映画評「二流小説家 シリアリスト」
☆☆★(5点/10点満点中)
2013年日本映画 監督・猪崎宣昭
ネタバレあり
デーヴィッド・ゴードンの推理小説「二流小説家」を、TVのミステリーものをよく手掛けているのでその実績を買われたらしい猪崎宣昭が映画化したミステリー。
売れない作家・上川隆也が、12年前の首なし連続殺人を犯した容疑で死刑の判決を受けている写真家・武田真治から、告白本の執筆依頼を受ける。条件があって、自分の狂信的ファンの女性を取材して彼を主人公にした官能小説を書くごとに情報を小出しに教えるとの由。才能も度胸も大した欲もない彼は躊躇するが、写真家の弁護士・高橋惠子の妙に挑発的な態度に却って書く気が起こる。
ところが、彼が取材に訪れた三番目の女性が首なし死体で発見されたのを手始めに前の二人も同様の憂き目に遭っていて正に12年前の事件が再現されていることが判明、作家は刑事・伊武雅刀から疑われたり、何者かに襲われたりするうちに真相に近づいていく。
奇しくも、昨日読んだ坂口安吾の推理小説「不連続殺人事件」に名探偵が二流作家にしかなれない理由が述べられていた。名探偵は人間観察が犯罪心理どまりで人間探究の迷路に入り込まないから名探偵にはなれても一流文士になれないとの分析。正にそれを地で行く主人公で、終盤に探偵的な活動が要求されるや鮮やかな推理を働かせ、刑事に解けない真相を究明してしまう。
この作品の一番面白く感じられる部分は、猟奇殺人の真相でも、写真家とその母親の訳ありな関係でもなく、写真家が何故主人公を執筆者に選んだかということ、そこには坂口安吾の名探偵=二流文士論に近い理由、即ち、結末を伏せる為書きにくいが、狂気を持つ写真家にとって目的を達成する為に誘導しやすい人物であったということである。
写真家を演じた武田真治は熱演だが、些かオーヴァーアクトであろう。
TVでミステリーが大量に作られているせいか、ミステリー映画は少ない。もっと作って欲しいね。
2013年日本映画 監督・猪崎宣昭
ネタバレあり
デーヴィッド・ゴードンの推理小説「二流小説家」を、TVのミステリーものをよく手掛けているのでその実績を買われたらしい猪崎宣昭が映画化したミステリー。
売れない作家・上川隆也が、12年前の首なし連続殺人を犯した容疑で死刑の判決を受けている写真家・武田真治から、告白本の執筆依頼を受ける。条件があって、自分の狂信的ファンの女性を取材して彼を主人公にした官能小説を書くごとに情報を小出しに教えるとの由。才能も度胸も大した欲もない彼は躊躇するが、写真家の弁護士・高橋惠子の妙に挑発的な態度に却って書く気が起こる。
ところが、彼が取材に訪れた三番目の女性が首なし死体で発見されたのを手始めに前の二人も同様の憂き目に遭っていて正に12年前の事件が再現されていることが判明、作家は刑事・伊武雅刀から疑われたり、何者かに襲われたりするうちに真相に近づいていく。
奇しくも、昨日読んだ坂口安吾の推理小説「不連続殺人事件」に名探偵が二流作家にしかなれない理由が述べられていた。名探偵は人間観察が犯罪心理どまりで人間探究の迷路に入り込まないから名探偵にはなれても一流文士になれないとの分析。正にそれを地で行く主人公で、終盤に探偵的な活動が要求されるや鮮やかな推理を働かせ、刑事に解けない真相を究明してしまう。
この作品の一番面白く感じられる部分は、猟奇殺人の真相でも、写真家とその母親の訳ありな関係でもなく、写真家が何故主人公を執筆者に選んだかということ、そこには坂口安吾の名探偵=二流文士論に近い理由、即ち、結末を伏せる為書きにくいが、狂気を持つ写真家にとって目的を達成する為に誘導しやすい人物であったということである。
写真家を演じた武田真治は熱演だが、些かオーヴァーアクトであろう。
TVでミステリーが大量に作られているせいか、ミステリー映画は少ない。もっと作って欲しいね。
この記事へのコメント
芥川賞や直木賞を取ったからと言って一流とはいいがたい作家はたくさんおりますがね。
小説ではミステリーは多いので作って欲しいですね。
>二流
本作での扱いは、売れない作家を指しているようです。
「不連続殺人事件」は少し違ったかな。
昔はそうでもなかったかもしれませんが、最近は芥川賞を取ると売れますよね。良い時代になりました。
>ミステリー
70年代後半から80年代前半は、クリスティーと横溝正史のブームで本格ミステリーが映画でも賑わいましたが、近年は寂しいです。