古典ときどき現代文学:読書録2014
映画という文化が過渡期にあるのか、どこの国の映画もつまらない。古典を観ようにも観られるものは大概観てしまっており、再鑑賞でも構わないと思っているが、初めて観る興奮に及ばないことが多い。
それに反し、本にはまだ読んでいない古典がたくさんある。残ったものには必然的に長いものが多いため、十年分という見積もりは余りに少なく、その倍くらいかかるかもしれない。そうなると、生きているうちに全部は読めないかもしれないなあと焦っております。
ということで、今年もやります、わが読書録。
昨年の目標の一つは、漢籍の四書五経のうち読んでいない四つ「礼記」「易経」「書経」「春秋」を読み下し文と併せて和訳で読むことでしたが、結局「礼記」の抄録を読むに留まりました。
長年念願であったカントの「純粋理性批判」が読めたのは収穫。カントはもう良いので、今年は哲学史的に彼に続く位置づけになるであろうショーペンハウエルでも読もうかな。
残りは気分で選択して読みふけり、色々事件があり体調を大きく崩しながらも、まずます読めました。
(比較的)新しいものは、五木寛之氏の「親鸞 完結篇」とグラハム・ハンコックの超古代文明に関する読物「神々の指紋」くらい。それも「親鸞」に至っては新聞紙上という体たらく。皆さん、呆れているでしょうなあ。
お時間と興味のある方は、時間つぶしにどうぞ。
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福沢 諭吉
「学問のすすめ」・・・日本は140年前と何も変わっていないことが解り、考えさせられる
アーデルベルト・フォン・シャミッソー
「ペーター・シュレミールの不思議な物語」・・・「影を売った男」として有名
久保田 万太郎
「大寺学校」・・・衰えていくものの悲哀を描く三幕もの。
岸田 国士
「暖流」・・・戦前書かれた原作と戦後の映画版では必然的に違う部分はあるが、骨格は同じ
「紙風船」・・・成瀬巳喜男の「驟雨」の一部を成す一幕劇。幕切れはそのもの
フリードリヒ・ラ・モット・フケー
「ウンディーネ」・・・水の精の可憐さに涙。ロマン派の良い部分が出ている
ジョン・クリーランド
「ファニー・ヒル」・・・18世紀の性愛小説。直接的だが冗長で退屈
佐藤 紅緑
「あゝ玉杯に花うけて」・・・児童向けとは言え、戦前の尊王基調に辟易。野球部分は楽しめる
武田 麟太郎
「日本三文オペラ」・・・開高健に同名小説があってややこしい
ジョン・ゴールズワージー
「小春日和」・・・フォーサイト・サーガの中に入れられる中編。老境の味わいに滋味あり
「フォーサイト家物語第二巻:裁判沙汰」・・・ある女性を巡る従兄弟同士の葛藤
「目覚め」・・・サーガの中に入れられる短編。こちらは少年の心境を描く
「フォーサイト家物語第三巻:貸家」・・・親の離婚・再婚が子供世代に影響する
真山 青果
「江戸城総攻」・・・勝海舟が慶喜を暗殺させないように奮闘する。三部作戯曲第一作
「慶喜命乞」・・・第二作。将軍側の侍が敵の陣内に慶喜の生命確約の為に乗り込む
「将軍江戸を去る」・・・第三作。上の侍が慶喜に「勤王」を説き、慶喜が江戸を後にするまで
「血笑記」・・・会津の戦いを舞台に味方の首切りを行う羽目になる男を描く異色心理時代劇
ヴィリエ・ド・リラダン
「残酷物語」・・・ポーの恐怖とアンブローズ・ビアスの皮肉が合わさったような短編集
コーネル・ウールリッチ
「黒衣の花嫁」・・・トリュフォーの映画版も原作に匹敵すると思う。幕切れは映画の勝ち
ジョン・ドス・パソス
「U.S.A.(第一部:北緯四十二度線)」・・・戦前としては頗る斬新な構成による一種の群像劇
ウィリアム・ハドソン
「はるかな国、とおい昔」・・・「緑の館」原作者の博物学的な自叙伝でした
吉川 英治
「鳴門秘帖1~6」・・・通俗時代小説。後年の「宮本武蔵」の深みはないが、文章の切れ味は見事
石川 啄木
「時代閉塞の現状」・・・自然主義評論への疑問を日本社会の問題に敷衍する視点が新鮮
ハーマン・メルヴィル
「白鯨」(再)・・・極めて男性的な小説だが、寄り道が多く、通俗な観点からは退屈だろう
加藤 道夫
「なよたけ」・・・「竹取物語」の生まれた背景を想像して書かれた戯曲
作者不明
「結婚十五の愉しみ」・・・結婚により悲惨な目に遭う男性たちのお話。“愉しみ”は皮肉
ニコライ・A・ネクラーソフ
「デカブリストの妻」・・・流刑にあった革命貴族の妻二人を綴る叙事詩
ガブリエーレ・ダヌンツィオ
「死の勝利」・・・政治思想的には問題ありの人だが、精緻な文章は素晴らしい
石川 雅望
「飛騨匠物語」・・・奈良時代辺りを舞台に、江戸時代に描かれたファンタジー。匠というより超人
ウジェーヌ・フロマンタン
「ドミニック」・・・典型的なロマン主義小説だから、少し説教臭いところがある
江戸川 乱歩
「怪人二十面相」・・・ホームズとルパンから色々と拝借して上手く咀嚼している
ウジェーヌ・ダビ
「北ホテル」・・・映画版より群像劇度が強いが、詩的リアリズムの感覚に通ずるものあり
マージョリー・ローリングズ
「子鹿物語」・・・小説の方が厳しい感じ。グレゴリー・ペックとも主人公は対照的
ジョゼフ・ケッセル
「昼顔」・・・映画版ではブニュエルが勝手に作り替えたところがかなりあると解りました
源 実朝
「金槐和歌集」・・・本歌取りがうまく、藤原定家好みの幽玄さもあり、大いに好み
ジャン=ジャック・ルソー
「孤独な散歩者の夢想」・・・わが身と共通するところがあり、ちょっと感慨覚ゆ
F・W・クロフツ
「フレンチ警部最大の事件」・・・些か平板かな?
高見 順
「故旧忘れ得べき」・・・転向した元社会主義者のうらぶれた人生。自伝的小説
「描写の後ろに寝ていられない」・・・アンチ・リアリズムの文学論としてなかなか面白い
「死の淵より」・・・食道がんに侵され死を前にした作者の素直の心情が解りやすい
筆者多数
「きけ わだつみのこえ」・・・検閲で殆どが通らなかった中でこのむごさ。惜しい才能があたら失われた
アレクサンドル・A・ファジェーエフ
「壊滅」・・・日露戦争時、日本軍と白軍とを敵にしたパルチザン群像劇
栄西
「喫茶養生記」・・・禅宗布教の前段として書かれたらしい
ラフカディオ・ハーン
「怪談」・・・怖さの中にじーんとさせられる日本的人情あり。完読は初めて
円地 文子
「女坂」・・・家制度下における正妻の艱難辛苦を事件ではなく心理的陰影により描く
下村 湖人
「次郎物語 第一部」・・・実母より乳母を慕う小学生時代の次郎。この第一部のみ児童文学的
「次郎物語 第二部」・・・実母への愛情が育つが、陰険な祖母の影響があって中学受験失敗
「次郎物語 第三部」・・・中学(現在の高校)における精神的成長
「次郎物語 第四部」・・・精神的影響を受けた恩師の為に中学を辞める
「次郎物語 第五部」・・・師の作った塾の為に奔走するも、軍部の影響で塾廃止を余儀なくされる
フランツ・カフカ
「変身」(再)・・・虫への変身は家族からの疎外感のメタファーだろう。記憶よりは長かった
舟橋 聖一
「悉皆屋康吉」・・・商人一代記。谷崎潤一郎「細雪」に通ずる部分がある作品世界
アントン・チェーホフ
「桜の園」(再)・・・ロシア帝国末期の哀愁を巧みに描き出した四幕人情劇。傑作
シャルル・ヴィルドラック
「ライオンのめがね」・・・人間社会を動物に仮託した童話
作者不明
「孝経」・・・儒教経書。解説により日本の仏教が中国を経て8割方は儒教化されていることが解った。本文以上に、解説に考えされられるものあり、自分の親不孝に忸怩たる心境に至る
岩野 泡鳴
「耽溺」・・・男性的豪快さとかや。余りピンと来ず
ジョージ・バーナード・ショー
「人と超人」・・・恋愛と種族保存との関連を考えると少し理解しやすい哲学喜劇
「ピグマリオン」・・・「マイ・フェア・レディ」の原作戯曲は、映画よりかなりシニカル
プロスメル・メリメ
「コロンバ」・・・コルシカ島独自の復讐がテーマ。野趣横溢
「カルメン」(再)・・・ジプシー女性に翻弄されて死刑になる兵士のお話。
ヘルマン・ヘッセ
「ガラス玉演戯」・・・20世紀版ロマン主義のようなお話の背後にナチスへの抵抗が揺曳する
メリー・メイプス・ドッジ
「銀のスケート靴」・・・善人しか出て来ない児童文学の元祖
レイ・ブラッドベリ
「華氏451度」・・・放っておくと日本はいずれこんな陰鬱な社会になるのではないか?
斎藤 茂吉
「あらたま」・・・第二歌集。古い言葉を使う為、悲哀や観照の中に力強さがある
蒲 松齢
「聊斎志異」・・・全503話の完全版。時々加えられる作者の感想兼説教のほうが面白いかも
ヘンリー・ミラー
「北回帰線」・・・戦後的文学を戦前やったという印象は「USA」に通じるが、凄みが解らない
作者不明
「カレワラ タリナ」・・・フィン民族叙事詩の抄訳
徳田 秋声
「黴」・・・主人公は男性だが、女性を主人公にした一連の小説を書くきっかけとなったらしい
ハインリッヒ・シュリーマン
「古代への情熱」・・・言語を学んでいた時代が自叙伝として興味深い
石森 延男
「コタンの口笛 第一部:あらしの歌」・・・アイヌ人姉弟の差別との戦い。差別する人間は大嫌いさ
「コタンの口笛 第二部:光の歌」・・・人間の弱さを知った二人は大きく成長する
ジョセフ・コンラッド
「ロード・ジム」・・・マレーの一地方に君臨した白人のお話。着想は面白いが、長すぎる
フランク・ヴェデキント
「春のめざめ」・・・性の問題を中心に大人の過保護が子供たちを悲劇に導く三幕戯曲
岡倉 天心
「茶の本」・・・素晴らしい芸術論。芸術論に感動するとは!
トーマス・ハーディ
「日陰者ジュード」・・・古い結婚観を否定的に捉える二人が迎える悲劇
竹田 出雲(二世)/三好 松洛/並木 宗輔
「仮名手本忠臣蔵」・・・封建制度は嫌だけど、日本人だからねえ
カレル・チャペック
「ロボット(R・U・R)」・・・物質文明の恐ろしさを明瞭に伝え迫力あり。戯曲
ヘシオドス
「神統記」・・・ギリシャ神話の基本中の基本
「仕事と日」・・・もっと牧歌的なのを想像していたのだが、兄弟を説教する為に書かれた詩らしい
ジャン・ジュネ
「花のノートルダム」・・・男色中心のお話は好かないものの、文章は頗る流麗。訳が良いのだろう
エーリッヒ・ケストナー
「エーミールと探偵たち」・・・映画版より楽しい。戦前の日本なら翻案できたかな
五木 寛之
「親鸞 完結篇」・・・新聞にて。もう少し重厚さがあって良いかも
チャールズ・ディケンズ
「大いなる遺産」(再)・・・ミステリー的な面白味あり。後半が圧巻
小田 嶽夫
「城外」・・・文章は美しいが、戦前中国での恋愛を描く内容は余りピンと来ない
冨澤 有爲男
「地中海」・・・不倫をテーマにしたフランス文学的内容
フランソワ・ラ・ロシュフコー
「箴言集」・・・素晴らしき人間洞察。ニヤニヤさせられるものが多い
ジュール=アンリ・ポアンカレ
「科学と仮説」・・・100年以上前の科学書だけど、読む人結構いるのね
ゴンクール兄弟
「ジェルミニィ・ラセルトゥウ」・・・ゾラの「居酒屋」に似ていると思う
A・M・ウィリアムスン/黒岩 涙香
「幽霊塔」・・・翻案ミステリー。江戸川乱歩に影響を与えた古典
トーマス・カーライル
「衣服哲学」・・・世界を衣服文化に仮託した小説風評論(哲学)
広津 柳浪
「今戸心中」・・・浄瑠璃の明治版のようなお話で、ヒロインの心理描写が充実
ドニ・ディドロ
「ラモーの甥」・・・対話形式小説の体を成しているが、これも評論なのだろうなあ
ウィリアム・サッカレー
「虚栄の市」・・・ヴィクトリア朝における小説は長いけど、波瀾万丈で面白い
コルネリウス・タキトゥス
「ゲルマニア」・・・地誌書。ゲルマニアの風俗を取り上げ、自国ローマを軽く風刺している
セオドア・ドライサー
「シスター・キャリー」・・・20世紀アメリカ小説の嚆矢となった傑作。ワイラー「黄昏」の原作
菊池 寛
「真珠夫人」・・・大正末期に書かれた一種のフェミニズム小説。通俗的ながら読ませる
岡本 かの子
「鶴は病みき」・・・作者の芥川龍之介との交流をベースにした実話小説。文学資料として面白い
パーシー・B・シェリー
「鎖を解かれたプロメテウス」・・・ギリシャ神話に材を取り、愛と自由を謳う詩劇
九鬼 周造
「『いき』の構造」・・・こういうことを考察の対象にするする人がいることに当時の人々同様驚いた
アンリ・バルビュス
「砲火」・・・殆どノンフィクション。最後に反戦的主張を前面に出すのは違和感あるが
イェジー・アンジェイェフスキ
「灰とダイヤモンド」・・・映画より群像劇的。ワイダは原作のトーンをよく伝えている
ウィリアム・ハドソン
「緑の館」・・・オードリーの映画版よりずっと面白いですぞ
柳田 国男
「遠野物語」・・・明治時代の実話怪異譚集。文語体ならではの迫力あり
シャルル・ヴィルドラック
「商船テナシチィ」・・・デュヴィヴィエの映画版をもう一度観たくなった
ハインリヒ・マン
「ウンラート教授」・・・「嘆きの天使」の原作なれど、映画のような悲劇ではなく寧ろ喜劇
小山 祐士
「瀬戸内海の子供ら」・・・三幕戯曲。ドラマ性より空気を重んじる辺りは小津安二郎的?
アルフレッド・テニスン
「イン・メモリアム」・・・親友の早すぎる死を悼む長編詩。よくぞここまで長々と
F-A・フェヌロン
「テレマコスの冒険」・・・ギリシャ神話を素材にした君主論。現在でも通用する部分多し
アレクサンドル・ゲルツェン
「誰の罪か」・・・少々まだるっこいが、19世紀半ばのロシアの気分を伝えて秀逸
川口 松太郎
「愛染かつら」・・・映画で余りにも有名なすれ違いメロドラマ。映画より良いです
「続 愛染かつら」・・・戦後書かれたものでしょうが、大衆小説としては前作より魅力薄し
エマニュエル=ジョゼフ・シィエス
「第三身分とは何か」・・・国民は憲法より上位であるそうですよ、総理大臣様
田中 千禾夫
「おふくろ」・・・作者の母への愛に溢れた一幕劇
峠 三吉
「原爆詩集」・・・実際に見たままを語り、直情的に原爆の悲惨さを訴える。言葉をなくしますぞ
ペドロ・アントニオ・デ・アラルコン
「三角帽子」・・・市長の間男騒動を面白おかしく描き出す
サムイル・マルシャーク
「森は生きている」・・・ソ連版「シンデレラ」。もしかしたら遠まわしにスターリン批判?
ジョリ・カルル・ユイスマンス
「さかしま」・・・澁澤龍彦好みの奇書。一種の衒学披露小説です
山本 有三
「嬰児殺し」・・・いつも貧乏人はつらいよ、という一幕劇
「坂崎出羽守」・・・徳川家康と孫娘の千姫に純情な侍が翻弄される悲劇
「津村教授」・・・一人の女性を巡って展開するかなり面白い師弟葛藤ドラマ
アーサー・コナン・ドイル
「シャーロック・ホームズの冒険」・・・有名な「赤毛組合」「まだらの紐」など短編十二編
アルフレッド・ミュッセ
「世紀児の告白」・・・ジョルジュ・サンドとの恋愛模様を綴る自伝的内容
H・G・ウェルズ
「宇宙戦争」(再)・・・スピルバーグの映画版も結構原作に沿って作られていました
「透明人間」・・・戦前の映画版とほぼ同じだけど、主人公が悪役なので後味が悪い
イマニエル・カント
「純粋理性批判」・・・解らないなりに面白い。専門家以外は序論だけで十分かもしれない。ニーチェが「神は死んだ」と言った哲学上の意味も間接的に見えて来る
川端 康成
「浅草紅團」・・・当時の浅草風俗を活写。ルポルタージュ風小説? 小説風ルポルタージュ?
「浅草の姉妹」・・・成瀬巳喜男監督「乙女ごころ三人姉妹」の原作。映画に比べて解りにくい
ヴァージニア・ウルフ
「ダロウェイ夫人」・・・関連する人物の心理が奔放な自由間接話法により綴られる
横光 利一
「旅愁」・・・日本の純文学としては相当長いが未完。東西文明の狭間で苦悩する現代日本人を描く
ミハイル・アルツィバーシェフ
「サーニン」・・・享楽に人生の意義を見出す青年に帝政ロシア末期の気分を感じる
ウォルター・スコット
「湖上の美人」・・・スコットランドの高地・低地間の紛争を巡る叙事詩。僕が読んだのは児童向けに小説化されたもの
作者不明
「礼記」・・・五経の一つ。完全版を読破しようと思ったけれど、抄録の解説本で妥協
近松 門左衛門
「出世景清」・・・時代物、五段構成。源頼朝暗殺を企む平氏残党・景清をめぐる人情
「用明天王職人鑑」・・・日本に仏教が定着するまでの騒動。聖徳太子生誕の秘密。五段
「けいせい反魂香」・・・狩野元清を巡って繰り広げられる幽霊譚。三段
「国性爺合戦」・・・時代物、五段。日本生まれの明朝軍師・鄭成功の活躍を描く英雄談
「平家女護島」・・・時代物、五段。平清盛、常盤御前、俊寛の悲劇が怒涛のように語られ圧巻
ヴラジーミル・コロレンコ
「マカールの夢」・・・貧しい猟師の苦労が夢の中で神に認められるお話
フョードル・ソログープ
「白いお母様」・・・孤独な青年が不敏な子供を引き取って幸福を得る。ピンと来ず
ボリス・ザイツェフ
「静かな曙」・・・帝政ロシア末期らしく、貴族の悲哀を綴る散文詩的小説
坂口 安吾
「不連続殺人事件」・・・中味が本格推理である一方、文体に彼らしいひねくれ方があり面白い
グレアム・グリーン
「権力と栄光」・・・共産政権メキシコを舞台に、新たなキリストの復活劇を描いたと理解することもできる野心作。共産主義からカトリシズムへと転向した作者らしい
ダフネ・デュ=モーリア
「レベッカ」・・・ご存知ヒッチコック映画の原作。新訳はゴシックらしい重さに欠ける
フェレンツ・モルナール
「パール街の少年団」・・・戦争ごっこのような子供同士の対決はどうなのかなあ
佐藤 春夫
「殉情詩集」・・・第一詩集。解りやすいですが。邦画「野ゆき山ゆき海辺ゆき」はこの詩集より
ウィリアム・ラングランド
「農夫ピアズの幻想」・・・キリスト教徒的立場から14世紀英国社会を切り取った長編詩
呉 敬梓
「儒林外史」・・・科挙制度が官僚を腐らせるという風刺。リレー形式による群像劇
グラハム・ハンコック
「神々の指紋」・・・1990年代後半大いに話題になった超古代文明に関する読み物
それに反し、本にはまだ読んでいない古典がたくさんある。残ったものには必然的に長いものが多いため、十年分という見積もりは余りに少なく、その倍くらいかかるかもしれない。そうなると、生きているうちに全部は読めないかもしれないなあと焦っております。
ということで、今年もやります、わが読書録。
昨年の目標の一つは、漢籍の四書五経のうち読んでいない四つ「礼記」「易経」「書経」「春秋」を読み下し文と併せて和訳で読むことでしたが、結局「礼記」の抄録を読むに留まりました。
長年念願であったカントの「純粋理性批判」が読めたのは収穫。カントはもう良いので、今年は哲学史的に彼に続く位置づけになるであろうショーペンハウエルでも読もうかな。
残りは気分で選択して読みふけり、色々事件があり体調を大きく崩しながらも、まずます読めました。
(比較的)新しいものは、五木寛之氏の「親鸞 完結篇」とグラハム・ハンコックの超古代文明に関する読物「神々の指紋」くらい。それも「親鸞」に至っては新聞紙上という体たらく。皆さん、呆れているでしょうなあ。
お時間と興味のある方は、時間つぶしにどうぞ。
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福沢 諭吉
「学問のすすめ」・・・日本は140年前と何も変わっていないことが解り、考えさせられる
アーデルベルト・フォン・シャミッソー
「ペーター・シュレミールの不思議な物語」・・・「影を売った男」として有名
久保田 万太郎
「大寺学校」・・・衰えていくものの悲哀を描く三幕もの。
岸田 国士
「暖流」・・・戦前書かれた原作と戦後の映画版では必然的に違う部分はあるが、骨格は同じ
「紙風船」・・・成瀬巳喜男の「驟雨」の一部を成す一幕劇。幕切れはそのもの
フリードリヒ・ラ・モット・フケー
「ウンディーネ」・・・水の精の可憐さに涙。ロマン派の良い部分が出ている
ジョン・クリーランド
「ファニー・ヒル」・・・18世紀の性愛小説。直接的だが冗長で退屈
佐藤 紅緑
「あゝ玉杯に花うけて」・・・児童向けとは言え、戦前の尊王基調に辟易。野球部分は楽しめる
武田 麟太郎
「日本三文オペラ」・・・開高健に同名小説があってややこしい
ジョン・ゴールズワージー
「小春日和」・・・フォーサイト・サーガの中に入れられる中編。老境の味わいに滋味あり
「フォーサイト家物語第二巻:裁判沙汰」・・・ある女性を巡る従兄弟同士の葛藤
「目覚め」・・・サーガの中に入れられる短編。こちらは少年の心境を描く
「フォーサイト家物語第三巻:貸家」・・・親の離婚・再婚が子供世代に影響する
真山 青果
「江戸城総攻」・・・勝海舟が慶喜を暗殺させないように奮闘する。三部作戯曲第一作
「慶喜命乞」・・・第二作。将軍側の侍が敵の陣内に慶喜の生命確約の為に乗り込む
「将軍江戸を去る」・・・第三作。上の侍が慶喜に「勤王」を説き、慶喜が江戸を後にするまで
「血笑記」・・・会津の戦いを舞台に味方の首切りを行う羽目になる男を描く異色心理時代劇
ヴィリエ・ド・リラダン
「残酷物語」・・・ポーの恐怖とアンブローズ・ビアスの皮肉が合わさったような短編集
コーネル・ウールリッチ
「黒衣の花嫁」・・・トリュフォーの映画版も原作に匹敵すると思う。幕切れは映画の勝ち
ジョン・ドス・パソス
「U.S.A.(第一部:北緯四十二度線)」・・・戦前としては頗る斬新な構成による一種の群像劇
ウィリアム・ハドソン
「はるかな国、とおい昔」・・・「緑の館」原作者の博物学的な自叙伝でした
吉川 英治
「鳴門秘帖1~6」・・・通俗時代小説。後年の「宮本武蔵」の深みはないが、文章の切れ味は見事
石川 啄木
「時代閉塞の現状」・・・自然主義評論への疑問を日本社会の問題に敷衍する視点が新鮮
ハーマン・メルヴィル
「白鯨」(再)・・・極めて男性的な小説だが、寄り道が多く、通俗な観点からは退屈だろう
加藤 道夫
「なよたけ」・・・「竹取物語」の生まれた背景を想像して書かれた戯曲
作者不明
「結婚十五の愉しみ」・・・結婚により悲惨な目に遭う男性たちのお話。“愉しみ”は皮肉
ニコライ・A・ネクラーソフ
「デカブリストの妻」・・・流刑にあった革命貴族の妻二人を綴る叙事詩
ガブリエーレ・ダヌンツィオ
「死の勝利」・・・政治思想的には問題ありの人だが、精緻な文章は素晴らしい
石川 雅望
「飛騨匠物語」・・・奈良時代辺りを舞台に、江戸時代に描かれたファンタジー。匠というより超人
ウジェーヌ・フロマンタン
「ドミニック」・・・典型的なロマン主義小説だから、少し説教臭いところがある
江戸川 乱歩
「怪人二十面相」・・・ホームズとルパンから色々と拝借して上手く咀嚼している
ウジェーヌ・ダビ
「北ホテル」・・・映画版より群像劇度が強いが、詩的リアリズムの感覚に通ずるものあり
マージョリー・ローリングズ
「子鹿物語」・・・小説の方が厳しい感じ。グレゴリー・ペックとも主人公は対照的
ジョゼフ・ケッセル
「昼顔」・・・映画版ではブニュエルが勝手に作り替えたところがかなりあると解りました
源 実朝
「金槐和歌集」・・・本歌取りがうまく、藤原定家好みの幽玄さもあり、大いに好み
ジャン=ジャック・ルソー
「孤独な散歩者の夢想」・・・わが身と共通するところがあり、ちょっと感慨覚ゆ
F・W・クロフツ
「フレンチ警部最大の事件」・・・些か平板かな?
高見 順
「故旧忘れ得べき」・・・転向した元社会主義者のうらぶれた人生。自伝的小説
「描写の後ろに寝ていられない」・・・アンチ・リアリズムの文学論としてなかなか面白い
「死の淵より」・・・食道がんに侵され死を前にした作者の素直の心情が解りやすい
筆者多数
「きけ わだつみのこえ」・・・検閲で殆どが通らなかった中でこのむごさ。惜しい才能があたら失われた
アレクサンドル・A・ファジェーエフ
「壊滅」・・・日露戦争時、日本軍と白軍とを敵にしたパルチザン群像劇
栄西
「喫茶養生記」・・・禅宗布教の前段として書かれたらしい
ラフカディオ・ハーン
「怪談」・・・怖さの中にじーんとさせられる日本的人情あり。完読は初めて
円地 文子
「女坂」・・・家制度下における正妻の艱難辛苦を事件ではなく心理的陰影により描く
下村 湖人
「次郎物語 第一部」・・・実母より乳母を慕う小学生時代の次郎。この第一部のみ児童文学的
「次郎物語 第二部」・・・実母への愛情が育つが、陰険な祖母の影響があって中学受験失敗
「次郎物語 第三部」・・・中学(現在の高校)における精神的成長
「次郎物語 第四部」・・・精神的影響を受けた恩師の為に中学を辞める
「次郎物語 第五部」・・・師の作った塾の為に奔走するも、軍部の影響で塾廃止を余儀なくされる
フランツ・カフカ
「変身」(再)・・・虫への変身は家族からの疎外感のメタファーだろう。記憶よりは長かった
舟橋 聖一
「悉皆屋康吉」・・・商人一代記。谷崎潤一郎「細雪」に通ずる部分がある作品世界
アントン・チェーホフ
「桜の園」(再)・・・ロシア帝国末期の哀愁を巧みに描き出した四幕人情劇。傑作
シャルル・ヴィルドラック
「ライオンのめがね」・・・人間社会を動物に仮託した童話
作者不明
「孝経」・・・儒教経書。解説により日本の仏教が中国を経て8割方は儒教化されていることが解った。本文以上に、解説に考えされられるものあり、自分の親不孝に忸怩たる心境に至る
岩野 泡鳴
「耽溺」・・・男性的豪快さとかや。余りピンと来ず
ジョージ・バーナード・ショー
「人と超人」・・・恋愛と種族保存との関連を考えると少し理解しやすい哲学喜劇
「ピグマリオン」・・・「マイ・フェア・レディ」の原作戯曲は、映画よりかなりシニカル
プロスメル・メリメ
「コロンバ」・・・コルシカ島独自の復讐がテーマ。野趣横溢
「カルメン」(再)・・・ジプシー女性に翻弄されて死刑になる兵士のお話。
ヘルマン・ヘッセ
「ガラス玉演戯」・・・20世紀版ロマン主義のようなお話の背後にナチスへの抵抗が揺曳する
メリー・メイプス・ドッジ
「銀のスケート靴」・・・善人しか出て来ない児童文学の元祖
レイ・ブラッドベリ
「華氏451度」・・・放っておくと日本はいずれこんな陰鬱な社会になるのではないか?
斎藤 茂吉
「あらたま」・・・第二歌集。古い言葉を使う為、悲哀や観照の中に力強さがある
蒲 松齢
「聊斎志異」・・・全503話の完全版。時々加えられる作者の感想兼説教のほうが面白いかも
ヘンリー・ミラー
「北回帰線」・・・戦後的文学を戦前やったという印象は「USA」に通じるが、凄みが解らない
作者不明
「カレワラ タリナ」・・・フィン民族叙事詩の抄訳
徳田 秋声
「黴」・・・主人公は男性だが、女性を主人公にした一連の小説を書くきっかけとなったらしい
ハインリッヒ・シュリーマン
「古代への情熱」・・・言語を学んでいた時代が自叙伝として興味深い
石森 延男
「コタンの口笛 第一部:あらしの歌」・・・アイヌ人姉弟の差別との戦い。差別する人間は大嫌いさ
「コタンの口笛 第二部:光の歌」・・・人間の弱さを知った二人は大きく成長する
ジョセフ・コンラッド
「ロード・ジム」・・・マレーの一地方に君臨した白人のお話。着想は面白いが、長すぎる
フランク・ヴェデキント
「春のめざめ」・・・性の問題を中心に大人の過保護が子供たちを悲劇に導く三幕戯曲
岡倉 天心
「茶の本」・・・素晴らしい芸術論。芸術論に感動するとは!
トーマス・ハーディ
「日陰者ジュード」・・・古い結婚観を否定的に捉える二人が迎える悲劇
竹田 出雲(二世)/三好 松洛/並木 宗輔
「仮名手本忠臣蔵」・・・封建制度は嫌だけど、日本人だからねえ
カレル・チャペック
「ロボット(R・U・R)」・・・物質文明の恐ろしさを明瞭に伝え迫力あり。戯曲
ヘシオドス
「神統記」・・・ギリシャ神話の基本中の基本
「仕事と日」・・・もっと牧歌的なのを想像していたのだが、兄弟を説教する為に書かれた詩らしい
ジャン・ジュネ
「花のノートルダム」・・・男色中心のお話は好かないものの、文章は頗る流麗。訳が良いのだろう
エーリッヒ・ケストナー
「エーミールと探偵たち」・・・映画版より楽しい。戦前の日本なら翻案できたかな
五木 寛之
「親鸞 完結篇」・・・新聞にて。もう少し重厚さがあって良いかも
チャールズ・ディケンズ
「大いなる遺産」(再)・・・ミステリー的な面白味あり。後半が圧巻
小田 嶽夫
「城外」・・・文章は美しいが、戦前中国での恋愛を描く内容は余りピンと来ない
冨澤 有爲男
「地中海」・・・不倫をテーマにしたフランス文学的内容
フランソワ・ラ・ロシュフコー
「箴言集」・・・素晴らしき人間洞察。ニヤニヤさせられるものが多い
ジュール=アンリ・ポアンカレ
「科学と仮説」・・・100年以上前の科学書だけど、読む人結構いるのね
ゴンクール兄弟
「ジェルミニィ・ラセルトゥウ」・・・ゾラの「居酒屋」に似ていると思う
A・M・ウィリアムスン/黒岩 涙香
「幽霊塔」・・・翻案ミステリー。江戸川乱歩に影響を与えた古典
トーマス・カーライル
「衣服哲学」・・・世界を衣服文化に仮託した小説風評論(哲学)
広津 柳浪
「今戸心中」・・・浄瑠璃の明治版のようなお話で、ヒロインの心理描写が充実
ドニ・ディドロ
「ラモーの甥」・・・対話形式小説の体を成しているが、これも評論なのだろうなあ
ウィリアム・サッカレー
「虚栄の市」・・・ヴィクトリア朝における小説は長いけど、波瀾万丈で面白い
コルネリウス・タキトゥス
「ゲルマニア」・・・地誌書。ゲルマニアの風俗を取り上げ、自国ローマを軽く風刺している
セオドア・ドライサー
「シスター・キャリー」・・・20世紀アメリカ小説の嚆矢となった傑作。ワイラー「黄昏」の原作
菊池 寛
「真珠夫人」・・・大正末期に書かれた一種のフェミニズム小説。通俗的ながら読ませる
岡本 かの子
「鶴は病みき」・・・作者の芥川龍之介との交流をベースにした実話小説。文学資料として面白い
パーシー・B・シェリー
「鎖を解かれたプロメテウス」・・・ギリシャ神話に材を取り、愛と自由を謳う詩劇
九鬼 周造
「『いき』の構造」・・・こういうことを考察の対象にするする人がいることに当時の人々同様驚いた
アンリ・バルビュス
「砲火」・・・殆どノンフィクション。最後に反戦的主張を前面に出すのは違和感あるが
イェジー・アンジェイェフスキ
「灰とダイヤモンド」・・・映画より群像劇的。ワイダは原作のトーンをよく伝えている
ウィリアム・ハドソン
「緑の館」・・・オードリーの映画版よりずっと面白いですぞ
柳田 国男
「遠野物語」・・・明治時代の実話怪異譚集。文語体ならではの迫力あり
シャルル・ヴィルドラック
「商船テナシチィ」・・・デュヴィヴィエの映画版をもう一度観たくなった
ハインリヒ・マン
「ウンラート教授」・・・「嘆きの天使」の原作なれど、映画のような悲劇ではなく寧ろ喜劇
小山 祐士
「瀬戸内海の子供ら」・・・三幕戯曲。ドラマ性より空気を重んじる辺りは小津安二郎的?
アルフレッド・テニスン
「イン・メモリアム」・・・親友の早すぎる死を悼む長編詩。よくぞここまで長々と
F-A・フェヌロン
「テレマコスの冒険」・・・ギリシャ神話を素材にした君主論。現在でも通用する部分多し
アレクサンドル・ゲルツェン
「誰の罪か」・・・少々まだるっこいが、19世紀半ばのロシアの気分を伝えて秀逸
川口 松太郎
「愛染かつら」・・・映画で余りにも有名なすれ違いメロドラマ。映画より良いです
「続 愛染かつら」・・・戦後書かれたものでしょうが、大衆小説としては前作より魅力薄し
エマニュエル=ジョゼフ・シィエス
「第三身分とは何か」・・・国民は憲法より上位であるそうですよ、総理大臣様
田中 千禾夫
「おふくろ」・・・作者の母への愛に溢れた一幕劇
峠 三吉
「原爆詩集」・・・実際に見たままを語り、直情的に原爆の悲惨さを訴える。言葉をなくしますぞ
ペドロ・アントニオ・デ・アラルコン
「三角帽子」・・・市長の間男騒動を面白おかしく描き出す
サムイル・マルシャーク
「森は生きている」・・・ソ連版「シンデレラ」。もしかしたら遠まわしにスターリン批判?
ジョリ・カルル・ユイスマンス
「さかしま」・・・澁澤龍彦好みの奇書。一種の衒学披露小説です
山本 有三
「嬰児殺し」・・・いつも貧乏人はつらいよ、という一幕劇
「坂崎出羽守」・・・徳川家康と孫娘の千姫に純情な侍が翻弄される悲劇
「津村教授」・・・一人の女性を巡って展開するかなり面白い師弟葛藤ドラマ
アーサー・コナン・ドイル
「シャーロック・ホームズの冒険」・・・有名な「赤毛組合」「まだらの紐」など短編十二編
アルフレッド・ミュッセ
「世紀児の告白」・・・ジョルジュ・サンドとの恋愛模様を綴る自伝的内容
H・G・ウェルズ
「宇宙戦争」(再)・・・スピルバーグの映画版も結構原作に沿って作られていました
「透明人間」・・・戦前の映画版とほぼ同じだけど、主人公が悪役なので後味が悪い
イマニエル・カント
「純粋理性批判」・・・解らないなりに面白い。専門家以外は序論だけで十分かもしれない。ニーチェが「神は死んだ」と言った哲学上の意味も間接的に見えて来る
川端 康成
「浅草紅團」・・・当時の浅草風俗を活写。ルポルタージュ風小説? 小説風ルポルタージュ?
「浅草の姉妹」・・・成瀬巳喜男監督「乙女ごころ三人姉妹」の原作。映画に比べて解りにくい
ヴァージニア・ウルフ
「ダロウェイ夫人」・・・関連する人物の心理が奔放な自由間接話法により綴られる
横光 利一
「旅愁」・・・日本の純文学としては相当長いが未完。東西文明の狭間で苦悩する現代日本人を描く
ミハイル・アルツィバーシェフ
「サーニン」・・・享楽に人生の意義を見出す青年に帝政ロシア末期の気分を感じる
ウォルター・スコット
「湖上の美人」・・・スコットランドの高地・低地間の紛争を巡る叙事詩。僕が読んだのは児童向けに小説化されたもの
作者不明
「礼記」・・・五経の一つ。完全版を読破しようと思ったけれど、抄録の解説本で妥協
近松 門左衛門
「出世景清」・・・時代物、五段構成。源頼朝暗殺を企む平氏残党・景清をめぐる人情
「用明天王職人鑑」・・・日本に仏教が定着するまでの騒動。聖徳太子生誕の秘密。五段
「けいせい反魂香」・・・狩野元清を巡って繰り広げられる幽霊譚。三段
「国性爺合戦」・・・時代物、五段。日本生まれの明朝軍師・鄭成功の活躍を描く英雄談
「平家女護島」・・・時代物、五段。平清盛、常盤御前、俊寛の悲劇が怒涛のように語られ圧巻
ヴラジーミル・コロレンコ
「マカールの夢」・・・貧しい猟師の苦労が夢の中で神に認められるお話
フョードル・ソログープ
「白いお母様」・・・孤独な青年が不敏な子供を引き取って幸福を得る。ピンと来ず
ボリス・ザイツェフ
「静かな曙」・・・帝政ロシア末期らしく、貴族の悲哀を綴る散文詩的小説
坂口 安吾
「不連続殺人事件」・・・中味が本格推理である一方、文体に彼らしいひねくれ方があり面白い
グレアム・グリーン
「権力と栄光」・・・共産政権メキシコを舞台に、新たなキリストの復活劇を描いたと理解することもできる野心作。共産主義からカトリシズムへと転向した作者らしい
ダフネ・デュ=モーリア
「レベッカ」・・・ご存知ヒッチコック映画の原作。新訳はゴシックらしい重さに欠ける
フェレンツ・モルナール
「パール街の少年団」・・・戦争ごっこのような子供同士の対決はどうなのかなあ
佐藤 春夫
「殉情詩集」・・・第一詩集。解りやすいですが。邦画「野ゆき山ゆき海辺ゆき」はこの詩集より
ウィリアム・ラングランド
「農夫ピアズの幻想」・・・キリスト教徒的立場から14世紀英国社会を切り取った長編詩
呉 敬梓
「儒林外史」・・・科挙制度が官僚を腐らせるという風刺。リレー形式による群像劇
グラハム・ハンコック
「神々の指紋」・・・1990年代後半大いに話題になった超古代文明に関する読み物
この記事へのコメント
ねこのひげは、お笑い芸人のピースの又吉直樹さんが出された純文学を読んでみようと思ってます。
かれは有名な読書家で太宰治のフアンであります。
>広範囲
文系なので、理系関係は余り読んでいませんが、今年はコペルニクスとガリレオくらいは読んでおこうかなあ、などとも思っています。
歌舞伎・浄瑠璃が面白さでは抜群ですかね。映画と違って読むほうがずっと早いというのも良いです(笑)
>ピースの又吉直樹さん
ピースは辛うじて聞いたことがありますが、又吉さんと言われても顔が思い浮かばない(笑)
太宰治もひねくれた面白さがありますよね。主だったものは全部読んでいますが、残ったものも決してつまらなくないでしょう。