映画評「西部悪人伝」

☆☆★(5点/10点満点中)
1970年イタリア=スペイン合作映画 監督ジャンフランコ・ペロリーニ(フランク・クレイマー)
ネタバレあり

中学時代マカロニ・ウェスタンは男子生徒に大人気であったが、1970年頃から映画を本格的に観始めた、少し遅れた世代であったので、観るのは専らTVであった。1973年くらいまでは辛うじて公開されていたものの、かつての勢いはなかった。
 本作は僕が映画を観始めた70年に公開された後期マカロニ・ウェスタンで、僕らの間でかなり人気のあったリー・ヴァン・クリーフ主演である。

南北戦争後、銀行の二階に収められた軍の大金を、軽業師の一味が得意の技を生かして金庫ごと強奪するが、それを見ていた正邪の知れぬ謎の男クリーフが特別な長距離ライフルで倒して奪還して僅かなご褒美にあずかる。強奪を計画した、欧州貴族の出来損ないみたいな怪しい風体のボス、フランコ・レッセルら三人のボスは愉快ならず、様々な暗殺者を遣わすもクリーフの才覚と腕前に全く歯が立たない。結局クリーフは味方だか敵だか解らなかったバンジョー弾きウィリアム・バーガーと対決することになる。

というお話で、「座頭市」の仕込み杖ならぬ仕込み○○の多さが目立つ。その代表がバンジョーであるが、クリーフが神父を倒す時にバッグを使うのが印象的。神父まで暗殺者という発想も一種の仕込み杖みたいなもので、マカロニ・ウェスタンならではの劇画的面白味がある。終盤ダイナマイトを使った爆破の連続の中でも、インディアン青年の軽業が目を引き、この辺りも本場の西部劇には余り観られないお楽しみでござる。
 クリーフの味方になるメキシコ人ペドロ・サンチェスの扱いなど、先日亡くなったジェームズ・ガーナー主演のコメディー西部劇「夕陽に立つ保安官」(1969年)は、この映画の後見ればもっと笑えただろう。
 僕らの若い頃と違って西部劇を観る機会が少ないので、点数こそ抑えたとは言え、退屈しない。

監督はフランク・クレーマーとアメリカ人を装っているが、本当はジャンフランコ・ペロリーニという生粋のイタリア人である。セルジョ・レオーネは「荒野の用心棒」のクレジットではボブ・ロバートソン、ジュリアーノ・ジェンマは「荒野の1ドル銀貨」のクレジットではモンゴメリー・ウッドであった。

同じようなものばかり見ていると食傷を起こすです。マカロニ・ブームはその典型だった。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年07月24日 02:48
最近、若手俳優のである時代劇を観ていて違和感があったのでありますが、あれはマカロニ時代劇と呼ぶべき代物かもしれませんね(笑)
ウエスタンも時代劇もできる俳優がいなくなったということでありますかね。
リー・バン・クリフ・・・彼も好きな俳優でありました。
迫力があり存在感ありましたね。
オカピー
2014年07月24日 17:38
ねこのひげさん、こんにちは。

僕らは先にマカロニから入って、後からジョン・ウェインなどの本場ウェスタンを見ました。ずっとそちらばかり観ていて、たまにマカロニを観ると「こんな変なものだったのか」と思い、さらに現在こうして観てみますと「案外きっちりしている」と感じます。これは今の映画がきっと変すぎるからなのでしょう(笑)

日本の俳優で、ベテランを含めて、時代劇をきちんとこなせる人は殆どいなくなりましたね。まして若い人にはなかなか。

>リー・バン・クリフ
イタリアに渡って良かったですよね。アメリカでは結局鳴かず飛ばずという印象は否めませんでしたから。
 それを考えると、イーストウッドがイタリアへ行かなかったら、監督イーストウッドも存在しなかったのでしょうか、という「たられば」に思いが至ります。
 「怒りの荒野」の師匠ぶりが人気でしたなあ。
蟷螂の斧
2019年04月06日 04:10
こちらにありましたね

>仕込んだ武器が多かったと記憶しております。

拳銃のグリップを折り曲げる。そこからも弾が出る

>本人は売れなかった彼女は寧ろあげまんでした。

内助の功があったのでしょう
でもカート・ラッセルはその後ゴールディ・ホーンと結婚

>陽水は初期には素朴故の凄味がありました。

「傘がない」も良いですね
オカピー
2019年04月06日 16:34
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>こちらに
ありましたね^^
僕自身、もう大分前に上げたと思っていたらまだ5年前に過ぎませんでした。時の流れは早かったり遅かったり、精神状態により変わりますねえ。

>内助の功
そんな感じでしょうかねえ。
僕はあのずっこけディズニー兄ちゃんだったラッセルが、マッチョマン俳優全盛時代だったとは言え、アクション俳優として再浮上するとは思いませんでしたよ。

>「傘がない」
デビュー・アルバムにも収められているシングルですね。このアルバムを買ったのは後年ですが、ほぼリアルタイムで知っていた曲。
厳密には1973年春に「放課後」という邦画で主題歌「夢の中へ」を聞いてショックを受け、それからラジオで井上陽水という名前があれば必ずラジカセに録音して憶えたわけです。だからこの曲を憶えたのは発表から半年くらい後になるのかな。

僕らの時代はかぐや姫と陽水の人気がもの凄く、修学旅行のバスの中で男子が歌うのは彼らの曲が圧倒的に多かったですよ。誰かが「人生が二度あれば」を歌ったら、女性の担任が笑いました(苦笑いか?)
図らずも中学のクラス対抗合唱コンクールで僕らが選んだのは「夢の中へ」。作曲家でもある校長先生から“合唱にはちと合わない曲”と批評されました。この話は以前したような気もしますが悪しからず。

あれから約半世紀が過ぎ、僕ももう白髪三千丈(僕はどちらか言うと髪が薄いのですが)の爺となりましたTT
蟷螂の斧
2019年04月07日 21:55
>この話は以前したような気もしますが悪しからず。

いやいや、とんでもないです中学時代の思い出は音楽と共に蘇ります
小林麻美が出ていた化粧品のCMとBGMを今でも思い出します「マイ・ピュア・レディ」

>井上陽水

偶然ラジオから録音した「桜三月散歩道」も良かったです

>アクション俳優として再浮上

「バックドラフト」も良かったです。

>映画

昨日は「ジュリアス・シーザー」と「ミルドレッド・ピアース」今日は「ウィル・ペニー」を見ました
オカピー
2019年04月08日 19:26
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>「マイ・ピュア・レディ」
ついこの間のような気がしますが、40年くらい前の曲になりますねえ。
尾崎亜美もそれから数年間は相当売れましたね。南沙織が歌った「春の予感」、杏里が歌った「オリビアを聴きながら」。彼女も天才かな。

>「桜三月散歩道」
これ、大好きでした。
英語が得意だったので、どう訳すのが良いかなと考えたりしましたねえ。
I don't care wherever we may go...とかね。
使用している単語故に、今、放送できないのではないかなあ。

>映画
「ジュリアス・シーザー」はジョゼフ・L・マンキーウィッツの監督作品で、双葉師匠はこの作品で彼の限界を見たと仰っていますね。
「ミルドレッド・ピアース」は「カサブランカ」が評判になったマイケル・カーティsの作品ですが、日本では劇場公開されませんでした。僕はWOWOWで観てなかなか良い映画と思いました。
「ウィル・ペニー」はトム・グリース(グライス)の監督作品にしては気に入った西部劇です。当時はチャールトン・ヘストンが好きでしたが、全米ライフル協会会長を務めてがっかりしました。細かいことは忘れました(笑)
蟷螂の斧
2019年04月08日 19:39
こんばんは。

>彼女も天才かな。

「天使のウィンク」が好きです。特に亜美さんが歌うバージョン

>I don't care wherever we may go...とかね。

さすがオカピー教授です。
今でも放送して欲しいです。

>双葉師匠はこの作品で彼の限界を見た

著作に「彼は何をしたかったのか?」と書いてらっしゃいました。

>「ミルドレッド・ピアース」

娘との複雑な関係、そして愛情
演じたジョーン・クロフォードはベティ・デイヴィスと激しいバトルがありました

>気に入った西部劇です

すごく良かったです。等身大の主人公。不器用な人。

>全米ライフル協会会長

何で引き受けたのでしょうか?

>ジェームズ・ガーナー

彼もまた良い役者です
オカピー
2019年04月09日 18:26
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>「天使のウィンク」
松田聖子はこの辺りまでは知っています!
尾崎亜美でしたか。知らなかったのか、忘れてしまったのか、解りませんTT

>ジョーン・クロフォードはベティ・デイヴィスと激しいバトル
二人は「何がジェーンに起ったか?」で再共演、もっと恐ろしいことに。

>>全米ライフル協会会長
>何で引き受けたのでしょうか?

かなりの保守に見受けられますからねえ。でも「ベン・ハー」のイメージが崩れた。まあベン・ハーのような正義感もあるのでしょうが、日本のように販売が制限されれば年間どれくらいの命が奪われるに済むか。防げる命も勿論ありますが、奪われる命のほうが多いのはデータから明らか。ましてテロには何の効果もない。

>ジェームズ・ガーナー
とぼけた西部劇二本、楽しかったですねえ。

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