映画評「恋するローマ、元カレ・元カノ」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2009年イタリア=フランス合作映画 監督ファウスト・ブリッツィ
ネタバレあり
イタリア映画は1950~60年代にかけて盛んにオムニバス映画を作ったし、その多くが艶笑コメディーとあったことを考えると、本作はその伝統を思い出させずにはおかない恋愛コメディーである。但し、現在ではストレートなオムニバス映画は好まれず、幾つかのエピソードが並行し時に交錯する群像劇型が圧倒的に多く、6エピソードあるらしい本作もその例に洩れない。
離婚するに際して共に子供の親権を持ちたがらない情けない夫婦がしっかりした子供たちにぺちゃんこにされるという話があり、その裁判を受け持った判事が実は妻との仲が最悪状態でドタバタしているという辺りは相互に関連性が深いが、その他のお話はほぼ独立している。即ち以下の如し。
仕事の関係でフランスとニュージーランドに離れ離れになった恋人たちの愛し合っているが故のすれ違い、心理学者なのに離婚した妻が交通事故死して初めて自分の真情に気付く男性、結婚式を司ることになった神父が昔の恋人が新婦(洒落じゃないのだが)と知って煩悩を呼び起こす一幕、元カノに未練たらたらの刑事がその現在の恋人たる男性の恋路を色々と邪魔するが、強盗に撃たれて負傷した時の執刀医師がその人物であるというお笑い。
大体がハッピーエンド的に終わる中で、最後に記した挿話は二人の男性がさらに別の男性と付き合っているらしい相手の女性の浮気っぽい性格に「しようがないか」と同病相憐れむ幕切れで、極めてイタリア艶笑喜劇的な皮肉っぽさがあると言うべし。神父の挿話もなかなか面白い。最も喜劇的なのは判事の一幕。
個人的な趣味としては、この手の群像劇は主人公を絞った話より誤魔化しが効きやすい為に余り好まず、複数の人物が主役として出るのであれば挿話ごとにオムニバス形式で見せて貰いたいと文句を付けようと思って見続けていたが、自説も間違ってはいないと思いつつも、編集は凝ってはいないがなかなかきちんとしてい、昨今のアメリカ恋愛喜劇の下品ぶりに比べるとずっと上品なお笑いに推移して後味が良いので、迷った末にこの星の数に落ち着いた。
配役ではヴィットリオ・ガスマンの息子アレッサンドロ・ガスマンくらいしか知らないし、監督のファウスト・ブリッツィも日本初紹介。しかし、「ラブ・アクチュアリー」(2003年)ほど鮮やかな人物捌きとは言えないものの、同作がお好きなら一見の価値あり。
ピエトロ・ジェルミの「イタリア式離婚狂想曲」(1962年)を思い出したデス。懐かしい。
2009年イタリア=フランス合作映画 監督ファウスト・ブリッツィ
ネタバレあり
イタリア映画は1950~60年代にかけて盛んにオムニバス映画を作ったし、その多くが艶笑コメディーとあったことを考えると、本作はその伝統を思い出させずにはおかない恋愛コメディーである。但し、現在ではストレートなオムニバス映画は好まれず、幾つかのエピソードが並行し時に交錯する群像劇型が圧倒的に多く、6エピソードあるらしい本作もその例に洩れない。
離婚するに際して共に子供の親権を持ちたがらない情けない夫婦がしっかりした子供たちにぺちゃんこにされるという話があり、その裁判を受け持った判事が実は妻との仲が最悪状態でドタバタしているという辺りは相互に関連性が深いが、その他のお話はほぼ独立している。即ち以下の如し。
仕事の関係でフランスとニュージーランドに離れ離れになった恋人たちの愛し合っているが故のすれ違い、心理学者なのに離婚した妻が交通事故死して初めて自分の真情に気付く男性、結婚式を司ることになった神父が昔の恋人が新婦(洒落じゃないのだが)と知って煩悩を呼び起こす一幕、元カノに未練たらたらの刑事がその現在の恋人たる男性の恋路を色々と邪魔するが、強盗に撃たれて負傷した時の執刀医師がその人物であるというお笑い。
大体がハッピーエンド的に終わる中で、最後に記した挿話は二人の男性がさらに別の男性と付き合っているらしい相手の女性の浮気っぽい性格に「しようがないか」と同病相憐れむ幕切れで、極めてイタリア艶笑喜劇的な皮肉っぽさがあると言うべし。神父の挿話もなかなか面白い。最も喜劇的なのは判事の一幕。
個人的な趣味としては、この手の群像劇は主人公を絞った話より誤魔化しが効きやすい為に余り好まず、複数の人物が主役として出るのであれば挿話ごとにオムニバス形式で見せて貰いたいと文句を付けようと思って見続けていたが、自説も間違ってはいないと思いつつも、編集は凝ってはいないがなかなかきちんとしてい、昨今のアメリカ恋愛喜劇の下品ぶりに比べるとずっと上品なお笑いに推移して後味が良いので、迷った末にこの星の数に落ち着いた。
配役ではヴィットリオ・ガスマンの息子アレッサンドロ・ガスマンくらいしか知らないし、監督のファウスト・ブリッツィも日本初紹介。しかし、「ラブ・アクチュアリー」(2003年)ほど鮮やかな人物捌きとは言えないものの、同作がお好きなら一見の価値あり。
ピエトロ・ジェルミの「イタリア式離婚狂想曲」(1962年)を思い出したデス。懐かしい。
この記事へのコメント
ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニの名コンビの数々の作品を思い出しますね。
>ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニ
二人が共演した「昨日・今日・明日」と言えば、僕らの若い頃はイタリア喜劇の定番でしたが、今は題名も知らない若い自称映画ファンも多いかもですね。
悲劇「ひまわり」も序盤はちょっと喜劇風でね、いかにもイタリア映画、というかデ・シーカ作品でした。