映画評「100回泣くこと」
☆☆★(5点/10点満点中)
2013年日本映画 監督・廣木隆一
ネタバレあり
アイドル主演の死病映画・・・最も観る気の起こらない類でありますが。
映画サイト"Yahoo!映画"に「どうしてこんな監督がずっと映画を撮らせてもらえるのか」という主旨のコメントがあったが、僕に言わせれば「何故廣木隆一のようなセミ・ドキュメンタリー志向と思われる監督がこんなお涙頂戴のミーハー映画ばかり撮らされるのだ?」、畑違いなのである。
しかし、フィルモグラフィーを見ると彼にふさわしい素材の作品は「ヴァイブレータ」くらいで後は極めて大衆的・・・というより通俗的な作品ばかりで、作品内容に対し、散見されるドキュメンタリー風のタッチに違和感を覚えることが多い。それでもずっと見続けているのは感覚の良いショットや場面が各作品に少なくとも一箇所はあったからである。殆ど感心するところがなかったのは「余命1ヶ月の花嫁」で、姉妹編のようなこの作品にも彼らしい感性の場面は観られない。
友達の結婚式で大倉忠義君と桐谷美玲嬢が知り合い交際を始める。彼女にしてみれば彼は昔の恋人であるが、オートバイの事故でその一年前の記憶がすっぽり抜け落ちている彼は全く初めての交際と信じている。
彼女がその事実を秘しているのは4年前に一旦治癒した卵巣癌の再発を恐れているからで、5年再発しなければ治癒と言われている為、彼が結婚を申し込んだ時に一年の準備期間を設けようと提案する。
そして結局癌が再発し、父の看病と偽って彼の前から姿を消す。彼は、やがて彼女の親友ともさかりえから真相をきかされ、同窓会の誘いか何かの手紙に記された住所へ赴く。そこは二人が彼女の発病まで過ごした賃貸住宅で、その中に居る間に彼の記憶が蘇って来る。
片や記憶喪失で片や癌というカップルの死病映画は前例がないと思うが、記憶の蘇りがドラマ構成上一応の効果を生んでいる。時系列を逆さまにした今時の作劇が自然に行われるからである。尤もこの“自然”は構成上の“自然”であって、お話自体における“本当らしさ”を意味しないから気を付けてくだされ。
全てを思い出した彼が病院から彼女を連れ出すのは最近の死病映画の定石になりつつあり「またか」の感あり。オートバイを絡めたのは少し良いが、オートバイの復活とヒロインの治癒を重ねたほうが新味がありましたな。癌だからと言って無理に死なせる必要もなく、生かしておくのも手である。
それにしても「泣けないから駄作」でありますか? 確かに泣かせるのを目的とした映画が泣かせられない以上そう言われても仕方がないものの、寧ろ淡々とした作りは評価すべきで、これが強引(に泣かせるよう)な展開やオーバーな見せ方のオンパレードであったら大人の鑑賞者には却って鼻白むだけだろう。
何故“100回”なのかは解らない。
2013年日本映画 監督・廣木隆一
ネタバレあり
アイドル主演の死病映画・・・最も観る気の起こらない類でありますが。
映画サイト"Yahoo!映画"に「どうしてこんな監督がずっと映画を撮らせてもらえるのか」という主旨のコメントがあったが、僕に言わせれば「何故廣木隆一のようなセミ・ドキュメンタリー志向と思われる監督がこんなお涙頂戴のミーハー映画ばかり撮らされるのだ?」、畑違いなのである。
しかし、フィルモグラフィーを見ると彼にふさわしい素材の作品は「ヴァイブレータ」くらいで後は極めて大衆的・・・というより通俗的な作品ばかりで、作品内容に対し、散見されるドキュメンタリー風のタッチに違和感を覚えることが多い。それでもずっと見続けているのは感覚の良いショットや場面が各作品に少なくとも一箇所はあったからである。殆ど感心するところがなかったのは「余命1ヶ月の花嫁」で、姉妹編のようなこの作品にも彼らしい感性の場面は観られない。
友達の結婚式で大倉忠義君と桐谷美玲嬢が知り合い交際を始める。彼女にしてみれば彼は昔の恋人であるが、オートバイの事故でその一年前の記憶がすっぽり抜け落ちている彼は全く初めての交際と信じている。
彼女がその事実を秘しているのは4年前に一旦治癒した卵巣癌の再発を恐れているからで、5年再発しなければ治癒と言われている為、彼が結婚を申し込んだ時に一年の準備期間を設けようと提案する。
そして結局癌が再発し、父の看病と偽って彼の前から姿を消す。彼は、やがて彼女の親友ともさかりえから真相をきかされ、同窓会の誘いか何かの手紙に記された住所へ赴く。そこは二人が彼女の発病まで過ごした賃貸住宅で、その中に居る間に彼の記憶が蘇って来る。
片や記憶喪失で片や癌というカップルの死病映画は前例がないと思うが、記憶の蘇りがドラマ構成上一応の効果を生んでいる。時系列を逆さまにした今時の作劇が自然に行われるからである。尤もこの“自然”は構成上の“自然”であって、お話自体における“本当らしさ”を意味しないから気を付けてくだされ。
全てを思い出した彼が病院から彼女を連れ出すのは最近の死病映画の定石になりつつあり「またか」の感あり。オートバイを絡めたのは少し良いが、オートバイの復活とヒロインの治癒を重ねたほうが新味がありましたな。癌だからと言って無理に死なせる必要もなく、生かしておくのも手である。
それにしても「泣けないから駄作」でありますか? 確かに泣かせるのを目的とした映画が泣かせられない以上そう言われても仕方がないものの、寧ろ淡々とした作りは評価すべきで、これが強引(に泣かせるよう)な展開やオーバーな見せ方のオンパレードであったら大人の鑑賞者には却って鼻白むだけだろう。
何故“100回”なのかは解らない。
この記事へのコメント
このような似たような作品が何度も作られるのは需要があるという事でしょうな。
死ななければ泣けないとは情けない(笑)。
末期脳腫瘍から蘇った子供の事例が幾つかありますしね。
新聞のTV欄にも色々投稿されていますが、“需要の多さ”を全く考えていない発言には問題を感じますね。
金を払って観る映画と違ってTVの場合は、自分の趣味と純粋に合わない番組は、文句を言わずに見なければ良いだけのことです。僕もこれが廣木監督でなければ観なかったです。観て正解とも思いませんでしたが^^;