映画評「猫侍」
☆☆★(5点/10点満点中)
2014年日本映画 監督・山口義孝
ネタバレあり
TVミニシリーズの映画版だそうである。つまらない現代劇ならまだ時代劇のほうが良いと思って観てみたが、どうにも面白くない。退屈なのではなく、TV局絡みの映画の例に洩れず、余りに微温的で挨拶に困る部分が多いのである。とりあえずお話をば。
仕官活動中の傘張浪人・北村一輝が、猫と犬を巡って争っているヤクザの犬側に雇われて、抗争相手の猫を殺す役目を負う。無気力な猫番(=用心棒)の寺脇康文を出し抜いて上手く仕留めたと思いきや、実は殺生が出来ない浪人は密かに家に連れて来る。最初は邪魔と思っていた白猫が突然可愛くなり、そこへ猫一家の女中・蓮佛美沙子が舞い込んで来て、猫が生きていることがばれるとまずいでしょうと理屈をこねて彼の家で猫の面倒を見始める。今度は親の仇を討とうと町に出てきた新しい猫番・浅利陽介が弟子にしてくれと現れる。若者は偶然にも前の猫番が仇と知って俄然血気にはやるが、師匠は一向にその気を見せない。
互いにペットを預かっていると知った組同士は用心棒を使って引き渡しを決行、そこへ笠張浪人が現れて一波乱あるかと思わせ、結局は平和裏に事は収まってしまう。
笑いの指向性が、北村も出ていた「テルマエ・ロマエ」に近く、ローマ人と銭湯ならぬ、侍と猫という意外な組み合わせに、侍の内面モノローグによる笑いが中心となる。しかし、かの作品では組合せの面白さが随所に発揮できていたのに対し、こちらの猫は可愛らしいだけで狂言回しになっていない。侍の言動をほぼ現代人のそれにした内面モノローグによる笑いも程度が低い。
やはり時代劇ならコミカルではなくユーモラスなものを期待したくなるのがオールド・ファンの心情であろう。韓国映画人を筆頭に、コミカルとユーモラスの違いを分かっていない人が近年多い。ユーモラスな時代劇と言えば、山中貞雄の「丹下左膳餘話 百万両の壺」(1935年)を参考にされると良いと思う。
それ以前に、猫を殺そうが略奪しようが復讐にも争いの解決にもならないであろう。人情的に断言できない部分があるものの、実際に猫組がやるように動物なら代替えが十分利きそうなので、お話として果たして成立するのか疑問が残るのである。そのナンセンスがお笑いなのだと言えばそれまでであるが、どうもこのナンセンスは常識以下ではあるまいか。常識外れならお笑いになるが、常識以下ではお話にならない。この違い、解りますか。
僕はネコ派だけれど。
2014年日本映画 監督・山口義孝
ネタバレあり
TVミニシリーズの映画版だそうである。つまらない現代劇ならまだ時代劇のほうが良いと思って観てみたが、どうにも面白くない。退屈なのではなく、TV局絡みの映画の例に洩れず、余りに微温的で挨拶に困る部分が多いのである。とりあえずお話をば。
仕官活動中の傘張浪人・北村一輝が、猫と犬を巡って争っているヤクザの犬側に雇われて、抗争相手の猫を殺す役目を負う。無気力な猫番(=用心棒)の寺脇康文を出し抜いて上手く仕留めたと思いきや、実は殺生が出来ない浪人は密かに家に連れて来る。最初は邪魔と思っていた白猫が突然可愛くなり、そこへ猫一家の女中・蓮佛美沙子が舞い込んで来て、猫が生きていることがばれるとまずいでしょうと理屈をこねて彼の家で猫の面倒を見始める。今度は親の仇を討とうと町に出てきた新しい猫番・浅利陽介が弟子にしてくれと現れる。若者は偶然にも前の猫番が仇と知って俄然血気にはやるが、師匠は一向にその気を見せない。
互いにペットを預かっていると知った組同士は用心棒を使って引き渡しを決行、そこへ笠張浪人が現れて一波乱あるかと思わせ、結局は平和裏に事は収まってしまう。
笑いの指向性が、北村も出ていた「テルマエ・ロマエ」に近く、ローマ人と銭湯ならぬ、侍と猫という意外な組み合わせに、侍の内面モノローグによる笑いが中心となる。しかし、かの作品では組合せの面白さが随所に発揮できていたのに対し、こちらの猫は可愛らしいだけで狂言回しになっていない。侍の言動をほぼ現代人のそれにした内面モノローグによる笑いも程度が低い。
やはり時代劇ならコミカルではなくユーモラスなものを期待したくなるのがオールド・ファンの心情であろう。韓国映画人を筆頭に、コミカルとユーモラスの違いを分かっていない人が近年多い。ユーモラスな時代劇と言えば、山中貞雄の「丹下左膳餘話 百万両の壺」(1935年)を参考にされると良いと思う。
それ以前に、猫を殺そうが略奪しようが復讐にも争いの解決にもならないであろう。人情的に断言できない部分があるものの、実際に猫組がやるように動物なら代替えが十分利きそうなので、お話として果たして成立するのか疑問が残るのである。そのナンセンスがお笑いなのだと言えばそれまでであるが、どうもこのナンセンスは常識以下ではあるまいか。常識外れならお笑いになるが、常識以下ではお話にならない。この違い、解りますか。
僕はネコ派だけれど。
この記事へのコメント
『三匹の侍』の長門勇さんの演じる侍のような味わいが出ていればよかったであります。
まあ、長門勇氏のような飄々とした感じは今の若い人には受けないのかもしれませんが。
年寄にはコミカルすぎるのはいけませんですよね。
テレビ版も似たようなものだったのですかねえ?