映画評「コレクター」(2012年)
☆☆(4点/10点満点中)
2012年アメリカ映画 監督モーガン・オニール
ネタバレあり
1998年に「コレクター」という邦題の映画が公開された時はウィリアム・ワイラーの傑作同名映画(1965年)のリメイクかと一瞬思ったが、原題が全然違うので関連ないと解った。またまた同じ邦題の本作はこれまた全く違う原題なので関係なし。
しかし、映画でこの単語が使われたら、コレクトされるのは人間と思ってほぼ間違いない。これが本当の猟奇(奇をあさる)である。元来、【猟奇】に人体損壊や残忍という意味はない。ご存知でしたか?
(例えば)殺人犯が人体の一部即ち変わったものを集める=猟奇殺人⇒人体損壊・残忍、という意味の変遷があったと思う。僕もその意味で使っているので、批判しているわけではござらぬ。グロテスクもほぼ同様なので、興味があったら、原義についてお調べください。
さて、またまた登場のジョン・キューザック演ずる刑事が、娼婦ばかりを狙った連続拉致事件を執念深く調べていくうちに、あばずれみたいな恰好をしている17歳の娘メイ・ホイットマンがいなくなってしまったので大慌て、相棒の女刑事ジェニファー・カーペンターと捜査を進めるうちに、案の定彼が探っている犯人による犯行らしいと判って来る。
この一年でも数作ほど拉致・誘拐ものを見せられているので「またかいな」という印象は禁じえないものの、近作では「ファインド・アウト」と「ヒプノティスト-催眠-」を合わせて換骨奪胎し刑事映画に仕立て直したような感じで、一応のムードもあるコンパクトな刑事ミステリーとして案外気持ちよく観ていた。
ところが、実行犯とは別に意外なところに共犯者がいたと判明する最後のどんでん返しで大いにずっこける。下手などんでん返しの典型だからである。確かに、キューザックが既に分かっている実行犯に迫る倒叙ミステリー形式のお話と思い込んで観ていれば、勘の良し悪しに関係なく、このどんでん返しは予想しないから驚かされる。
幾つか伏線はある。あるという以上にそのつもりで観ればバレバレなくらいであるが、伏線以外の描写がインチキすぎる。全編を覆うインチキを、幾つか設けた伏線で誤魔化した挙句に「諸君、このどんでん返しに驚きましたか」では誠に困るのである。逆に、上述したように、どんでん返しを予期して観ていると、共犯の見当が付きやすく、やはりガッカリしてしまう。
実話にインスパイアされたとあるが、実話と言える部分は拉致・監禁とその理由だけだろう。
こういうタイプの作品の増加は、アメリカにおける行方不明の多さを反映しているのだな。
2012年アメリカ映画 監督モーガン・オニール
ネタバレあり
1998年に「コレクター」という邦題の映画が公開された時はウィリアム・ワイラーの傑作同名映画(1965年)のリメイクかと一瞬思ったが、原題が全然違うので関連ないと解った。またまた同じ邦題の本作はこれまた全く違う原題なので関係なし。
しかし、映画でこの単語が使われたら、コレクトされるのは人間と思ってほぼ間違いない。これが本当の猟奇(奇をあさる)である。元来、【猟奇】に人体損壊や残忍という意味はない。ご存知でしたか?
(例えば)殺人犯が人体の一部即ち変わったものを集める=猟奇殺人⇒人体損壊・残忍、という意味の変遷があったと思う。僕もその意味で使っているので、批判しているわけではござらぬ。グロテスクもほぼ同様なので、興味があったら、原義についてお調べください。
さて、またまた登場のジョン・キューザック演ずる刑事が、娼婦ばかりを狙った連続拉致事件を執念深く調べていくうちに、あばずれみたいな恰好をしている17歳の娘メイ・ホイットマンがいなくなってしまったので大慌て、相棒の女刑事ジェニファー・カーペンターと捜査を進めるうちに、案の定彼が探っている犯人による犯行らしいと判って来る。
この一年でも数作ほど拉致・誘拐ものを見せられているので「またかいな」という印象は禁じえないものの、近作では「ファインド・アウト」と「ヒプノティスト-催眠-」を合わせて換骨奪胎し刑事映画に仕立て直したような感じで、一応のムードもあるコンパクトな刑事ミステリーとして案外気持ちよく観ていた。
ところが、実行犯とは別に意外なところに共犯者がいたと判明する最後のどんでん返しで大いにずっこける。下手などんでん返しの典型だからである。確かに、キューザックが既に分かっている実行犯に迫る倒叙ミステリー形式のお話と思い込んで観ていれば、勘の良し悪しに関係なく、このどんでん返しは予想しないから驚かされる。
幾つか伏線はある。あるという以上にそのつもりで観ればバレバレなくらいであるが、伏線以外の描写がインチキすぎる。全編を覆うインチキを、幾つか設けた伏線で誤魔化した挙句に「諸君、このどんでん返しに驚きましたか」では誠に困るのである。逆に、上述したように、どんでん返しを予期して観ていると、共犯の見当が付きやすく、やはりガッカリしてしまう。
実話にインスパイアされたとあるが、実話と言える部分は拉致・監禁とその理由だけだろう。
こういうタイプの作品の増加は、アメリカにおける行方不明の多さを反映しているのだな。
この記事へのコメント
そしてリメイクかと思って観てガックリ来るのでありますね。
邦題をつえるときはもう少し知恵を巡らした方がいいと思うのであります。
こういう悲惨な事件は多いようで、映画や小説よりも凄惨を極める例が少なくないようです。
日本でも近年妙な事件が多いですしね。
いやな感じであります。
ワイラーの1965年作は傑作ですからねえ。
内容も全然違いますが、比較する気にもなれないです。
仰るように、日本でも営利誘拐とは違うタイプの、こういう事件が増えてきましたね。
誘拐・拉致ではないですが、長崎の事件は恐ろしすぎます。
オチの唐突感が、テレビの2時間ドラマやVシネマ的で、でも全体に映画の規模がコンパクトな印象があるので、高級Vシネと見ればあれもありかなあって。
この元になった連続殺人犯の事件と、それとわりと近年ですけれども、何人もの子供を育てていたレズビアンカップルが一家心中した事件や、何人もの子供をずっと家庭内に閉じ込めていた夫婦の事件を思い出しました。
>これ、邦題のつけ方がねえ。
確かに若い人には余り関係がないとは言え、選択する時に間違えやすくて、やはり良くないですね。「初恋」といった普遍的な名詞なものならまだしも。
>オチの唐突感が
そうなんです。僕はそれまで倒叙ミステリーとしてニコニコ観ていたものですから、ちょっとデタラメすぎると大減点ですよ。怒る程ではないですが。
>事件を思い出しました。
今、ドラマ系に実話がもてはやされていますが、ジャンル映画でも使えそうな素材がいっぱいあるようですね(困ったもんだ)。