映画評「ザ・ハリウッド~セックスと野望~」

☆★(3点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督ポール・シュレイダー
ネタバレあり

「タクシー・ドライバー」(1975年)や「レイジング・ブル」(1980年)といった作品で優れた脚本を少なからず書いているポール・シュレイダーは、監督をするととんといけない。初めて観た監督作は「ハードコアの夜」(1979年)といってポルノ業界を描いたサスペンスだった。
 で、今回は、脚本こそブレット・イーストン・エリス(「アメリカン・サイコ」など)に任せたとは言え、やはりセックス絡みのサスペンスがお好きらしいと確認できるのが取り柄であるくらい。

女優志願リンジー・ローハンがやはり男優志願のノーラン・ジェラード・ファンクを現在の恋人である映画プロデューサー、ジェームズ・ディーンに紹介したのが運の尽き、彼が以前の恋人であった為に、かの青春スターと同姓同名但し綴りが違うディーン氏がサイコぶりを発揮し、リンジーだけでなく関係者をつけ回し、彼女との関係を割こうとしたヨガの女性教師テニール・ヒューストンを殺し、「彼と縁を切らないなら殺す」と言って彼女を脅迫する。

凡庸千万なお話とは言え、この程度のつまらなさなら取り立てて目くじらを立てることもない。しかるに、そもそも話術が拙くて展開に要領を得ないこともさることながら、彼の脅迫の後に続く1年後のラスト・シークエンスで首を傾げることになる。以下の如し。
 リンジーが新しく出来た恋人らしき人物を横に侍らせ別のカップルと話をしている。別のカップルの女性がトイレに立って電話をかける。その相手はディーン氏ならでファンク君。
 狙いは一応解る。前のサイコ男と切れても別の男がサイコになるよという落ちで、ホラー的というよりどこか教訓的だ。
 問題は、あれほどのサイコぶりを示したディーン氏が何故直後(会話の中で一年前殺人があったと言っているから直後と理解できる)に彼女を手放したかという説明を抜きにして、この落ちがうまく機能するべくもないということである。サイコが好きらしいエリスとしては落ちのアイデアが先行して肝心の詰めが抜け落ちてしまったらしい。

ハリウッドにまでザを付けるとは。

この記事へのコメント

2014年11月27日 16:50
>ハードコアの夜
テレビかレンタルヴィデオで見てます。ジョージ・C・スコット主演でしたね。話がもっとおもしろくなるかと思って最後まで観ましたが肩透かし、犯罪ものとしても思春期の子供の問題としても中途半端で何がいいたいかわからず、結局のぞき部屋みたいな風俗店の様子を見せたかったのかと疑いました。ショッキング・アジアみたいな、いかがわしいものを見せるのが売りだったのかと。
この映画も、観てないですけれども、記事を読むと似たような雰囲気をかんじます。
オカピー
2014年11月27日 19:59
nesskoさん、こんにちは。

>のぞき部屋みたいな風俗店の様子を見せたかったのか
僕は多分深夜のTV映画番組で観ましたが、「ハードコアの夜」は本当にそんなレベルの作品でした。
本作と併せて観ると、シュレイダー氏が個人的にこういうお話を嗜好しているのだろうと思わざるを得ませんね。
本作も極めて程度が低く、馬鹿らしくなります。
ねこのひげ
2014年11月30日 09:18
『ハードコアの夜』観ましたが、ハリウッドのこの手の映画はどこか気が抜けたような印象の作品が多いですね。
日本のロマンポルノの方が良いようです。
オカピー
2014年11月30日 17:47
ねこのひげさん、こんにちは。

「ハードコアの夜」は底が浅くてつまらない作品でした。
ポール・シュレイダーは脚本家としてではなく、映画批評家として小津安二郎なども取り上げた才人ですが、どうして監督するのはこういう馬鹿馬鹿しいものが多いのでしょうか?

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