映画評「ウィ・アンド・アイ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2012年アメリカ映画 監督ミシェル・ゴンドリー
ネタバレあり

最新作「ムード・インディゴ うたかたの日々」にがっくり来たミシェル・ゴンドリーの一つ前の作品。驚いたことに、異色ファンタジーの権化ゴンドリーが監督したとも思えぬ、素人を起用した一種のセミ・ドキュメンタリーである。案外サムライですな。

お話は、路線バスに乗り合わせた高校生たちが他の客など無視するような傍若無人の大騒ぎを繰り広げ、一人去り二人去るうちに、マイケル君(マイケル・ブロディー)と彼が好きなテレサ嬢(テレサ・リン)が残り、多少のすれ違いの後先にバスを降りた彼女を追って彼が追いかけるように降りて来る。

と書けば二人のロマンティックな気分を描いた作品のようであるが、テーマは皆と居る時とそうでない時の少年たちの異なる様相である。皆がいる時が題名の"We"であり、日本語で言えば“建前”であり空気を読まなければならない時の彼らである。そうでない時が"I"であり、“本音”、素の自分を出せる時の彼らである。

勿論大昔でもそういうことが多かれ少なかれあったはずだが、今は“空気を読む”が流行語になるようなせちがらい世の中で、我々初老も無関係とは言わないまでも、現在の若者ほど大変ではない。つまり、この作品は世界共通ともいえる本音と建前の使い分けがきっちりと必要な時代を切り取った作品と言うことが出来そうだ。

作劇的には、夕方で終わるのでどうも彼らは下校中だったようであるが、その辺り時間管理が明確になっていない為、観客を相当混乱させる恐れがある。日本の諺に言う、「秋の日は釣瓶落とし」といった感覚なのだろうか。

また、残念ながら、全面スケッチ的描写なので、一般的な意味で余り面白いと言いにくい。

白夜の北欧で作ったらずっと明るいままじゃね。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年11月30日 09:26
色々、試行錯誤しているということですかね。
オカピー
2014年11月30日 17:41
ねこのひげさん、こんにちは。

そういう風な考え方もできますね^^

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