映画評「荒野の七人」
☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1960年アメリカ映画 監督ジョン・スタージェス
ネタバレあり
ご存知黒澤明監督「七人の侍」(1954年)の北米版である。
志村喬に相当するユル・ブリンナーが野盗に食料を奪われて困っているメキシコの農民から頼まれた野盗退治を引き受け、墓地埋葬のゴタゴタで親しくなったスティーヴ・マックィーンと共に優秀なガンマン5人を集めることにする。
以下、ほぼオリジナルに準じているのでストーリーの詳細は省略することにするが、随分昔に観た(二回目からでも多分四半世紀くらい経っている)時の記憶と違って、若者ホルスト・ブッフホルツは三船敏郎と木村功の二人分を兼ねていることに気付いた。その代わりにできた新キャラクターをロバート・ヴォーンが演じている。他にチャールズ・ブロンスン、ジェームズ・コバーン、ブラッド・デクスターが出演し、今観ると大変豪華ながら、ブリンナー以外は本作以降有名になった人ばかりである。
監督は構図の人ジョン・スタージェスで、本作でも素晴らしい構図のショットの連続。アクション場面の処理も鮮やかで、特に七人ものガンマンが激しく駆け巡る決闘での捌き方は見事と言うしかない。最近の監督が一対一の単純な格闘すら何をやっているか碌に解らないものしか撮らない(流行のせいもあるのでさすがに“撮れない”とは言いにくい)のとは大違いだ。
西部劇としての角度からも、マックィーンの弾丸の込める際の確認作業や、ドアを開ける時のガンマンらしい対応の仕方など誠に実際的に描写され、非常に感じを出している。
「七人の侍」と比べると心情的な側面は大分合理化・軽量化されているが、それでもなかなか見応えがある。強がっていながら内心びくびくしているヴォーンの描写などはその筆頭。農民出身のブッフホルツ以外の助っ人6人は基本的に同病相憐れむ関係で、僕は「男をつらいよ」を思い出していた。つまり、定着することに憧れはあるが、定着すること即ち家族に対する責任を持つことに怖さも持っていてヤクザな稼業を続けているのである。ブロンスンがその心境をよく語っているし、為に寧ろその死に幸福を覚えさせるものがある。
また、煩悩のうちに死に行くデクスターに対し友人ブリンナーが嘘で答えるのは「冒険者たち」(1967年)の幕切れに極めて似ている。ジョゼ・ジョヴァンニがかの作品の原作を書いたのは、この映画の公開より後なのだろうか? もし後ならジョヴァンニがこの作品を観て参考にした可能性ありです。
一つ難がある。助っ人たちが殺されずに解放された後野盗たちが取り上げた銃を持ってくる。彼らはその銃を使って野盗たちに再攻勢をかける。これが多少後味の悪さを覚えさせるのである。助っ人たちにしてみればプライドを傷つけられたということだろうが、【恩を仇で返す】ことに変わりはない。
「荒野の七人」が「男はつらいよ」だったとはねえ。初めて気付きましたよ。ということは「七人の侍」もそうなのだろう。いつか確認しないといけない。見ているようで見ていないものだなあ。
1960年アメリカ映画 監督ジョン・スタージェス
ネタバレあり
ご存知黒澤明監督「七人の侍」(1954年)の北米版である。
志村喬に相当するユル・ブリンナーが野盗に食料を奪われて困っているメキシコの農民から頼まれた野盗退治を引き受け、墓地埋葬のゴタゴタで親しくなったスティーヴ・マックィーンと共に優秀なガンマン5人を集めることにする。
以下、ほぼオリジナルに準じているのでストーリーの詳細は省略することにするが、随分昔に観た(二回目からでも多分四半世紀くらい経っている)時の記憶と違って、若者ホルスト・ブッフホルツは三船敏郎と木村功の二人分を兼ねていることに気付いた。その代わりにできた新キャラクターをロバート・ヴォーンが演じている。他にチャールズ・ブロンスン、ジェームズ・コバーン、ブラッド・デクスターが出演し、今観ると大変豪華ながら、ブリンナー以外は本作以降有名になった人ばかりである。
監督は構図の人ジョン・スタージェスで、本作でも素晴らしい構図のショットの連続。アクション場面の処理も鮮やかで、特に七人ものガンマンが激しく駆け巡る決闘での捌き方は見事と言うしかない。最近の監督が一対一の単純な格闘すら何をやっているか碌に解らないものしか撮らない(流行のせいもあるのでさすがに“撮れない”とは言いにくい)のとは大違いだ。
西部劇としての角度からも、マックィーンの弾丸の込める際の確認作業や、ドアを開ける時のガンマンらしい対応の仕方など誠に実際的に描写され、非常に感じを出している。
「七人の侍」と比べると心情的な側面は大分合理化・軽量化されているが、それでもなかなか見応えがある。強がっていながら内心びくびくしているヴォーンの描写などはその筆頭。農民出身のブッフホルツ以外の助っ人6人は基本的に同病相憐れむ関係で、僕は「男をつらいよ」を思い出していた。つまり、定着することに憧れはあるが、定着すること即ち家族に対する責任を持つことに怖さも持っていてヤクザな稼業を続けているのである。ブロンスンがその心境をよく語っているし、為に寧ろその死に幸福を覚えさせるものがある。
また、煩悩のうちに死に行くデクスターに対し友人ブリンナーが嘘で答えるのは「冒険者たち」(1967年)の幕切れに極めて似ている。ジョゼ・ジョヴァンニがかの作品の原作を書いたのは、この映画の公開より後なのだろうか? もし後ならジョヴァンニがこの作品を観て参考にした可能性ありです。
一つ難がある。助っ人たちが殺されずに解放された後野盗たちが取り上げた銃を持ってくる。彼らはその銃を使って野盗たちに再攻勢をかける。これが多少後味の悪さを覚えさせるのである。助っ人たちにしてみればプライドを傷つけられたということだろうが、【恩を仇で返す】ことに変わりはない。
「荒野の七人」が「男はつらいよ」だったとはねえ。初めて気付きましたよ。ということは「七人の侍」もそうなのだろう。いつか確認しないといけない。見ているようで見ていないものだなあ。
この記事へのコメント
本当にこれ大好きです。
映画館でリバイバル観た時、音楽聴いただけで涙しました笑
あと、自分好みの出演者見てるだけで興奮してきます笑
主な出演者でまだ生きてるのは、ヴォーンくらいですかね。イーライ・ウォラックもこの間亡くなりましたし。
最近観たい新作が激減しているので、再鑑賞に頼っているのですが、昔の映画には楽しめるものが多いですねえ。
お話の構図がシンプルなのが良いです。
>音楽
エルマー・バーンスタインの格好良い音楽について触れようかなと一瞬考えましたが、もう「言わずもがな」と思いましてね。僕も涙が出そうになりましたよ。僕の場合は若く未来があった昔を思い出したからですけど(笑)
>出演者
皆、格好良かったなあ。
ブラッド・デクスター以外は後年A級映画の主役俳優になりましたからね。この作品のキャスティングをした人は見る目あるです(笑)
僕の周囲では、ジェームズ・コバーンの人気が高かったですよ。
何しろ50年以上も前の作品ですから、出演者の方々も、亡くなりますよね。
マックィーンの早さには驚きましたが。
役者も、当時、無名だったとは思えないくらいよかったです。
『七人の侍』でも、志村さんが「結局、勝ったのは彼ら農民たちだ」とか言っていますね。
侍=男という事で、侍というのはなんの生産性もない百姓に食わしてもらっている存在なのだ。、だからおおいに見栄を張って生きていくことしかできないのだと、書いていた小説がありました。
「七人の侍」の最後の台詞はよく憶えているのですが、この作品ほど定着への憧れめいたものを示していなかったような記憶があります。
生産性がないという点では、この作品も同じことを述べていますし、「勝ったのは農民だ」という台詞に至っては村長が言って、さらにブリンナーも村を出る時に繰り返します。村長が言わない方が効果的だったと思いました。