映画評「スーサイド・ショップ」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2012年フランス=ベルギー=カナダ合作映画 監督パトリス・ルコント
ネタバレあり
旧作「仕立て屋の恋」を再鑑賞したばかりのパトリス・ルコントが初挑戦したミュージカル仕立てのアニメ。という以前に彼の新作を実に久しぶりなので、嬉しいであります。
自殺用の用品を専門に扱っている店を経営する夫婦に三人目の子供、次男のアランが生まれる。ネガティヴな思考の下、死への願望が強い一家にあってアランはいつも笑っている子供で、自分を醜いと思っている姉に洋服をプレゼントを送ったところ予想以上の効果が現れ、それを身にまとった彼女を見た自殺願望の青年の死ぬ気を失わせ、二人は恋人になる。
そんな折、人を死に追い込む稼業に少々鬱屈した父親がノイローゼになり伏せていたベッドから起き上がると、幸せそうな家族が目に入る。これが面白くない父親は息子をビルの屋上に追い詰める。アランは父を笑わせようとビルから飛び降りる。これで父が喜ぶと思ったのではない、ビルの下に置かれたトランポリンを使って父親の真似をすることで父親を腹の底から笑わせるのである。
かくして陽気になった一家は娘の恋人が得意とするクレープを出す店に転業する。
クレープ店になってもメニューのネイミングにその名残があるのが可笑しい。何と言っても眼目は自殺用品専門店という設定で、ルコントらしくシニカル、と言いたいところだが、それを超えてブラックでありましょう。最後に死に急いだ人々は勿体ないことをしたという結論になる人生賛歌となり、ミュージカル仕立てにした効果がこの幕切れで発揮される。急展開であるけれど、アニメでありミュージカルであるならそう難しく展開させる必要もあるまい。
ただ、父親の性格がよく解らない。人々を死に追い込むのに疲れて寝込んだ彼が家族や人々を幸福にする息子を憎んで死に追い込もうとする心の闇か解りにくいのである。
翻って画面。外国アニメ特にフランス製は人物の造形がデフォルメされすぎていて馴染みにくいのが難点で、この作品でも見栄えが良いとは言いにくいが、それでもどこか愛嬌があるのが良い。
父親の名前がミシマなのは、自殺道具に切腹用の刀も出て来ることだし、フランスでも有名そうな三島由紀夫から来ているのだろう。娘のマリリンはマリリン・モンロー?
三島氏も本来の天才文学者としてではなく、変なイメージで名前を残したねえ。
2012年フランス=ベルギー=カナダ合作映画 監督パトリス・ルコント
ネタバレあり
旧作「仕立て屋の恋」を再鑑賞したばかりのパトリス・ルコントが初挑戦したミュージカル仕立てのアニメ。という以前に彼の新作を実に久しぶりなので、嬉しいであります。
自殺用の用品を専門に扱っている店を経営する夫婦に三人目の子供、次男のアランが生まれる。ネガティヴな思考の下、死への願望が強い一家にあってアランはいつも笑っている子供で、自分を醜いと思っている姉に洋服をプレゼントを送ったところ予想以上の効果が現れ、それを身にまとった彼女を見た自殺願望の青年の死ぬ気を失わせ、二人は恋人になる。
そんな折、人を死に追い込む稼業に少々鬱屈した父親がノイローゼになり伏せていたベッドから起き上がると、幸せそうな家族が目に入る。これが面白くない父親は息子をビルの屋上に追い詰める。アランは父を笑わせようとビルから飛び降りる。これで父が喜ぶと思ったのではない、ビルの下に置かれたトランポリンを使って父親の真似をすることで父親を腹の底から笑わせるのである。
かくして陽気になった一家は娘の恋人が得意とするクレープを出す店に転業する。
クレープ店になってもメニューのネイミングにその名残があるのが可笑しい。何と言っても眼目は自殺用品専門店という設定で、ルコントらしくシニカル、と言いたいところだが、それを超えてブラックでありましょう。最後に死に急いだ人々は勿体ないことをしたという結論になる人生賛歌となり、ミュージカル仕立てにした効果がこの幕切れで発揮される。急展開であるけれど、アニメでありミュージカルであるならそう難しく展開させる必要もあるまい。
ただ、父親の性格がよく解らない。人々を死に追い込むのに疲れて寝込んだ彼が家族や人々を幸福にする息子を憎んで死に追い込もうとする心の闇か解りにくいのである。
翻って画面。外国アニメ特にフランス製は人物の造形がデフォルメされすぎていて馴染みにくいのが難点で、この作品でも見栄えが良いとは言いにくいが、それでもどこか愛嬌があるのが良い。
父親の名前がミシマなのは、自殺道具に切腹用の刀も出て来ることだし、フランスでも有名そうな三島由紀夫から来ているのだろう。娘のマリリンはマリリン・モンロー?
三島氏も本来の天才文学者としてではなく、変なイメージで名前を残したねえ。
この記事へのコメント
アニメだから許されるかもしれません。
三島さんは、身長が低かったことがコンプレックスになっていたようですね。
衝撃的ではありましたが、もったいないことです。
生きていれば、ノーベル文学賞を獲れたかもしれないですがね。
毎年候補に挙がるのが恒例行事のようになっている方もいらっしゃいますが、心中はいかに?
>自殺の道具を売る店
余りにシュールだから、実写では厳しいですね。
自殺自体は罪に問われるのに、道具を売るのは罪に問われない、などという訳のわからなさもあります。
>三島さん
病弱で痩せていたこともコンプレックスで、ボディビルで鍛えたのはその為だそうです。
ノーベル賞は取れたかもしれません。彼の死のすぐ後に川端康成氏が取っていますが、すぐに自殺(?)をしてしまいます。川端氏は三島氏受賞の邪魔をしたとも言われていますし、呪われていたのでしょうか。
>毎年候補に挙がる
精神不調に読んで余計に鬱屈した「海辺のカフカ」しか読んでいないので、その実力がよく解らないのですが、芥川賞と違って実績の余りない作家という条件はないのですからいずれ獲れるのではないでしょうかね。
ご本人は達観しているでしょう。
いつぞや、プロフェッサーの歌唱に
ネイティヴさんも感服なさったという
たしか「ホテル・カルフォルニア」♪。
うちの教会の牧師さまの言うことにゃ
「あの曲作った人は悪魔崇拝者なのですよ」。
知らなかった私はびっくりしながらも
「いいえ、あれは名曲です。」と小声で反論。(^^)
メンバーが危ない団体に所属していたとか?
ご存知でしたらお教えくださいませ。
で、今はお食事のほうはふつうに
摂れるようになられましたか?
本読みも映画鑑賞も体力あればこそ。
お体、お大事に。
>「ホテル・カルフォルニア」♪
いや、殆ど自画自賛みたいなものでしたが^^;
グレン・フライとドン・ヘンリーとドン・フェルダーの共作ですけど、特に悪魔崇拝者とは聞いたことがないです。
時間が出来たら詳しく調べてみますね。
彼らの曲に「魔女のささやき」Witchy Womanという曲はありますがねえ^^;
>お食事
今日久しぶりに肉系を摂り、その時はおいしく食べられました。
その後に消化器の逆襲を食らわないと良いのですが。
>お大事に。
有難うございます。<(_ _)>