映画評「ヒプノティスト-催眠-」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2012年スウェーデン映画 監督ラッセ・ハルストレム
ネタバレあり
日本での出世作「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」(1985年)を再鑑賞したばかりのラッセ・ハルストレムが25年ぶりに母国スウェーデンで作ったサスペンス映画である。この監督には珍しい素材ながら、昨今のハリウッド映画と違い過剰に刺激的な描写を避けた、良識のある作品として好感を覚えた。原作は同国の作家ラーシュ・ケプレルのミステリー。
体育館で体育教師が刺殺され、その後男の自宅で長男ヨセフ(ヨナタン・ボークマン)を除いて家族全員殺されるという惨劇が起きる。
地元警察に任せられない国家警察のヨーナ警部(トビアス・ジリアクス)は昏睡状態の少年から犯人の情報を得られないかと策を練るうち病院の女医ダニエラ(ヘレナ・アフ・サンデバリ)から催眠術で情報を得られる可能性があると告げられ、訳ありで催眠による情報獲得術を封印している医学関係者エリック(ミカエル・パーシュブラント)に試してもらう。
エリックは過去の事例が理由で不眠症に苦しみ、妻シモーネ(レナ・オリン)との仲も険悪になっている中息子ベンヤミンが誘拐される。一家殺しの事件と密接な関係がありそうだ。ヨセフから最初の事件の重要な情報を得た後、睡眠導入剤で全く事件を目撃していないエリックは薬剤を注入されて記憶がないという妻に催眠術をかけることにする。最終的にこの二つの事件は案の定結びつき、刑事と夫婦は正体と行方の掴めた誘拐犯人の許に駆けつける。
本格ミステリーの要素に、事件解決の鍵を握る催眠医師の息子が誘拐されるというサスペンスの要素を組み合わせているが、誘拐犯を突き止めるミステリーとして観るならば相当疑問の残る作品となる。何故なら催眠術による犯人特定は刑事事件の解決として弱いと思われるからである。
しかし、当事者が犯人から息子を取り戻すサスペンスと考えればまずまず楽しめると言える。細君が画家であるといった布石や伏線の回収が上手く行っている反面、これにより事件の解決が順調に行きすぎる感が残るのは良し悪し。
ハルストレムらしくショットはしっかり、場面もじっくり見せ、北欧らしい厳しいムードを醸成している。エンディング・クレジット背景の、余韻を残す延々たる移動俯瞰撮影にも痺れる。お話が複雑という人もいるが、【集中できない】病(笑)を患っている僕が難なく理解できるのだから何の問題もないだろう。
岡山の少女誘拐事件も無事解決して良かった。本人のトラウマ克服は大変だろうけど。
2012年スウェーデン映画 監督ラッセ・ハルストレム
ネタバレあり
日本での出世作「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」(1985年)を再鑑賞したばかりのラッセ・ハルストレムが25年ぶりに母国スウェーデンで作ったサスペンス映画である。この監督には珍しい素材ながら、昨今のハリウッド映画と違い過剰に刺激的な描写を避けた、良識のある作品として好感を覚えた。原作は同国の作家ラーシュ・ケプレルのミステリー。
体育館で体育教師が刺殺され、その後男の自宅で長男ヨセフ(ヨナタン・ボークマン)を除いて家族全員殺されるという惨劇が起きる。
地元警察に任せられない国家警察のヨーナ警部(トビアス・ジリアクス)は昏睡状態の少年から犯人の情報を得られないかと策を練るうち病院の女医ダニエラ(ヘレナ・アフ・サンデバリ)から催眠術で情報を得られる可能性があると告げられ、訳ありで催眠による情報獲得術を封印している医学関係者エリック(ミカエル・パーシュブラント)に試してもらう。
エリックは過去の事例が理由で不眠症に苦しみ、妻シモーネ(レナ・オリン)との仲も険悪になっている中息子ベンヤミンが誘拐される。一家殺しの事件と密接な関係がありそうだ。ヨセフから最初の事件の重要な情報を得た後、睡眠導入剤で全く事件を目撃していないエリックは薬剤を注入されて記憶がないという妻に催眠術をかけることにする。最終的にこの二つの事件は案の定結びつき、刑事と夫婦は正体と行方の掴めた誘拐犯人の許に駆けつける。
本格ミステリーの要素に、事件解決の鍵を握る催眠医師の息子が誘拐されるというサスペンスの要素を組み合わせているが、誘拐犯を突き止めるミステリーとして観るならば相当疑問の残る作品となる。何故なら催眠術による犯人特定は刑事事件の解決として弱いと思われるからである。
しかし、当事者が犯人から息子を取り戻すサスペンスと考えればまずまず楽しめると言える。細君が画家であるといった布石や伏線の回収が上手く行っている反面、これにより事件の解決が順調に行きすぎる感が残るのは良し悪し。
ハルストレムらしくショットはしっかり、場面もじっくり見せ、北欧らしい厳しいムードを醸成している。エンディング・クレジット背景の、余韻を残す延々たる移動俯瞰撮影にも痺れる。お話が複雑という人もいるが、【集中できない】病(笑)を患っている僕が難なく理解できるのだから何の問題もないだろう。
岡山の少女誘拐事件も無事解決して良かった。本人のトラウマ克服は大変だろうけど。
この記事へのコメント
『氷姫』というのを現在読んどりますが、映画化されるようであります。
あまりなじみのない国ですから珍しいのかもしれません。
>スウェーデン物
「ミレニアム」が当たったからでしょうか。
ストリンドベリ以外は純文学でも余り紹介されていなかったですし、これから色々と紹介されるかもしれませんね。
単なるブームで終わらないことを願います^^