映画評「マン・オブ・スティール」

☆☆★(5点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督ザック・スナイダー
ネタバレあり

スーパーマン・リターンズ」(2006年)はオーソドックスな作りで僕はなかなか気に入ったのだが、この種の映画の主たる観客層たる若者に受けなかったようで、結局また新しい「スーパーマン」の登場と相成った。

滅亡寸前のクリプトン星の要人ジョー・エル(ラッセル・クロウ)が、新しい惑星でクリプトン星人を復活させようと野望を抱くクーデター派のゾッド将軍(マイケル・シャノン)が襲撃する直前に生れたばかりの息子カル・エルを地球へ送り出す。
 クーデター失敗で隔離されたが故に生き延びることになった将軍は地球時間の二十数年後に部下を率いて地球に現れ、人類に紛れているカル・エルを差し出さないと地球を攻撃すると脅しをかけて来る。
 正体を明かすのはしかるべき時機を必要とすると地球での父(ケヴィン・コストナー)に厳命されていたカル・エルことクラーク・ケント(ヘンリー・カヴィル)は、接近してきたデイリー・プラネット紙のジャーナリスト、ロイス・レイン(エイミー・アダムズ)に正体を打ち明ける。彼女が当局に逮捕されたことでクラークの正体が政府や軍関係者に知られることになるが、結局は地球をクリプトン化することを目的とする将軍たちの攻撃を回避する為後にスーパーマンと呼ばれることになるクラークと地球人がタッグを組んで壮大な計画を実行に移す。

「スパイダーマン」旧シリーズ第一作からスーパーヒーローにメソメソさせる必要などないと口を酸っぱくして言ってきたせいか(そんな影響があるはずもありません)、最近僕の意見に近い人が増えてきた。解って来たねえ。
 主人公がメソメソクヨクヨしても作品として気勢が上がればまあ良いが、「スパイダーマン」に至っては悪役までメソメソ型で全く度し難かった。その点クリストファー・ノーランの「ダークナイト」は悪役を強力にしてその弱点を見事に克服していたが、同じくノーランが原案に絡んでいる本作は「スパイダーマン」より大分マシとは言え、イジイジしすぎている。

それでも前半はそのイジイジを利用して、まだるっこいながらもなかなか興味深く作られてはいる。しかるに、いよいよゾッドたちとの対決が始まるアクションに至り「よっ、待ってましたっ!」と言おうと思ったところ、動きが速すぎて何だかよく解らず気勢上がらず。本作に限らず、じっくり見せない作品が多いのは若者がそういうものを求めるからなのだろうが、案外自信がないからじっくり見せられないのではないかと疑いたくなる瞬間が本作に関しては多い。ザック・スナイダーの作品で映画的なショットや場面を見ようと思うのが筋違いなのだろう。

日本の怪獣映画に似て町を壊しすぎるのも気に入らない。クリストファー・リーヴのスーパーマンは地球に被害は最小限にしようと最大の努力を払っていたから後味も良かったのだけどなあ。映画サイトである人が仰っているように、9・11などの現実を見せつけられた上での作者の戦争観の反映なのかもしれないが、現実がひどいからこそ逆を描くことがあって然るべし。

といった次第で、星の数も厳しく行こう。

「晴れた日にキリストが見える」・・・この意味、解るかなあ?

この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年07月20日 18:15
強者ゆえのやさしさというものがわかっていないのでありましょうな~
オカピー
2014年07月20日 22:04
ねこのひげさん、こんにちは。

バットマンも出て来るという第2作も見ることになるでしょうが、本当は旧「スーパーマン」シリーズ二本(後の二本は要らん)のほうを再鑑賞したいくらい。
画面ががちゃがちゃ五月蠅いのはもう結構てな感じです。

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