映画評「キャプテンハーロック」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2013年日本映画 監督・荒牧伸司
ネタバレあり
子供の頃からコミック派ではなく文学派であったし、TVアニメも小学校と同時にほぼ卒業した。例外だったのは「ルパン三世」「一休さん」くらい。共に松本零士原作である「キャプテンハーロック」と「銀河鉄道999」は大学時代に始まり、少し観たが、どちらも最後までお付き合いしなかった。
といった具合にオリジナル若しくは旧作に思い入れがないので、久しぶりに形を変えて作られる新作について素直に観られる。これは同じ金を出すときに利点である。
それでも、有名アニメや有名コミックの実写化は、小説と違って、キャラクターの造形が既に厳然と提示されているので、思い入れ云々に関係なく、イメージを崩す為にやめておいたほうが無難だろう。その点本作は3DCG作品であるから、ヴィジュアル的に違和感を覚える人は少ないはず。
地球人が宇宙に進出して似た環境の惑星を探そうとするが結局満足が出来ないうちに人口が爆発、地球に帰りたがる人々が殺到して“カムホーム戦争”が勃発する。そこで“ガイア・サンクション”なる機構が発足して地球を聖域化して誰も帰れないように統治を始め、その際に軍人として活躍したのが本作の主人公キャプテンハーロック(声:小栗旬)である。
ハーロックが機構のデタラメな政策に反旗を翻し、海賊となったのが百年前。彼を逮捕する為サンクションから送り込まれたのが若者ヤマ(声:三浦春馬)で、彼には長官の兄イソラ(声:森川智之)とその妻ナミ(声:坂本真綾)を巡って不和となっている為、作戦遂行が少々ややこしいことになる。
という前半のお話を紹介するうちに既に後半明らかになる事実が含まれているのだが、最初から最後まで一貫して“自由”と“虚像”が通奏低音として鳴り響き、この二つが終始絡み合いながらクライマックスへ雪崩れ込む。使われる用語に解りにくいところもあったものの、恐らく退屈するであろうという予想を覆して楽しめた。“自由”と“虚像”が楔となってうまく効いているのである。
最後に“再生”という要素が加わり、それは荒廃した地球だけではなく、キャプテンハーロックにも起こる。つまり、ヤマが二代目になるのである。不滅と言われたハーロックが百年生きていた理由も実は人間が入れ替わっていたのではないかと思わせないでもない幕切れとなっていて、なかなか興味深い。オリジナルに拘る人には笑止千万なのだろうが。
しかし、一番感心したのは画面で、特に動きの滑らかさに驚かされる。ただ、動きに関してはモーション・キャプチャーの類を使ったものらしいので、少し割り引かないとダメかもしれないと文章を書いている今は思う。
3DCGアニメを3Dで観るか2Dで観るか、というややこしい時代。
2013年日本映画 監督・荒牧伸司
ネタバレあり
子供の頃からコミック派ではなく文学派であったし、TVアニメも小学校と同時にほぼ卒業した。例外だったのは「ルパン三世」「一休さん」くらい。共に松本零士原作である「キャプテンハーロック」と「銀河鉄道999」は大学時代に始まり、少し観たが、どちらも最後までお付き合いしなかった。
といった具合にオリジナル若しくは旧作に思い入れがないので、久しぶりに形を変えて作られる新作について素直に観られる。これは同じ金を出すときに利点である。
それでも、有名アニメや有名コミックの実写化は、小説と違って、キャラクターの造形が既に厳然と提示されているので、思い入れ云々に関係なく、イメージを崩す為にやめておいたほうが無難だろう。その点本作は3DCG作品であるから、ヴィジュアル的に違和感を覚える人は少ないはず。
地球人が宇宙に進出して似た環境の惑星を探そうとするが結局満足が出来ないうちに人口が爆発、地球に帰りたがる人々が殺到して“カムホーム戦争”が勃発する。そこで“ガイア・サンクション”なる機構が発足して地球を聖域化して誰も帰れないように統治を始め、その際に軍人として活躍したのが本作の主人公キャプテンハーロック(声:小栗旬)である。
ハーロックが機構のデタラメな政策に反旗を翻し、海賊となったのが百年前。彼を逮捕する為サンクションから送り込まれたのが若者ヤマ(声:三浦春馬)で、彼には長官の兄イソラ(声:森川智之)とその妻ナミ(声:坂本真綾)を巡って不和となっている為、作戦遂行が少々ややこしいことになる。
という前半のお話を紹介するうちに既に後半明らかになる事実が含まれているのだが、最初から最後まで一貫して“自由”と“虚像”が通奏低音として鳴り響き、この二つが終始絡み合いながらクライマックスへ雪崩れ込む。使われる用語に解りにくいところもあったものの、恐らく退屈するであろうという予想を覆して楽しめた。“自由”と“虚像”が楔となってうまく効いているのである。
最後に“再生”という要素が加わり、それは荒廃した地球だけではなく、キャプテンハーロックにも起こる。つまり、ヤマが二代目になるのである。不滅と言われたハーロックが百年生きていた理由も実は人間が入れ替わっていたのではないかと思わせないでもない幕切れとなっていて、なかなか興味深い。オリジナルに拘る人には笑止千万なのだろうが。
しかし、一番感心したのは画面で、特に動きの滑らかさに驚かされる。ただ、動きに関してはモーション・キャプチャーの類を使ったものらしいので、少し割り引かないとダメかもしれないと文章を書いている今は思う。
3DCGアニメを3Dで観るか2Dで観るか、というややこしい時代。
この記事へのコメント
3Dで観て楽し、2Dで観て楽し、後にプラモデルを作って楽しむという人が多いようです。
>メカ
そう言えば、アルカディアがどうのこうの仰る御仁も映画サイトにいらっしゃいましたなあ。
>プラモデル
「スター・ウォーズ」ファンのフィギュアに通ずるものがありますかね。
わが兄はプラモデル大好きの理系人間ですが、僕は不器用だったので生涯まともに作ったプラモデルは一つだけ。子供会の旅行先で何故か買ってきたアメ車のポンティアックです。