映画評「武士の献立」
☆☆★(5点/10点満点中)
2013年日本映画 監督・朝原雄三
ネタバレあり
この映画を観て時代劇の復活の陰に非チャンバラ劇への指向があったと今更気付いた。映画における時代劇復興に大きく貢献した藤沢周平の時代小説の映画化でも、チャンバラ以外の侍の一面を描いた部分が多く、僕が若き頃まで観ていた時代劇とはかなり様相を変えていた。製作者たちがファミリー映画的な要素を取り込むことで幅広い観客層を取り込もうとした結果の表れと思う。
さて、本作は「武士の家計簿」に続いて加賀藩に実在した“包丁侍”の一族・舟木家のお話。
“包丁侍”とは主君・前田家の賄いや催し物の際に料理を出す仕事を担っている武士のことで、その舟木家の当主・伝内(西田敏行)は、六代藩主・吉徳の側室お貞の方(夏川結衣)に仕える春(上戸彩)の料理への知識と腕前が大いに気に入り、彼女を後継ぎとなるべき息子・安信(高良健吾)の嫁にと申し込む。
しかし、いざ嫁いだ彼女は、安信が侍らしい生き方に固執し“包丁侍”として生きざるを得ない現状に無気力の様を呈しているのを見て、伝内の為に彼にはっぱを掛けることにする。かくして彼女に上手く操縦された夫は料理の腕前を上げていくが、そんな折に有名な加賀騒動が起こる。
尤も、“有名”と書きつつ日本史にはいま一つ精通しない僕には詳細を述べることはできない。余り読んで来なかった歴史小説でもぼちぼち読んで、日本史にもう少し詳しくなりたいと思っているところであります。
閑話休題。
伝内と安信が前田家の徳川家との良好な関係維持の為に催される饗応の宴で腕前を振る舞うことになった矢先、お家騒動に巻き込まれて蟄居を命じられていた改革派の親友(柄本佑)が守旧派の重鎮・前田直躬(鹿賀丈史)暗殺に町に出て来たのを知った安信は計画への参加を決める。春はお家断絶になってはいけないと刀を持って逃げ出し、事なきを得る。伝内に命じられて夫婦は能登の田舎料理を研究しに旅に出、その結果彼らの作る料理は好評を得、一家は代々“包丁侍”として加賀藩の安泰に寄与していく。
“包丁侍”なる存在を紹介してくれたのは収穫ながら、誠におっとりしていて物足りない。内容の“おっとり”はむしろ歓迎したいくらいだが、おっとりとおっとりしているのではつまらない。もっとシャープにおっとりしないといけない。
何を言っているのか解らないだろうが、大まかに言えばショットや場面の繋ぎに(マッチカットを使うなどして)もっと工夫をしてくださいということだ。その為にはカメラワークも工夫をする必要が出て来る。
少なからぬ人が指摘するように、エンディングの歌(Chara)が内容にマッチせず全く戴けない。僕は1970年代から映画主題曲として歌を使うことに対してかなり否定的な立場であるが、まして時代劇であれば落ち着いたインストルメントを使うべきだ。
封建時代、一人が問題を起こすと一族郎党にその責めが及ぶ。まして冤罪なら辛いね。
2013年日本映画 監督・朝原雄三
ネタバレあり
この映画を観て時代劇の復活の陰に非チャンバラ劇への指向があったと今更気付いた。映画における時代劇復興に大きく貢献した藤沢周平の時代小説の映画化でも、チャンバラ以外の侍の一面を描いた部分が多く、僕が若き頃まで観ていた時代劇とはかなり様相を変えていた。製作者たちがファミリー映画的な要素を取り込むことで幅広い観客層を取り込もうとした結果の表れと思う。
さて、本作は「武士の家計簿」に続いて加賀藩に実在した“包丁侍”の一族・舟木家のお話。
“包丁侍”とは主君・前田家の賄いや催し物の際に料理を出す仕事を担っている武士のことで、その舟木家の当主・伝内(西田敏行)は、六代藩主・吉徳の側室お貞の方(夏川結衣)に仕える春(上戸彩)の料理への知識と腕前が大いに気に入り、彼女を後継ぎとなるべき息子・安信(高良健吾)の嫁にと申し込む。
しかし、いざ嫁いだ彼女は、安信が侍らしい生き方に固執し“包丁侍”として生きざるを得ない現状に無気力の様を呈しているのを見て、伝内の為に彼にはっぱを掛けることにする。かくして彼女に上手く操縦された夫は料理の腕前を上げていくが、そんな折に有名な加賀騒動が起こる。
尤も、“有名”と書きつつ日本史にはいま一つ精通しない僕には詳細を述べることはできない。余り読んで来なかった歴史小説でもぼちぼち読んで、日本史にもう少し詳しくなりたいと思っているところであります。
閑話休題。
伝内と安信が前田家の徳川家との良好な関係維持の為に催される饗応の宴で腕前を振る舞うことになった矢先、お家騒動に巻き込まれて蟄居を命じられていた改革派の親友(柄本佑)が守旧派の重鎮・前田直躬(鹿賀丈史)暗殺に町に出て来たのを知った安信は計画への参加を決める。春はお家断絶になってはいけないと刀を持って逃げ出し、事なきを得る。伝内に命じられて夫婦は能登の田舎料理を研究しに旅に出、その結果彼らの作る料理は好評を得、一家は代々“包丁侍”として加賀藩の安泰に寄与していく。
“包丁侍”なる存在を紹介してくれたのは収穫ながら、誠におっとりしていて物足りない。内容の“おっとり”はむしろ歓迎したいくらいだが、おっとりとおっとりしているのではつまらない。もっとシャープにおっとりしないといけない。
何を言っているのか解らないだろうが、大まかに言えばショットや場面の繋ぎに(マッチカットを使うなどして)もっと工夫をしてくださいということだ。その為にはカメラワークも工夫をする必要が出て来る。
少なからぬ人が指摘するように、エンディングの歌(Chara)が内容にマッチせず全く戴けない。僕は1970年代から映画主題曲として歌を使うことに対してかなり否定的な立場であるが、まして時代劇であれば落ち着いたインストルメントを使うべきだ。
封建時代、一人が問題を起こすと一族郎党にその責めが及ぶ。まして冤罪なら辛いね。
この記事へのコメント
映画としては、もうすこし強弱をつけた描き方をしてほしかったですけどね。
ねこのひげの読んでいる『居眠り磐音シリーズ』は48巻になりますが、江戸庶民の生活も克明に描かれているところが人気のようです。
全体の内容にはさして不満はありませんでしたが、もっと映画的なアングルがないと、TV映画と全く変わらない印象です。
TV映画のレベルが上がったのなら、それでも良いですが・・・
>『居眠り磐音シリーズ』
ミステリーやSFだけでなく、時代小説もお読みですか(@_@)
僕も幅広いですが、ねこのひげさんの幅の広さも相当なものですねえ^^
僕はとりあえず殆ど読んでいない歴史小説を読もうかと思っていますが、「徳川家康」「新・平家物語」など長いものが多くてなかなか手に付きません。「徳川家康」は一月二巻ずつ読めば、13か月で読める計算ですが・・・他に読みたい古典中の古典が山とあるので、どうも後回しになりますね。