映画評「つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2012年日本映画 監督・行定勲
ネタバレあり

行定勲が監督なので観てみた。近年はメジャーの大作も撮ったりもするが、この人の作家らしさを感じようと思ったら本作のような、非大衆的映画のほうが良いような気がする。尤も、豪華な出演者と性愛絡みのお話を考えれば、必ずしも“非大衆的映画”ではないのだが。原作は井上荒野の「つやのよる」。

何年か前妻子を捨てて艶(つや)という女性と伊豆大島に駆け落ちした男・松生春二(阿部寛)は、性に関して奔放な妻・艶の行動に常に悩まされるが、その彼女が癌で昏睡状態に陥る。
 健全な時にその性遍歴を聞かされていた松生は、12歳の彼女を強姦した従兄に始まり、彼女の最初の夫、愛人だったかもしれない男、艶がストーカーしていた男に、最期を看取りに来るように次々と連絡を入れるが、結局誰も病院に来ず、彼は遂に死んだ艶に「ざまあみろ」と快哉の声を上げる。

松生を軸に述べればこういうお話になるが、実を言えば彼は狂言回しなので余り意味がない。来ない男たちの代わりに、その関係者たる女性たち・・・従兄の妻(小泉今日子)、元夫と関係を持つ女(野波麻帆)、愛人だったかもしれず自殺した男の妻(風吹ジュン)、ストーカーされた男の恋人(真木よう子)、そして松生の前妻(大竹しのぶ)と娘(忽那汐里)・・・が彼の電話やメールにより直接・間接的に動揺していく様子を綴るのが眼目で、非常に回りくどいと言おうか、ひねくれた形で進行するところにちょっと面白味がある。

結局はそうした話術やスタイルの面白味を堪能させるのが目的みたいなものらしいので、そのポイントを押さえず、恋愛観・人生観といった見地から見たり分析してもピンと来ない作品としか捉えられないだろう。この他に、大島の景観も作品のムード醸成に貢献して得点源と言うべし。

最近原作ものを観ると、直後に図書館に原作があるかどうか調べる癖がついてしまった。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年12月14日 09:46
原作を読んでみると、映画を作るときにどこをカットするのかがわかったりして、映画がより面白いですね。
オカピー
2014年12月14日 18:13
ねこのひげさん、こんにちは。

「観てから読むか、読んでから観るか」というのが某出版社のキャッチコピーとなったと記憶していますが、古典はともかく、通常レベルの書物なら観てから読みます。その方が得なような感じがするんですよね~^^
順番によって夫々の印象が変わるでしょうね。

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