映画評「キャリー」(1976年)
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1976年アメリカ映画 監督ブライアン・デ・パルマ
ネタバレあり
ブライアン・デ・パルマは「悪魔のシスター」(1973年)でヒッチコック的ということで少し注目され、続く「ファントム・オブ・パラダイス」(1975年)でオールド映画ファンの関心を引いた。が、一般的になったのはこの青春ホラー「キャリー」からで、本作が最初の映画化となるホラー小説家スティーヴン・キングも俄然注目され、その作品が次々と映画化されるきっかけとなった。
大人しくて見た目も悪い為同級生からいじめられている高校生キャリー(シシー・スペイシク)が、その中でも激しく憎悪している同級生クリス(ナンシー・アレン)の企みで、プロムの最後でのお決まりであるクイーンに選ばれてステージに上がった時に豚の血を浴びてしまう。生まれて初めて味わった幸福感を台無しにされて怒った彼女は潜在的に持っていたテレキネシス(念動力)を使って舞台となった体育館を水浸しにした上で電気を流して生徒や先生たちを皆殺しにしてしまう。先生からお目玉をくらって体育館から追い出されたスー(エイミー・アーヴィング)だけが難を逃れるが、キャリーが自宅で焼死した後も悪夢に悩まされる。
先日「クロニクル」の後半で思わず思い出したからというわけでもないが、丁度WOWOWが恐怖映画特集で放映したので再鑑賞したくなった。“封切”時以来37年ぶりの再鑑賞であろうか? 凝っている割に大して面白くない近年の作品に比べてストレートな潔い作りに感銘さえする。
しかし、展開において、スーとその恋人(ウィリアム・カット)の心情若しくは真情が少々曖昧だったり、それまでキャリーを親身に見て来た女性教師(ベティー・バックリー)が豚の血を被ったキャリーを見て笑うのも理解しにくい(ヒロインの思い込みか?)、といった疑問・問題もある。
学校におけるいじめを扱った作品は既にあったと思うが、いじめを受けた生徒の堪忍袋の緒をこういう形で切らせた作品は勿論なかった。僕もいじめではないが、会社で不当な扱いをした相手に堪忍袋の緒を切って相手に吃驚されたことがある。平素反論さえしたことのない僕が怒声を発したからである。
キャリーのそれは僕の数百倍のパワーがあったようで、テレキネシスによるスペクタクルは当時圧巻であった。彼女の怒りが本当に観客に伝わる凄みがあり、爽快感さえあった。それだけに自らに死を招く女性教師の笑いが僕には解りにくく、少し引っかかった次第である。
1950年代のお姫様女優パイパー・ローリーが狂信的なキリスト教原理主義者の母親を演じているのもオールド・ファンには話題になった(?)が、娘の怒りを買ってキリストと同じところにガラス等が刺さって同じ格好で息絶えるのは、昨日の「嘆きのピエタ」と違って宗教狂信への皮肉っぽい。
今見ると、シシーを筆頭にこの映画でスターになった男女優が多く出演しているお楽しみもある。その中でもシシーと共に現在まで活躍しているのはジョン・トラヴォルタ。この一年後に「サタデー・ナイト・フィーバー」で人気者になり、一時低迷したが突然復活して吃驚させた。
わざわざ録画して観た後、ブルーレイで持っていたのに気づいた。ロートルの悲しさよ、全く。ロートルと言えば、封切という言葉ももう死語だよね。若い人、知らんでしょ?
1976年アメリカ映画 監督ブライアン・デ・パルマ
ネタバレあり
ブライアン・デ・パルマは「悪魔のシスター」(1973年)でヒッチコック的ということで少し注目され、続く「ファントム・オブ・パラダイス」(1975年)でオールド映画ファンの関心を引いた。が、一般的になったのはこの青春ホラー「キャリー」からで、本作が最初の映画化となるホラー小説家スティーヴン・キングも俄然注目され、その作品が次々と映画化されるきっかけとなった。
大人しくて見た目も悪い為同級生からいじめられている高校生キャリー(シシー・スペイシク)が、その中でも激しく憎悪している同級生クリス(ナンシー・アレン)の企みで、プロムの最後でのお決まりであるクイーンに選ばれてステージに上がった時に豚の血を浴びてしまう。生まれて初めて味わった幸福感を台無しにされて怒った彼女は潜在的に持っていたテレキネシス(念動力)を使って舞台となった体育館を水浸しにした上で電気を流して生徒や先生たちを皆殺しにしてしまう。先生からお目玉をくらって体育館から追い出されたスー(エイミー・アーヴィング)だけが難を逃れるが、キャリーが自宅で焼死した後も悪夢に悩まされる。
先日「クロニクル」の後半で思わず思い出したからというわけでもないが、丁度WOWOWが恐怖映画特集で放映したので再鑑賞したくなった。“封切”時以来37年ぶりの再鑑賞であろうか? 凝っている割に大して面白くない近年の作品に比べてストレートな潔い作りに感銘さえする。
しかし、展開において、スーとその恋人(ウィリアム・カット)の心情若しくは真情が少々曖昧だったり、それまでキャリーを親身に見て来た女性教師(ベティー・バックリー)が豚の血を被ったキャリーを見て笑うのも理解しにくい(ヒロインの思い込みか?)、といった疑問・問題もある。
学校におけるいじめを扱った作品は既にあったと思うが、いじめを受けた生徒の堪忍袋の緒をこういう形で切らせた作品は勿論なかった。僕もいじめではないが、会社で不当な扱いをした相手に堪忍袋の緒を切って相手に吃驚されたことがある。平素反論さえしたことのない僕が怒声を発したからである。
キャリーのそれは僕の数百倍のパワーがあったようで、テレキネシスによるスペクタクルは当時圧巻であった。彼女の怒りが本当に観客に伝わる凄みがあり、爽快感さえあった。それだけに自らに死を招く女性教師の笑いが僕には解りにくく、少し引っかかった次第である。
1950年代のお姫様女優パイパー・ローリーが狂信的なキリスト教原理主義者の母親を演じているのもオールド・ファンには話題になった(?)が、娘の怒りを買ってキリストと同じところにガラス等が刺さって同じ格好で息絶えるのは、昨日の「嘆きのピエタ」と違って宗教狂信への皮肉っぽい。
今見ると、シシーを筆頭にこの映画でスターになった男女優が多く出演しているお楽しみもある。その中でもシシーと共に現在まで活躍しているのはジョン・トラヴォルタ。この一年後に「サタデー・ナイト・フィーバー」で人気者になり、一時低迷したが突然復活して吃驚させた。
わざわざ録画して観た後、ブルーレイで持っていたのに気づいた。ロートルの悲しさよ、全く。ロートルと言えば、封切という言葉ももう死語だよね。若い人、知らんでしょ?
この記事へのコメント
完全なる主観ショットですから、そういう解釈が十分できると思ったわけです(というより、その為の主観ショットなのでしょう)が、余り自信がなかったもので。
nesskoさんもそう仰るなら間違いないでしょう^^
有難うございました。
『キャリー』結構好きです。
というか、僕はデ・パルマのファンでして笑
この作品も何回も観ました。
出演者の中では、『ビッグ・ウェンズデー』や『新・明日に向って撃て!』でも印象的だったウィリアム・カットがお気に入りです。
オカピーさんのおっしゃるとおり、この作品ではちょっと疑問の残る役どころでしたけれども。
僕もヒッチコックを模倣していた頃のデ・パルマは結構好きですが、余り繰り返しては観ていません。
この作品は、この間に、もう一度観ているかもしれませんが、それでも三回目です。
>ウィリアム・カット
『ビッグ・ウェンズデー』は世評も高い名作ですが、『新・明日に向って撃て!』もかなり良い出来で気に入った記憶があります。
久しぶりに本作で見て、当時のイメージよりハンサムに感じましたよ^^
最近ご無沙汰ですが、TVを中心に活躍されているようですね。
あの続きを作ってもよさそうなものですが誰も作りませんね~
いや、暫く経った1990年代に「キャリー2」というのがありましたよ。本当の続編だったか、よく憶えていませんが、多分その後のお話であったと思います。