映画評「ビザンチウム」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年イギリス=アイルランド合作映画 監督ニール・ジョーダン
ネタバレあり
クラシックな恐怖素材にアングルを付けて作るのが好きなニール・ジョーダン監督が、かつての「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」(1994年)の自伝的形式を取り入れて「ぼくのエリ 200歳の少女」のヴァリエーションを作りました、という印象の吸血鬼映画。ジョーダンのことだからジャンル映画としての作りには興味を見せず、文学少女が好みそうなテイストの仕上がりながら、「トワイライト」シリーズのようなミーハー気分は薄く、大人の鑑賞に堪える。
老人の血を吸って生きる苦労から解放してあげた16歳のシアーシャ・ローナンが、売春業で食っている8歳年上の姉ジェマ・アータートンに連れられて、ビザンチウムという場所へ移動する。
彼女は誰に読ませる目的もなく母親が吸血鬼になった経緯を綴った自伝を書いているが、実は姉ではなく母親であるジェマは自分たちの経歴が世間に知られるのを恐れている。
案の定、シアーシャが好意を覚えた白血病の少年ケイレブ・ランドリー・ジョーンズなどに見せたことから情報が洩れ、吸血鬼の同盟に属する二人が現れる。が、二人に好意を持つ青年メンバーのサム・ライリーは同僚の首をはねて殺し、母親から解放されたシアーシャは少年と共に吸血鬼になれる秘所へ向かう。
所謂ジャンル映画的な作りではなく、エドガー・アラン・ポーの怪奇小説を思わせるクラシックな幻想的ムードに横溢、異形の者たちの孤独に生きる悲しみを漂わせる辺りはシェリー夫人「フランケンシュタイン」から移入したような感じで、色々趣向をこらしても底の浅さを露呈する通俗的吸血鬼映画と一線を画する。
吸血鬼の設定も「ドラキュラ」式ではなく、親指の鋭い爪で血管を破った上で血を吸うというのは新アイデアであるし、日光にも強い。この手の設定変更はジャンル映画では戸惑うことが多いが、作者が大衆的サスペンスを狙っていない以上従来の吸血鬼の弱点に従う理由もないわけである。
画面は幻想美があり秀逸と言って良い出来。ゾンビほどでないにしても大量生産気味で観る気の起こらない吸血鬼映画ながら、監督が実績のあるジョーダンだから観たわけだが、その甲斐のあった出来栄えで、幻想映画の角度から見ればかなり満足できる。「ぼくのエリ」同様少女が200年生きているという設定には苦笑も洩れるが。
吸血鬼の見た目年齢はその人固有なのでしょうか? 誰か教えて。
2012年イギリス=アイルランド合作映画 監督ニール・ジョーダン
ネタバレあり
クラシックな恐怖素材にアングルを付けて作るのが好きなニール・ジョーダン監督が、かつての「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」(1994年)の自伝的形式を取り入れて「ぼくのエリ 200歳の少女」のヴァリエーションを作りました、という印象の吸血鬼映画。ジョーダンのことだからジャンル映画としての作りには興味を見せず、文学少女が好みそうなテイストの仕上がりながら、「トワイライト」シリーズのようなミーハー気分は薄く、大人の鑑賞に堪える。
老人の血を吸って生きる苦労から解放してあげた16歳のシアーシャ・ローナンが、売春業で食っている8歳年上の姉ジェマ・アータートンに連れられて、ビザンチウムという場所へ移動する。
彼女は誰に読ませる目的もなく母親が吸血鬼になった経緯を綴った自伝を書いているが、実は姉ではなく母親であるジェマは自分たちの経歴が世間に知られるのを恐れている。
案の定、シアーシャが好意を覚えた白血病の少年ケイレブ・ランドリー・ジョーンズなどに見せたことから情報が洩れ、吸血鬼の同盟に属する二人が現れる。が、二人に好意を持つ青年メンバーのサム・ライリーは同僚の首をはねて殺し、母親から解放されたシアーシャは少年と共に吸血鬼になれる秘所へ向かう。
所謂ジャンル映画的な作りではなく、エドガー・アラン・ポーの怪奇小説を思わせるクラシックな幻想的ムードに横溢、異形の者たちの孤独に生きる悲しみを漂わせる辺りはシェリー夫人「フランケンシュタイン」から移入したような感じで、色々趣向をこらしても底の浅さを露呈する通俗的吸血鬼映画と一線を画する。
吸血鬼の設定も「ドラキュラ」式ではなく、親指の鋭い爪で血管を破った上で血を吸うというのは新アイデアであるし、日光にも強い。この手の設定変更はジャンル映画では戸惑うことが多いが、作者が大衆的サスペンスを狙っていない以上従来の吸血鬼の弱点に従う理由もないわけである。
画面は幻想美があり秀逸と言って良い出来。ゾンビほどでないにしても大量生産気味で観る気の起こらない吸血鬼映画ながら、監督が実績のあるジョーダンだから観たわけだが、その甲斐のあった出来栄えで、幻想映画の角度から見ればかなり満足できる。「ぼくのエリ」同様少女が200年生きているという設定には苦笑も洩れるが。
吸血鬼の見た目年齢はその人固有なのでしょうか? 誰か教えて。
この記事へのコメント
少年に見えるけど、実際は200歳であるとか、30歳の紳士が500歳であるとか・・・
で、あるから殺されると、灰になってしまうという事のようです。
画像が美しければよろしいかと・・・・('◇')ゞ
>吸血鬼は自分の好きな年齢で
この作品を見ると、そんな感じですね。
母親は十代で吸血鬼になりましたが、今の姿はそれより一回りくらい年上の感じですから。
ゾンビと違って見た目が良いケースが多いので吸血鬼もののほうを好んで観ますが、それにしても多いです。