映画評「嗚呼!!花の応援団」(1976年版)
☆☆★(5点/10点満点中)
1976年日本映画 監督・曾根中生
ネタバレあり
わが母校(高校)は県で1、2位を争う進学校なれどバンカラ気風で、応援部と応援歌が校内を席巻していた(感がある)。校歌を歌う機会も多かったが、やたらに応援歌(実は昔の校歌)を歌わされた。
本作は漫画音痴の僕が珍しくも一話だけ読んだことのあるコミック(どおくまんプロ)を数々のロマン・ポルノで知られる曾根中生が実写映画化した学園コメディーで、大昔に一度観たはずだが全く忘却、或いは見たという記憶は錯覚であろうか。
舞台となるのは関西の架空の三流大学・南河内大学。一回生はゴミ、二回生は奴隷、三回生にして漸く人間、四回生は神という扱いの応援団にあって、前半はその階級制度ぶりを徹底的に見せるお笑いで、ライバル(?)の浪華大学応援団との出入りも主人公・青田赤道(今井均)が団旗を焼いた不始末(本当は狂言回しの一回生のヘマ)をライバル校に処理させる目論見から繰り広げられ、糞尿作戦で見事に勝利を収める。
というドタバタが余りにくだらなく、観るのを止めようかと何度か思いましたなあ。
後半は、父親の妾(宮下順子)を思慕する主人公の懊悩がすれ違いメロドラマ的に描出されたり、一回生(香田修)の若い娼婦(水原ゆう紀)への切ない思慕が綴られ、ナンセンス性は大分影を潜めて少々センチメンタルなムードに満ちた青春映画になる。後者の切なさは応援団員としての硬派ぶり故である。
相当ちゃらんぽらんな作劇で一貫したものがないのは作品として弱いものの、1970年代中盤にはまだかかる硬派学生が辛うじて生き残っていたのであろうということが何となく理解できる面白味がある。同じ日活の鈴木清順監督作「けんかえれじい」(1966年)に通ずる部分があるが、当たり前ながら登場人物の言動は戦前のバンカラ学生を描いたかの作品に比べて大分甘っちょろい。
しかし、このとりとめのない作品が1976年度「キネマ旬報」第7位に選出されているのに何より驚かされる。
曾根監督、わが群馬県出身だけど、学校の先輩ではない。
1976年日本映画 監督・曾根中生
ネタバレあり
わが母校(高校)は県で1、2位を争う進学校なれどバンカラ気風で、応援部と応援歌が校内を席巻していた(感がある)。校歌を歌う機会も多かったが、やたらに応援歌(実は昔の校歌)を歌わされた。
本作は漫画音痴の僕が珍しくも一話だけ読んだことのあるコミック(どおくまんプロ)を数々のロマン・ポルノで知られる曾根中生が実写映画化した学園コメディーで、大昔に一度観たはずだが全く忘却、或いは見たという記憶は錯覚であろうか。
舞台となるのは関西の架空の三流大学・南河内大学。一回生はゴミ、二回生は奴隷、三回生にして漸く人間、四回生は神という扱いの応援団にあって、前半はその階級制度ぶりを徹底的に見せるお笑いで、ライバル(?)の浪華大学応援団との出入りも主人公・青田赤道(今井均)が団旗を焼いた不始末(本当は狂言回しの一回生のヘマ)をライバル校に処理させる目論見から繰り広げられ、糞尿作戦で見事に勝利を収める。
というドタバタが余りにくだらなく、観るのを止めようかと何度か思いましたなあ。
後半は、父親の妾(宮下順子)を思慕する主人公の懊悩がすれ違いメロドラマ的に描出されたり、一回生(香田修)の若い娼婦(水原ゆう紀)への切ない思慕が綴られ、ナンセンス性は大分影を潜めて少々センチメンタルなムードに満ちた青春映画になる。後者の切なさは応援団員としての硬派ぶり故である。
相当ちゃらんぽらんな作劇で一貫したものがないのは作品として弱いものの、1970年代中盤にはまだかかる硬派学生が辛うじて生き残っていたのであろうということが何となく理解できる面白味がある。同じ日活の鈴木清順監督作「けんかえれじい」(1966年)に通ずる部分があるが、当たり前ながら登場人物の言動は戦前のバンカラ学生を描いたかの作品に比べて大分甘っちょろい。
しかし、このとりとめのない作品が1976年度「キネマ旬報」第7位に選出されているのに何より驚かされる。
曾根監督、わが群馬県出身だけど、学校の先輩ではない。
この記事へのコメント
僕は1回どころじゃないですね、読んだのは。ただ、当時大流行してたギャグさえも忘れてます。
なんとなくですが、原画のタッチが「あずみ」などを描いている小山ゆうに似てたような。とか言っても、多分オカピーさんは漫画「あずみ」も読まれてないですよね。
>曽根中生
ロマンポルノの後、「博多っ子純情」なんかも作ってたのを覚えてます。
ところで、ディック・フランシスという作家をご存知でしょうか?
著名なミステリー作家でありますが、彼の作品の中でも『告解』という作品はお勧めです。
主人公が映画監督で映画を作りながら作っている映画に関係した殺人事件を解決するのです。
この作品の中で作られる映画も本当に映画になりそうな内容で、後説を書いている森田芳光監督もディック・フランシスは映画を監督したことがあるのではないか?というぐらい映画の撮影現場の描写が素晴らしいのです。
読まれたことがなければ、ぜひ一度読んでみてください。
古い作品なので図書館にあると思います。
>「あずみ」
題名と作者の小山ゆうは知っていますが、勿論読んでいません(笑)
三つ子の魂百までというやつで、子供時代に余り触れていないとその気にならないものですね。
>「博多っ子純情」
観ました!
売れっ子バイプレーヤー(最近は主演も多いけれど)の三石研のデビュー作ですよね。21世紀になってやたらに見るようになった感のある彼とデビュー作の彼は一致しなかったであります。
着実に実績を重ねていたんですねえ。
>ディック・フランシス
存知ております。
「大本命」という競馬が出て来る映画で注目しましたが、原作は読んでおりません。
>「告解」
紹介されたからには、読まないといけませんねえ^^
図書館にありました。
後で感想をば・・・お待ちください。