映画評「わたしはロランス」
☆☆★(5点/10点満点中)
2012年カナダ=フランス合作映画 監督グザヴィエ・ドラン
ネタバレあり
昔から英語圏のカナダ映画は殆どアメリカ映画であるし、仏語圏のカナダ映画は殆どフランス映画である。かつて英仏で争った歴史を感じさせる面白い国だ。ましてこの映画はフランスから二枚目メルヴィル・プポーやベテランのナタリー・バイを招聘してフランスとの合作として製作されているので益々フランス映画っぽい。
そのプポーは撮影関係者の女性スザンヌ・クレマンと同棲している国語教師で、にも拘わらず性同一性障害に苦しんでいる。こうした人々が異性服を着ると女装趣味とか男装趣味とか言われがちだが、単なる女装・男装趣味とは勿論違うし、同性愛者とも違う。よく解らないが、俗におかま・おなべと言われる人たちは殆どこういう障害者ということになるのだろう。
彼女に女装したい心中を告白した後遂に女装をして学校に出かけていくが、学校内の反応は意外と大人しい。初めて見た生徒からも純粋に国語に関する質問が“いの一番”に出て来る辺り、グザヴィエ・ドランという注目の若手監督がミーハー的な興味で作品を作っていないことが理解できる。
かくして、その為に何年も付き合ってきた二人の間がぎくしゃくし始める。しかし、終盤で彼は、二人の関係はそのことに関係なく遠からず破綻する運命であった、と分析する。これを信じるならば、二人の愛情関係は、男女の性愛というレベルを超えた、言わば信頼関係に似た人間的な愛だったと逆説的に解釈することができる。見た目や立場は関係なかったと言っているのも同然だから。
構成としては文学者特に詩人として成功したプポーがジャーナリストとのインタビューで語る形式で進行しているが、回想形式とは言い難く、基本的に入り口としてだけの役目を果たしているのに過ぎない。
いずれにしても、僕は、互いの人間的葛藤が内面・外面双方から複雑に絡み合う1980年代以降のフランス式スタイルは通常の男女関係においてでさえ苦手で、精魂込めて作り上げた作者には申し訳ないが、面倒臭い気持ちが強くて☆はいつも少なめになってしまう。いわんや、変則的男女関係においてをや、でござる。
故に、僕と趣味の近い方以外は、当方の星は参考にせず、お話に興味が持てそうであればご覧ください。わが映画鑑賞歴の中では、「ボーイズ・ドント・クライ」(1999年)以来の性同一性障害を重要要素として描いた作品となると思う。
原題は"Laurence Anyways"。英語の常識としては"Laurence Anyway"だろうが、最後の"s"はなんじゃろう?
2012年カナダ=フランス合作映画 監督グザヴィエ・ドラン
ネタバレあり
昔から英語圏のカナダ映画は殆どアメリカ映画であるし、仏語圏のカナダ映画は殆どフランス映画である。かつて英仏で争った歴史を感じさせる面白い国だ。ましてこの映画はフランスから二枚目メルヴィル・プポーやベテランのナタリー・バイを招聘してフランスとの合作として製作されているので益々フランス映画っぽい。
そのプポーは撮影関係者の女性スザンヌ・クレマンと同棲している国語教師で、にも拘わらず性同一性障害に苦しんでいる。こうした人々が異性服を着ると女装趣味とか男装趣味とか言われがちだが、単なる女装・男装趣味とは勿論違うし、同性愛者とも違う。よく解らないが、俗におかま・おなべと言われる人たちは殆どこういう障害者ということになるのだろう。
彼女に女装したい心中を告白した後遂に女装をして学校に出かけていくが、学校内の反応は意外と大人しい。初めて見た生徒からも純粋に国語に関する質問が“いの一番”に出て来る辺り、グザヴィエ・ドランという注目の若手監督がミーハー的な興味で作品を作っていないことが理解できる。
かくして、その為に何年も付き合ってきた二人の間がぎくしゃくし始める。しかし、終盤で彼は、二人の関係はそのことに関係なく遠からず破綻する運命であった、と分析する。これを信じるならば、二人の愛情関係は、男女の性愛というレベルを超えた、言わば信頼関係に似た人間的な愛だったと逆説的に解釈することができる。見た目や立場は関係なかったと言っているのも同然だから。
構成としては文学者特に詩人として成功したプポーがジャーナリストとのインタビューで語る形式で進行しているが、回想形式とは言い難く、基本的に入り口としてだけの役目を果たしているのに過ぎない。
いずれにしても、僕は、互いの人間的葛藤が内面・外面双方から複雑に絡み合う1980年代以降のフランス式スタイルは通常の男女関係においてでさえ苦手で、精魂込めて作り上げた作者には申し訳ないが、面倒臭い気持ちが強くて☆はいつも少なめになってしまう。いわんや、変則的男女関係においてをや、でござる。
故に、僕と趣味の近い方以外は、当方の星は参考にせず、お話に興味が持てそうであればご覧ください。わが映画鑑賞歴の中では、「ボーイズ・ドント・クライ」(1999年)以来の性同一性障害を重要要素として描いた作品となると思う。
原題は"Laurence Anyways"。英語の常識としては"Laurence Anyway"だろうが、最後の"s"はなんじゃろう?
この記事へのコメント
差別する気は毛頭ありませんが・・・・
どうもダメですな。
sがついていた海外の小説家が最新作ではそのsが消えておりました。
無意味につける歌手もおりますからね。
>差別する気は毛頭・・・
右に同じですね。
僕も気持ち悪くてダメです。