人の呑気な生活ぶりを見て元気を取り戻す。
観客は少年の自分への励ましが母親と愛犬の死に深く関わっていることを少しずつ知ることになる、という展開の仕方で、思春期直前の微笑ましい悪戯の数々や村での呑気な牧歌的な情景のうちにその悲しみをにじませていく。悲しみに関する直接的表現を極力避けようとしているわけで、そこに観終わった後清々しい後味が湧き上がってくる所以がある。断然の秀作。
少女とサッカーの関係に時代を感じる。今なら全然問題になりませんなあ。
1985年スウェーデン映画 監督ラッセ・ハルストレム
ネタバレあり
映画館で本作を観てラッセ・ハルストレムの名が深く脳裏に刻まれることになった。とにかく気に入った。彼の作品を観て感じるのは、抽象的な表現になるが、【透明感】である。特にこの作品に覚えた透明なイメージは未だに鮮烈に残っている。気負いもてらいも感じられない自然な、しかも正統的なタッチがそう思わせるのだろう。
1950年代末、十歳くらいの少年イングマル(アントン・グランセリウス)は、宇宙に旅立って死んだライカ犬の運命と比較すれば自分の人生など大した悲劇ではない、と思おうとする。
少年は南洋に仕事に出たまま帰って来ない父親の留守を預かる母親が病弱である為に一時的にガラス工場があるだけの小さな村に暮らす叔父(トーマス・フォン・ブレムセン)夫婦に預けられ、サッカーの上手い少年と親しくなる。この少年が、実はサガという名の短髪美少女(メリンダ・キンナマン)であると判明、互いに仄かな思慕を覚えていく。
最近この二人の関係にそっくりな情景を観たと思い、暫し考えた。「HOME 愛しの座敷わらし」であった。原作を書いた萩原浩氏はこの映画を観ているのではないだろうか?
閑話休題。
一旦母親の許に戻った彼は愛犬シッカンがいないことに気付くが、間もなく母親が死去して(直接描写なし)、再び叔父さんの下で暮らすうちに、やがてシッカンが死んだことを知り、ひどく落ち込む。しかし、村人の呑気な生活ぶりを見て元気を取り戻す。
観客は少年の自分への励ましが母親と愛犬の死に深く関わっていることを少しずつ知ることになる、という展開の仕方で、思春期直前の微笑ましい悪戯の数々や村での呑気な牧歌的な情景のうちにその悲しみをにじませていく。悲しみに関する直接的表現を極力避けようとしているわけで、そこに観終わった後清々しい後味が湧き上がってくる所以がある。断然の秀作。
少女とサッカーの関係に時代を感じる。今なら全然問題になりませんなあ。
この記事へのコメント
大好きな映画です。
少し勝ち気の強そうなアントン君はイングマル役にピッタリでしたね。
>大好きな映画
僕もお気に入りなので、嬉しいです^^
仰る通り、アントン君の意志を感じる表情が良かったですねえ。
それにしても、日本があああっさりと負けるとは思いませなんだな~
思い入れの差なんでありましょうかね。
ラモスに言わせれば大和魂がないよでありますかね。
家の復旧リフォームにまつわる騒動で、今年はサッカーどころではなかったのですが、それでも日本戦だけは一応観ました。
第一戦のあっという間の逆転で歯車が狂った感じですね。
まあ僕は野球ファンなので、3年後のWBCに期待ですが、とにかく大リーグがもっとやる気を出してもらわないとダメです。オリンピックに定着しなかった理由を作った大リーグには不満が多い。ヤンキーズでなければ松井も侍ジャパンの文句なしの4番として出られただろうになあ。
それと、サッカーのように、プロ野球のシーズンを中止してもするくらいにならないと、野球は世界に広まらない。広まらないどころか、どんどん縮小してしまう。
投手とバッターの呼吸が合わないと成り立たない野球は、元来、相撲に近いスポーツだと思うので、日本人には合っている筈。野球人気来たれ!
今日は「ま」行で行ってみます。
これ、大好きです!
何回も観ていますが、また観たくなりました。
ママが元気だったころの思い出の場面や病気になってからの辛い場面は、毎回涙ぐんでしまいます。
>一旦母親の許に戻った彼は愛犬シッカンがいないことに気付くが、間もなく母親が死去して(直接描写なし)、再び叔父さんの下で暮らすうちに、やがてシッカンが死んだことを知り、ひどく落ち込む。
子供にとって母親と愛犬の両方を失うなんて、平和な時代にこれ以上の辛いことはありませんけど、おっしゃるように直接描写はないのに鬼の目にも涙(笑)を浮かべることができる監督のセンスに脱帽です。
これとか「ギルバート・グレイプ」とかは、ほんとに瑞々しい感覚に溢れていますね。この感覚はありそうで、あまりないような気がします。
>これ、大好きです!
僕も映画館で観て大いに気に入り、監督ラッセ・ハルストレムの名前を憶えました。確か、「アバ・ザ・ムービー」なんて映画も作っていて、なかなか感覚が良いと私淑する双葉十三郎師匠が仰っていたので、観ようと思いつつ、現在まで観られていません。
>これとか「ギルバート・グレイプ」とかは、ほんとに瑞々しい感覚に
>この感覚はありそうで、あまりないような気がします。
ハルストレムの特徴は“透明感”と思っていますが、仰るように彼のような感覚はありそうで余りないですね。肉人の情を扱った映画に良いものが多いですね。
訂正です。
>肉人の情
何のこっちゃ。
”肉親の情”の打ち間違いでした。
肉人! 思わずグーグルに入力してしまいましたよ。
何だか際どい方向に行きそうで、これはきっと先生の間違いだと思いました。
>監督ラッセ・ハルストレムの名前を憶えました。
私は未だに憶えられないというか、憶える気がないです。
アキなんとかさんとかも、下手に憶えても言い間違えるのが関の山です。
偶然、今日スターチャンネルで放映されるので、永久保存しておきます。 有料チャンネルもこういう事があるのでなかなか止められません。
「透明感」 言い得て妙でございます。
>私は未だに憶えられないというか、憶える気がないです。
北欧系の名前は長くて難しいですね。外国人には日本人の名前が音(おん)が多くて難しいでしょうが。
>偶然、今日スターチャンネルで放映されるので、永久保存
それはグッド・タイミング。録画ミスしないように!
>「透明感」 言い得て妙でございます。
それが最初の印象だったです。
それ以降、本作を基準にして結構厳しく観てしまうのが良し悪し。