映画評「シュガー・ラッシュ」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年アメリカ映画 監督リッチ・ムーア
ネタバレあり
僕はコンピューター・ゲームは一切しない人間である。大学時代に始まったインベーダーゲームもやったことがない。やったことがあるのはパソコンに内蔵されているトランプくらいだ。
本作は実在するゲームのキャラクターたちが多数登場する仮想現実もののヴァリエーションであるが、仮想現実と実際の現実を巧みに結び付けて大いに感心させられた「“アイデンティティ”」(2003年)に迫る出来栄えと言うべし。
“フィックス・イット・フェリックス”というゲームの中で壊し屋役として30年間も嫌われていることにうんざりしているラルフ(声:ジョン・C・ライリー)という悪役がヒーローが貰えるメダルを獲得をするのに躍起となり、自分が属するゲームの外に出る。
ゲームのキャラクターが外に出るという発想がまず新しい。
しかし、彼は“ヒーローズ・デューティーズ”というゲームの中でヘマをやらかしてバグ(ご存知のように元来は虫の意味)を孵らせてしまう。ラルフの壊したものを修復する役目のフェリックス(声:ジャック・マクブレイ)が彼を探すうち“ヒーローズ・デューティーズ”の女性軍曹カルホーン(声:ジェーン・リンチ)と知り合い、行動を共にすることになる。
一方、ラルフは“シュガー・ラッシュ”というお菓子の国を舞台にしたゲームの世界に移動し、何としてもレースに参加したい少女ヴァネロペ(声・サラ・シルヴァーマン)の為にお菓子でレーシングカーを作ることになる。
壊し屋のラルフが物を作るというアイデアは彼の善性の象徴となっていて秀逸である。
この後色々ゴタゴタがあり、バグに冒されたキャラクターと思われたヴァネロペの正体が判明して劇的な展開を見ることになるが、ストーリーの展開・収束が巧みで退屈させない。
それ以上に僕が感心したのは「“アイデンティティー”」とまでは行かないものの現実の世界と関連付けることにより仮想現実上の展開が有機的な意味を持ち、感情移入を生むことに成功にしていることである。所謂“仮想現実もの”の大半がその点に失敗にしていることを考えれば、見た目の面白さ以上に評価したいものがあると思う次第。
細かいところでは、作られた時代によってゲームのキャラクターでは解像度や動きが違うというマニアックな点も注目される。
1980年代以降のディズニーご本家の作品を余り評価してこなかった僕としては久しぶりの“買い”であります。
2012年アメリカ映画 監督リッチ・ムーア
ネタバレあり
僕はコンピューター・ゲームは一切しない人間である。大学時代に始まったインベーダーゲームもやったことがない。やったことがあるのはパソコンに内蔵されているトランプくらいだ。
本作は実在するゲームのキャラクターたちが多数登場する仮想現実もののヴァリエーションであるが、仮想現実と実際の現実を巧みに結び付けて大いに感心させられた「“アイデンティティ”」(2003年)に迫る出来栄えと言うべし。
“フィックス・イット・フェリックス”というゲームの中で壊し屋役として30年間も嫌われていることにうんざりしているラルフ(声:ジョン・C・ライリー)という悪役がヒーローが貰えるメダルを獲得をするのに躍起となり、自分が属するゲームの外に出る。
ゲームのキャラクターが外に出るという発想がまず新しい。
しかし、彼は“ヒーローズ・デューティーズ”というゲームの中でヘマをやらかしてバグ(ご存知のように元来は虫の意味)を孵らせてしまう。ラルフの壊したものを修復する役目のフェリックス(声:ジャック・マクブレイ)が彼を探すうち“ヒーローズ・デューティーズ”の女性軍曹カルホーン(声:ジェーン・リンチ)と知り合い、行動を共にすることになる。
一方、ラルフは“シュガー・ラッシュ”というお菓子の国を舞台にしたゲームの世界に移動し、何としてもレースに参加したい少女ヴァネロペ(声・サラ・シルヴァーマン)の為にお菓子でレーシングカーを作ることになる。
壊し屋のラルフが物を作るというアイデアは彼の善性の象徴となっていて秀逸である。
この後色々ゴタゴタがあり、バグに冒されたキャラクターと思われたヴァネロペの正体が判明して劇的な展開を見ることになるが、ストーリーの展開・収束が巧みで退屈させない。
それ以上に僕が感心したのは「“アイデンティティー”」とまでは行かないものの現実の世界と関連付けることにより仮想現実上の展開が有機的な意味を持ち、感情移入を生むことに成功にしていることである。所謂“仮想現実もの”の大半がその点に失敗にしていることを考えれば、見た目の面白さ以上に評価したいものがあると思う次第。
細かいところでは、作られた時代によってゲームのキャラクターでは解像度や動きが違うというマニアックな点も注目される。
1980年代以降のディズニーご本家の作品を余り評価してこなかった僕としては久しぶりの“買い”であります。
この記事へのコメント
発想がいいですね。
マニヤックに受けますね。
>パターン
ありそうですね。小説や映画でもそういうものですから。
仮想現実ものは好きではないですが、上手く作れば面白くなります。「“アイデンティティー”」は、その点、凄かった。