映画評「ウルフ・オブ・ウォールストリート」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督マーティン・スコセッシ
ネタバレあり

ジョーダン・ベルフォートなる実在の証券マンの回想録をマーティン・スコセッシが映像化した大作。主演はスコセッシのお気に入りになったらしいレオナルド・ディカプリオで、1950年代のアンソニー・マンとジェームズ・スチュワートのようなコンビになった感あり(古くてすみません)。

貯金もない貧乏青年ジョーダン(ディカプリオ)はロスチャイルド証券に入社したものの、1986年のブラック・マンデーで憧れの証券ブローカー・デビューの日に会社が倒産して失業、ペニー証券という少額証券を売り半分も手数料を戴いているインチキ臭い証券センターなるところに就職してその話術でもの凄い稼ぎを生み出す。
 たまたま話しかけて来た通りすがりのあんちゃんドニー・アゾフ(ジョナ・ヒル)との交流により独立を決意、数人の仲間たちともっとインチキ臭い証券会社を創設する。中流階級を狙っていた証券センターと違ってこちらは大金持ちがターゲットで、話術を徹底的に教え込まれた部下たちは業績を上げ、マスメディアにも取り上げられるようになった為社員が激増する。
 その前から目を付けていたFBIはいよいよジョーダンを逮捕しようと接近するが、彼もそう簡単には足を出さず、財産をスイスの銀行に移す。が、部下のへまで彼も取り調べを受けることになり、やがて司法取引により泣く泣く部下や商売仲間たちを売る羽目になる。それにより20年食らうところを3年の刑に留めることに成功するが、二番目の妻ナオミ(マーゴット・ロビー)と愛娘との絆を失うことになる。

若者向けに下品なコメディーが大量に作られているだけでなく、大人向けにも下ネタを扱う作品が多くなったのは、上品な僕(笑)には感心できない現象であるとは言え、本作のように下ネタでもお笑いのために用意されたものでなければそう眉をひそめる必要を感じない。尤も、本作は全体的にはじけた、コミカルな作り方がされており、下ネタに笑うべきところも多々あるのが実際ながら、そこに人間の悲しい性(さが)を感じさせないでもないのはさすがベテランのご貫録。それと並行してドラッグ絡みの場面も多く、主人公がへろへろになるなど、こちらのほうが寧ろ毒のあるお笑いに活用されている。

かくして、ディカプリオが主人公を演じているせいもあって、「華麗なるギャツビー」からロマンティシズムや悲劇性を取り除いたような印象、即ち、お金の麻薬のような性格を打ち出すことで、楽しませながら教訓臭くならない程度に人々を啓蒙したいスコセッシの意図が垣間見える、と言っては行き過ぎなら、人間の愚かしい生態を微苦笑しながら見せているような印象が残されるのである。

お話の進行には異化効果の要素として語り手たる主人公がカメラに向って話しかけるなど、工夫が見られる箇所が幾つかあり、70代に入ったスコセッシもまだまだ意気軒昂、3時間を弛緩なく楽しませるパワーは凄い。

冗談のようなジョーダンの人生。僕から3年分の生活費を騙し取った連中もいつか地獄へ行くだろう、と思っていないと気が済まない。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年12月23日 09:56
因果応報という言葉がありますからね。

昔、詐欺電話がかかってきたことがあり、「そんなことばかりやっているとコンクリート詰めにされて東京湾に沈められるぞ」と言ってやったら、嘲笑っていましたが、1カ月に実際に東京湾でコンクリートの靴を履かされた死体が見つかったときは驚きました。
そうそう脳梗塞で半身不随になった奴も・・・
それ以来、あまり言わんことにしましたが、変な能力があるのかな?
オカピー
2014年12月23日 17:28
ねこのひげさん、こんにちは。

>因果応報
それは面白い!
僕も今度言ってやろうかな、そんな能力はないと思いますけど^^

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