映画評「ホビット 竜に奪われた王国」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2013年ニュージーランド=アメリカ合作映画 監督ピーター・ジャクスン
ネタバレあり
「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの前段シリーズ第2作。
前作を鑑賞してからまだ16か月しか経っていないのにもう前作のお話の大部分を忘れている。ということで、前作のわが鑑賞記事からカンニングをば致して、まず簡単にお話のご紹介。
小人のドワーフ一行と彼らに雇われたホビット族のビルボ(マーティン・フリーマン)が、竜のスマウグに奪われた王国を取り戻しに故国のあった“はなれ山”を目指し、途上彼らをしつこく狙う醜悪なオーク族たちに襲われ、大蜘蛛の群れから辛うじて脱出、妖精的なエルフにも捕えられて樽で川下りして逃げ出す。
旅の途上に出遭う様々な危難からいかに抜け出すかという、冒険映画の定石を踏んだ作劇は正に前作に続く正攻法で、なかなか楽しめる。特に、樽での脱出行は昼間の明るい画面で繰り広げられるために視覚的に抜群の面白さがあり、半ば実写に見えることもあって、大いに気に入った。
湖の町の商人バルド(ルーク・エヴァンズ)が一行に手を貸す一連のシークエンスもサスペンスフルで楽しめるが、この後くらいからストーリーが直線性を失って、ロートルの辛さで大量に出て来る固有名詞に混乱を増していく。例えば、ドワーフ族の王位継承者トーリン(リチャード・アーミテージ)がオーク族の言うオーケンシールドと同一人物であることは解るが、こういうところは一見さん(僕は前作を観ているが)に解るような工夫が必要じゃろうねえ。
かくして、正に児童向けに直線的な作りで気に入った前作に比べ、本作後半は「ロード・オブ・ザ・リング」に通ずる面倒臭さが出てきてしまう。固有名詞に難儀(特に第一作)しながらもかのシリーズについては高く評価したが、前作の単純明快さこそふさわしい(と勝手に思っている)この「ホビット」シリーズで同じようなことをやられても余り有難くない。しかし、前作で活用が足りないと感じた指輪の力を十分活用しているのはヨロシイ。
やっと到着した“はなれ山”でビルボが眠っている巨竜スマウグの目をかいくぐってトーリンが王になる為に必要なアーケインの石を奪うシークエンスは一応サスペンスフルながら気を持たせすぎてもたつく印象あり。竜が出て来る映画と相性が悪いという僕のジンクスは、残念ながら、今回も例外にならなかったようだ。その竜が湖の町を目指してこの町が危機に陥る直前で本編終了。正に大昔の連続活劇的な終了の仕方と言うべし。
この手のVFXてんこ盛りの作品をTVで観ても映画館鑑賞者との間に評価に乖離が出るのはやむを得まい。一方、TVだからこそ視覚の圧倒的迫力に誤魔化されにくい映画の内容面での実力が正確に把握できるとも強がって思っているのだが。
小説「指輪物語」は僕の中ではまだ古典に入っていない。古典の大半を制覇したら読みたいと思うが、それには最低でももう十年は必要なのだよねえ。
2013年ニュージーランド=アメリカ合作映画 監督ピーター・ジャクスン
ネタバレあり
「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの前段シリーズ第2作。
前作を鑑賞してからまだ16か月しか経っていないのにもう前作のお話の大部分を忘れている。ということで、前作のわが鑑賞記事からカンニングをば致して、まず簡単にお話のご紹介。
小人のドワーフ一行と彼らに雇われたホビット族のビルボ(マーティン・フリーマン)が、竜のスマウグに奪われた王国を取り戻しに故国のあった“はなれ山”を目指し、途上彼らをしつこく狙う醜悪なオーク族たちに襲われ、大蜘蛛の群れから辛うじて脱出、妖精的なエルフにも捕えられて樽で川下りして逃げ出す。
旅の途上に出遭う様々な危難からいかに抜け出すかという、冒険映画の定石を踏んだ作劇は正に前作に続く正攻法で、なかなか楽しめる。特に、樽での脱出行は昼間の明るい画面で繰り広げられるために視覚的に抜群の面白さがあり、半ば実写に見えることもあって、大いに気に入った。
湖の町の商人バルド(ルーク・エヴァンズ)が一行に手を貸す一連のシークエンスもサスペンスフルで楽しめるが、この後くらいからストーリーが直線性を失って、ロートルの辛さで大量に出て来る固有名詞に混乱を増していく。例えば、ドワーフ族の王位継承者トーリン(リチャード・アーミテージ)がオーク族の言うオーケンシールドと同一人物であることは解るが、こういうところは一見さん(僕は前作を観ているが)に解るような工夫が必要じゃろうねえ。
かくして、正に児童向けに直線的な作りで気に入った前作に比べ、本作後半は「ロード・オブ・ザ・リング」に通ずる面倒臭さが出てきてしまう。固有名詞に難儀(特に第一作)しながらもかのシリーズについては高く評価したが、前作の単純明快さこそふさわしい(と勝手に思っている)この「ホビット」シリーズで同じようなことをやられても余り有難くない。しかし、前作で活用が足りないと感じた指輪の力を十分活用しているのはヨロシイ。
やっと到着した“はなれ山”でビルボが眠っている巨竜スマウグの目をかいくぐってトーリンが王になる為に必要なアーケインの石を奪うシークエンスは一応サスペンスフルながら気を持たせすぎてもたつく印象あり。竜が出て来る映画と相性が悪いという僕のジンクスは、残念ながら、今回も例外にならなかったようだ。その竜が湖の町を目指してこの町が危機に陥る直前で本編終了。正に大昔の連続活劇的な終了の仕方と言うべし。
この手のVFXてんこ盛りの作品をTVで観ても映画館鑑賞者との間に評価に乖離が出るのはやむを得まい。一方、TVだからこそ視覚の圧倒的迫力に誤魔化されにくい映画の内容面での実力が正確に把握できるとも強がって思っているのだが。
小説「指輪物語」は僕の中ではまだ古典に入っていない。古典の大半を制覇したら読みたいと思うが、それには最低でももう十年は必要なのだよねえ。
この記事へのコメント
これからというところで終わるのは、中篇なのでしかたないかと。
後編を期待しましょう。
いままでの作りからするといい出来になるのは間違いないでしょう。
しかし、じっくりと観るにはやはりテレビでしょうね。
何度でも繰り返し観ることが出来ますからね。
あら探しもできる楽しみもありますしね(=^・^=)
>原作
ほーっ、読まれていますか。
「指輪物語」より一つ一つが短そうなので、とっつきやすそうですが、僕が読むのは後年になるでしょうなあ(笑)。
>テレビ
お話と映像と合わさって一本の映画ですから、映像でマイナスの状態で観るのは問題もあるでしょうが、テレビで見る利点もあるのではないかと強がっているわけです^^;
長いこと映画館から離れていると、あの大音量にびっくりですわ(笑)
体調がすぐれないので暫くは映画館は無理そうですが、地方の映画館は平日に行くと確実に貸し切り状態です^^
このシリーズは、「ロード・オブ・ザ・リング」と違って公開スパンが短いのが良いですね。