映画評「グランド・イリュージョン」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年アメリカ=フランス合作映画 監督ルイ・ルテリエ
ネタバレあり
21世紀に入って大仕掛けのマジック即ちイリュージョンをテーマにした作品が目立ち始めたが、ここまでストレートに犯罪に利用したのは初めてではないか? しかも、近年のサスペンス映画には珍しいほど精神衛生的に健全と言える内容なのが大いに気に入った。
四人のマジシャン即ちジェシー・アイゼンバーグ、ウッディー・ハレルスン、デイヴ・フランコ、紅一点アイラ・フィッシャーが正体不明の人物に招聘され、その一年後四騎士(新約聖書の“黙示録の四騎士”の洒落のつもりだろうから、“ホースメン”では気分が出ない)として華やかなグループ・デビューを飾る。ラスヴェガスにいながらパリの銀行から大金を盗んで会場にばらまくのである。
マーク・ラファローを指揮官とするFBIが早速四人を逮捕するが、証拠が出ず無罪放免とせざるを得ず、その直後インタポールから派遣されたフランス人女性捜査官メラニー・ロマンが加わって、彼らを追跡し次の会場で尻尾を捕まえようとすると、今度は四騎士はスポンサーたる保険会社経営者マイケル・ケインの口座から会場にいる人々に払われるべき保険金を勝手に支払ってしまう。
手に負えないと思ったラファローは、マジシャンのトリックを暴くのを生業としているモーガン・フリーマンに協力を仰ぐことにするが、なかなか上手く行かない。
というお話で、最後にどんでん返しが待っている。どんなどんでん返しか詳細には触れないが、この手のどんでん返しはその人物が一人でいる場面を作ってはならない。裏の顔を持っている人物は一人でいる時は裏の顔を出すはずだからである。実際にはこの原則を守らない作品が多く、本作でもかなり際どいところがあるものの、極めて快調なテンポで進むので気にする暇がなく上手く誤魔化されてしまう(貶してはおりません)。つまり、映画全体がイリュージョンになっている仕掛けでござる。
犯罪と言っても四騎士は最後まで義賊的な扱いで、ひねりをつけた幕切れもそれに準じているので、後味が良い。イリュージョンを使った犯行の中味は蓋を開けてみれば案外昔からの泥棒映画と大差がないという印象もあるが、寧ろクラシックで楽しめる。中盤繰り広げられる派手なカー・チェースは、監督がカー・アクション映画「トランスポーター」が出世作のルイ・ルテリエだから処理にも手慣れた感があり、程よい長さに留めてもたれない。
このカナカナ邦題(原題は全く違う)を直訳すれば「大いなる幻影」ですがな。草葉の陰でジャン・ルノワールが苦笑いしているじゃろう。
2013年アメリカ=フランス合作映画 監督ルイ・ルテリエ
ネタバレあり
21世紀に入って大仕掛けのマジック即ちイリュージョンをテーマにした作品が目立ち始めたが、ここまでストレートに犯罪に利用したのは初めてではないか? しかも、近年のサスペンス映画には珍しいほど精神衛生的に健全と言える内容なのが大いに気に入った。
四人のマジシャン即ちジェシー・アイゼンバーグ、ウッディー・ハレルスン、デイヴ・フランコ、紅一点アイラ・フィッシャーが正体不明の人物に招聘され、その一年後四騎士(新約聖書の“黙示録の四騎士”の洒落のつもりだろうから、“ホースメン”では気分が出ない)として華やかなグループ・デビューを飾る。ラスヴェガスにいながらパリの銀行から大金を盗んで会場にばらまくのである。
マーク・ラファローを指揮官とするFBIが早速四人を逮捕するが、証拠が出ず無罪放免とせざるを得ず、その直後インタポールから派遣されたフランス人女性捜査官メラニー・ロマンが加わって、彼らを追跡し次の会場で尻尾を捕まえようとすると、今度は四騎士はスポンサーたる保険会社経営者マイケル・ケインの口座から会場にいる人々に払われるべき保険金を勝手に支払ってしまう。
手に負えないと思ったラファローは、マジシャンのトリックを暴くのを生業としているモーガン・フリーマンに協力を仰ぐことにするが、なかなか上手く行かない。
というお話で、最後にどんでん返しが待っている。どんなどんでん返しか詳細には触れないが、この手のどんでん返しはその人物が一人でいる場面を作ってはならない。裏の顔を持っている人物は一人でいる時は裏の顔を出すはずだからである。実際にはこの原則を守らない作品が多く、本作でもかなり際どいところがあるものの、極めて快調なテンポで進むので気にする暇がなく上手く誤魔化されてしまう(貶してはおりません)。つまり、映画全体がイリュージョンになっている仕掛けでござる。
犯罪と言っても四騎士は最後まで義賊的な扱いで、ひねりをつけた幕切れもそれに準じているので、後味が良い。イリュージョンを使った犯行の中味は蓋を開けてみれば案外昔からの泥棒映画と大差がないという印象もあるが、寧ろクラシックで楽しめる。中盤繰り広げられる派手なカー・チェースは、監督がカー・アクション映画「トランスポーター」が出世作のルイ・ルテリエだから処理にも手慣れた感があり、程よい長さに留めてもたれない。
このカナカナ邦題(原題は全く違う)を直訳すれば「大いなる幻影」ですがな。草葉の陰でジャン・ルノワールが苦笑いしているじゃろう。
この記事へのコメント
やっぱり、ルパンを産んだ国フランスが絡んでいるからですかね。
アメリカだけだと、仲間割れが起きたり、逮捕されたりが起きたりしそうですからね。
>ルパン
良いですね、ルパン。
日本のファンの中には「ルパン3世」みたいと仰る人もいましたね。
現在進行中のお話の中では誰も死んでいないのも好感を覚えました。
>仲間割れ
扱いにもよりますが、これが興醒めなんです^^;
オカピーさんがおっしゃってるように、映画全体がイリュージョンになっている仕掛け、それが最後にわかって、わぁーって拍手したくなるような、見終わって気持ちのいい映画でしたね。
個人的には、ジェシー・アイゼンバーグは、観ておかないといけないと思っている俳優です。
>ジェシー・アイゼンバーグは、観ておかないといけないと思っている俳優です。
ネットに関連する「ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち」は、さほどの出来栄えではないと思いましたが、彼が主人公を演じているおかげで、結構楽しめる映画になっていると感じます。
今すぐお金を出してみる必要はありませんが、観られるチャンスがありましたら、是非どうぞ。