映画評「素敵な相棒~フランクじいさんとロボットヘルパー」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2012年アメリカ映画 監督ジェイル・シュライヤー
ネタバレあり

近未来が舞台だが、SFサスペンス/アクションではなくコミカルなテイストのドラマである。

軽い認知症らしい元泥棒の老人フランク・ランジェラは独り暮らしで、娘リヴ・タイラーは海外でボランティア、息子ジェームズ・マースデンも片道5時間も車を飛ばさないと到着できないところに住んでいる。
 息子は連日通うのは不可能につき、介護ロボットをプレゼントする。妹に言わせれば「兄が楽をしたいだけ」の道具だが、ランジェラはこのロボットと嫌々世話されるうちに“趣味”を通じて交流が深まっていく。
 この“趣味”というのが彼の生まれついての生業とでも言うべき窃盗で、ロボットと協力して司書スーザン・サランドンが感じよくて通い続けてきた図書館から「ドン・キホーテ」の稀覯本を、その図書館に電子化アイデアを持ち込んだ嫌味なコンサルタントの屋敷から宝石を拝借するのだから愉快。

宝石泥棒の容疑者となった老人は巧みに本体を隠すが、証拠となるロボットのメモリー消去に逡巡した挙句に結局消去用のスイッチを押す。

このロボットとの関係がほのぼのとして楽しいのが高得点の最大要因だが、ちょっとしたミステリー趣向も貢献度が高い。司書のスーザンが元妻と判明するのもその一つで、妻であったという記憶を失っても愛する女性に「稀覯本をプレゼントしたかった」などと告白させる辺りはなかなか洒落ている。
 一番の謎は父親の「息子は父親を超えた」という言葉である。どこにもそれらしい直接描写はないし、その理由も明らかにされない。しかし、ロボットとの交流により認識能力の上がった老人はロボットの秘密に気付いたのだ、息子がこのロボットに秘密を仕込んだことを。ここに気付けばただほのぼのとしているだけではなく、実に面白く洒落た佳作と思われるに違いない。

最近の僕は比熱が低いので、好みのテイストの作品に遭遇すると☆が実力以上に多くなりがち。悪しからず。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年10月23日 17:32
ねこのひげも、いまロビというロボットを作っておりますが、四苦八苦しております。
完成するのは相当先になりそうです。
ソフトバンクの完成したロボットの方が安上がりだったかな?とちょっと後悔しております。
デイズニーもアニメで『ベイマックス』というロボット物を作っておりますが、ハリウッドは、いまロボット物が流行りなんですかね?
2014年10月23日 17:48
今月 腕を骨折してしまい…
現在、家事全般は勿論
自分の身の回りのことも
思うようにできない毎日ゆえ
私も是非1台介護ロボットが
欲しいなぁ… と
指をくわえて本作を観ておりました。
オカピー
2014年10月23日 21:04
ねこのひげさん、こんにちは。

>ロビ
あら、やはり多趣味ですね^^
僕はプラモデルも興味がなくて、アメ車のポンティアックの模型を一台作っただけですね。兄貴は大好きなのに兄弟なのに全然違うのが面白いです。
僕は子供の頃から本の虫でした。
映画が人並み程度なら今読みたいと思っている本をもう読み終わっていたでしょう。或いは1990年代に映画鑑賞を半減してもよかったかな。後悔先に立たず。

>『ベイマックス』
ロボットも色々ですが、「トランスフォーマー」の影響ですかね。
オカピー
2014年10月23日 21:15
小枝さん、お久しぶりです。

僕もそちらにたまにお伺いしておりますが、足跡を残さず、すみません。

>腕を骨折
それは難儀ですねTT
この映画に出て来るようなものは相当先でしょうが、今のロボットは大分精度が高くなっていますから、それほど遠くない未来に実現するかもですね。

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  • 『素敵な相棒 ~フランクじいさんとロボットヘルパー~ 』

    Excerpt: □作品オフィシャルサイト 「素敵な相棒 ~フランクじいさんとロボットヘルパー~」□監督 ジェイク・シュライアー □脚本 クリストファー・フォード□キャスト フランク・ランジェラ、ジェームズ・マース.. Weblog: 京の昼寝~♪ racked: 2014-10-23 12:08
  • 素敵な相棒 ★★★★

    Excerpt: 元泥棒の老人と介護用ロボットが織りなす交流を描いたヒューマンドラマ。元宝石泥棒で70歳のフランクは物忘れが激しくなり、心配した息子たちはそんな父親に超高性能な介護型ロボットをプレゼントする。ロボットは.. Weblog: パピとママ映画のblog racked: 2014-10-23 16:41