映画評「ブルーノのしあわせガイド」
☆☆★(5点/10点満点中)
2011年イタリア=フランス合作映画 監督フランチェスコ・ブルーニ
ネタバレあり
ゴースト・ライターと家庭教師をして生計を立てている元高校教師ブルーノ(ファブリツィオ・ベンティヴォリオ)が、今教えている子供の一人15歳のルカ(フィリッポ・シッキターノ)の母親(アリアンナ・スコンメンニャ)から自分がアフリカのマリへ行っている間息子と同居して教えてくれと頼まれる。「そんなバカな頼みはあるまい」と思っていると「ルカはあなたの子供だ」と告げられる。
さすがに拒むことが出来ず、父親の立場から前より少し厳しく教えようとすると、そうとは知らぬルカから反発を食らう。不良仲間と付き合いが深まるとルカは暗黒街の若いボス(ヴィニーチョ・マルキオーニ)の家からお金と麻薬をちょろまかし、正体を明かした父親共々一味につかまってしまうが、そのボスがブルーノの昔よくしてやった教え子だったことから事なきを得る。
独身貴族が知らないうちに設けた自分の子供を突然押し付けられて大弱り、という誠にありふれた設定のお話ながら、家庭教師やゴースト・ライターという職業を展開に絡めてそれなりに楽しく観られる。ルカが苦手な古典にブルーノが詳しく、父と子の関係に絡めて古典を解説する辺りなかなか上手い。
ボスがちょっとしたインテリで、少年が盗みに入る時豪邸で観ているのがフランソワ・トリュフォーの出世作「大人は判ってくれない」。親に恵まれず勉強をすることもままならず非行に走っていく少年を描く、かの秀作の内容から本作のテーマを逆説的に浮かび上がらせる趣向である。と言っても、「大人は判ってくれない」を観ていない人にはそんな効果は期待できないわけだが。
ボスの反面教師的存在もあって教養の大事さに気付いたルカはきちんと勉強するようになる。学問は興味さえあればある程度までなら誰だって身につく。中学の時休み時間に読書をしていた僕はガリ勉と思われていたが、家に帰れば勉強などしたことがなかった。興味があったからその場で全部憶えてしまったのだ。興味は好成績の母なのである。そうでない人はルカのように親や教師に恵まれる必要がある。
勿論、お話は息子についてだけではない。言わば愛すべき不良中年だった父親も息子との関係から自らの見直すべきところは見直して人生を再設計していく。
後味は良いが、イタリアらしい楽観的すぎる展開がお気に召すかどうかで評価が分かれるかもしれない。
進学校の高校では中学時の勉強法が全く通用せず、一年生の一学期の中間・期末試験で痛い目に遭った。進学校なら大概そうだろうが、教科書からストレートな形で出題されるケースが極めて少ないのだ。
2011年イタリア=フランス合作映画 監督フランチェスコ・ブルーニ
ネタバレあり
ゴースト・ライターと家庭教師をして生計を立てている元高校教師ブルーノ(ファブリツィオ・ベンティヴォリオ)が、今教えている子供の一人15歳のルカ(フィリッポ・シッキターノ)の母親(アリアンナ・スコンメンニャ)から自分がアフリカのマリへ行っている間息子と同居して教えてくれと頼まれる。「そんなバカな頼みはあるまい」と思っていると「ルカはあなたの子供だ」と告げられる。
さすがに拒むことが出来ず、父親の立場から前より少し厳しく教えようとすると、そうとは知らぬルカから反発を食らう。不良仲間と付き合いが深まるとルカは暗黒街の若いボス(ヴィニーチョ・マルキオーニ)の家からお金と麻薬をちょろまかし、正体を明かした父親共々一味につかまってしまうが、そのボスがブルーノの昔よくしてやった教え子だったことから事なきを得る。
独身貴族が知らないうちに設けた自分の子供を突然押し付けられて大弱り、という誠にありふれた設定のお話ながら、家庭教師やゴースト・ライターという職業を展開に絡めてそれなりに楽しく観られる。ルカが苦手な古典にブルーノが詳しく、父と子の関係に絡めて古典を解説する辺りなかなか上手い。
ボスがちょっとしたインテリで、少年が盗みに入る時豪邸で観ているのがフランソワ・トリュフォーの出世作「大人は判ってくれない」。親に恵まれず勉強をすることもままならず非行に走っていく少年を描く、かの秀作の内容から本作のテーマを逆説的に浮かび上がらせる趣向である。と言っても、「大人は判ってくれない」を観ていない人にはそんな効果は期待できないわけだが。
ボスの反面教師的存在もあって教養の大事さに気付いたルカはきちんと勉強するようになる。学問は興味さえあればある程度までなら誰だって身につく。中学の時休み時間に読書をしていた僕はガリ勉と思われていたが、家に帰れば勉強などしたことがなかった。興味があったからその場で全部憶えてしまったのだ。興味は好成績の母なのである。そうでない人はルカのように親や教師に恵まれる必要がある。
勿論、お話は息子についてだけではない。言わば愛すべき不良中年だった父親も息子との関係から自らの見直すべきところは見直して人生を再設計していく。
後味は良いが、イタリアらしい楽観的すぎる展開がお気に召すかどうかで評価が分かれるかもしれない。
進学校の高校では中学時の勉強法が全く通用せず、一年生の一学期の中間・期末試験で痛い目に遭った。進学校なら大概そうだろうが、教科書からストレートな形で出題されるケースが極めて少ないのだ。
この記事へのコメント
バカばかり増やすのは困りますので、大学を減らすべきでしょうねえ。
文科省は、(国公立大の)哲学や文学を習う学部を無くそうと考えているとか。要は職業に直結せず、経済活動に役に立ちそうもないということらしい。
しかし、寂しい人たちですなあ。現政府は経済を優先しすぎて、そんなことをすると数十年後にしっぺ返しがきますよ。今の政治家は自分の死んだ後のことは知ったことではないという人ばかりですけどね。