映画評「オン・ザ・ロード」

☆☆★(5点/10点満点中)
2012年フランス=ブラジル合作映画 監督ウォルター・サレス
ネタバレあり

先年池澤夏樹氏が個人編集で出した【世界文学全集】第一回配本が本作の原作であるジャック・ケルアックの自伝的小説「オン・ザ・ロード」(最初の訳では「路上」の邦題)であった。タイトルはともかく、ビート・ジェネレーションに興味なく、戦後の西洋文学にも今のところを手を付ける余裕がなく放置しているので、内容については全く知らない。

第二次大戦後のニューヨーク、父親の死を引きずって鬱屈する日々を送る若い作家サル・パラダイス(サム・ライリー)が、西部出身の奔放な不良青年ディーン・モリアーティ(ギャレット・ヘドランド)とその若い妻メリールー(クリステン・スチュワート)と知り合い、やがて彼が戻ったその故郷のデンヴァーを目指してヒッチハイクの旅に出る。いざ再会してみると彼には別の妻(キルステン・ダンスト)や娘が出来ている。
 ディーンが前妻メリールーを伴って放浪の旅に出るとサルも同行、彼らの麻薬耽溺や奔放なセックスといった刹那的な行動を観るうちに作家としての立場に影響を受け、やがてそんな生き方と別れを告げる衰弱著しいディーンと再会した時「オン・ザ・ロード」の執筆モチヴェーションが生まれる。

作者がカナダ出身ながら戦後アメリカ文学を代表する作品をブラジルの監督ウォルター・サレスが映画化したフランスとの合作映画。しかし、製作にはご当地アメリカのフランシス・フォード・コッポラが絡んで一応の面目を施している(コッポラ念願の映画化らしい)。
 サレスは初めて観た「セントラル・ステーション」で大いに感心し、ゲバラの青春時代を描くロード・ムービー「モーターサイクル・ダイアリーズ」も悪くなかった。本作は後者と共通点が多いが、かの作品ほど楽しめない、いや、親しめないと言うべきか。

そもそもビート・ジェネレーションなるものの概念が解っていないとピンと来ない作品であるし、後のヒッピーとほぼ同じ志向を持っているらしい彼らの人生観にある程度共感が持てないと、作品としてきちんと作られていると評価できても馴染めない、ということになるだろう。かく言う僕がその口である。

自由で奔放な生き方をする連中だから人物関係が複雑にしてごちゃごちゃ、映画はその辺をそれなりにうまく整理しているように見えるが結局面倒臭い。原作は長生きできたら読んでみよう。

ヘンリー・ミラーの弟分といったところかな。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年10月19日 17:31
ピートニックという時代背景が理解できないとあまり面白くないかもしれませんね。
わかっていてもおもしろくないとも・・・・
ねこのひげは、ピートニックファションというのをオフクロに着せられた覚えがあります。
紫色のTシャツでありました。
友達にからかわれましたね。
オカピー
2014年10月19日 18:58
ねこのひげさん、こんにちは。

本文でも書いたように人物関係が面倒くさいだけで、面白味は薄かったですね。

>ピートニックファション
そんなものもありましたか^^

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  • オン・ザ・ロード ★★★

    Excerpt: 1950年代のビート・ジェネレーションを代表する作家ジャック・ケルアックが、自身や友人たちをモデルに執筆した自伝的小説「路上」(57)を、「セントラル・ステーション」「モーターサイクル・ダイヤリーズ」.. Weblog: パピとママ映画のblog racked: 2014-10-18 21:17