映画評「ゼロ・グラビティ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督アルフォンソ・キュアロン
ネタバレあり

恐らく洋画では昨年一番の話題作ではなかったかと思う。数年間映画館で観ていず、新作を追いかけもしない僕ですら題名をよく聞いたのだから。

一応SFだが、実際に起り得る宇宙ゴミの問題がモチーフになっている。

ロシアが自国の人工衛星を爆破した結果、宇宙ゴミになって連鎖的に衛星の破壊が起こり、アメリカの飛行士三名が乗船しているスペース・シャトルも被災、無名の一人はいち早く去り、ロシアや中国の宇宙船に移ることで女性飛行士サンドラ・ブロックとロープで繋がって二人で生き残る道を探っていたジョージ・クルーニーも彼女を生還させる為に自ら手を放して宇宙の塵と消える。
 これ以降はサンドラの独り舞台で、彼女はメカニカル・テクニカルな知識に乏しい為綱渡り的に宇宙船を移動し、クルーニーの幻影・・・恐らくこれはもう一人の彼女・・・と向き合ったりしながら、生還を目指す。

宇宙SFと言うと、「2001年宇宙の旅」(1968年)や「惑星ソラリス」(1972年)といった哲学SF映画を思い出してしまうが、本作については監督が芸術志向のアルフォンソ・キュアロンにつき、一般のサスペンス系と哲学系との中間を行くような感触があって興味深い。

特に「2001年」はあのSFX時代にあってあれだけ壮麗な映像を見せて観客の度肝を抜いたわけで、その意味ではTVで観た僕が言うのも何であるが、「2001年」の衝撃再びと思わせる、圧倒的な画面である。

しかし、こうした面は時間と共に当たり前になってしまうので、時間に堪える作品かどうかはお話にかかるところが多い。僕は論理的な傾向にある左脳人間らしいが、気になるのはあくまで映画的(行動心理学的)におかしいかどうかであって、純粋に科学的に正しいかどうかではない。科学の知識がほぼ皆無でも疑問に思うような余りのデタラメならいざ知らず、理系高校生・大学生でもなければ解らないような純科学的な整合性は映画に求めないので、文系の僕でも些かご都合主義的に過ぎると思う部分についても特に文句を言う気はない。映画として十分成り立っている。

さて、「2001年」は人間の超人への進化を描き、その過程で赤ん坊が出て来るところがあったが、この作品でも哲学的とまでは言えないにしても母親と赤ん坊の関係を思わせる表現が幾つか成されていて、宇宙を真に描くには畢竟人間の内部へと進まざるを得ないのだろうと思わされる。

上映時間91分、魅力だねえ(笑)

この記事へのコメント

十瑠
2014年11月28日 19:23
3D作品らしいですが、僕もレンタルで2Dでした。
実質80分の尺で、ずっと緊張しっぱなしで面白うございました。
スペースシャトルの初登場に「アラビアのロレンス」を思い出したり、事故後のショッキングなショットで「ジョーズ」を思い出したりと、過去の名作の果実をしっかり受け継いでいる演出に嬉しくなりました。
オカピー
2014年11月28日 20:58
十瑠さん、こんにちは。

我ながら呆れた手抜き記事で、すみません。
映画館で観て疑似体験をするような感じなら、サスペンスとしての面白さなども書く気になったのでしょうが、僕には珍しくTV鑑賞では堂々と書けない思いがして、何だか抽象的な表現に推移した感じです。

>過去の名作
「2001年」は勿論、「エイリアン」なども意識していますね。「バーバレラ」を思い出した方もいらっしゃるようで。僕には「バーバレラ」はなかったなあ。

「アラビアのロレンス」ですか。うっかりしました(笑)
尺も短いし、十瑠さんの方法を見習って、もう一回見直した方が良いみたいです^^
ねこのひげ
2014年11月30日 09:14
これは3Dで観ましたです。すごかったですね。
こういうのなら3Dでも文句はありません。
なんどでも観たくなる映画の一つであります。
オカピー
2014年11月30日 17:50
ねこのひげさん、こんにちは。

観ていない僕が賛同するわけにも行きませんが、凄そうです。
十瑠さんも「何度見ても面白い」と仰っているので、また観ましょう^^
少なくとも僕の考える【良い映画】の要件の一つである、【純度が高い】を観たしていることは間違いありません。
小枝
2014年11月30日 23:13
先日はTBをして下さいまして有難うございます。
わたくしも返させて戴きました。
今後もよろしくお願いいたします。
オカピー
2014年12月01日 20:18
小枝さん、TB返し及びコメント有難うございます。

この映画の存在は確か小枝さんのブログで知ったので、記事を書いた時には忘れずにTBしようと思っていました。
時間が出来たらそちらにコメントを残すかもしれません。

こちらこそ、今後ともよろしくお願い致します。

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