映画評「LIFE!」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督ベン・スティラー
ネタバレあり
前日(記事UPは同日)再鑑賞した「虹を掴む男」(1947年)のリメイク。主演のベン・スティラーが監督まで担当しているが、オリジナルのような純コメディーを期待すると当てが外れる。
オリジナルと名前も同じウォルター・ミティ(スティラー)は同じく雑誌社に勤める小心者で、同じ社の別部署に入ってきた美人シェリル(クリスティン・ウィグ)が気になっているのに告白できず、交際サイトで思いの丈を伝えようとする程。夢見がちで何かと幻の世界に入っていき、これにまつわる失敗も数え切れない。
という設定であるはずなのだが、このリメイクでは失敗らしい失敗がない。コメディーとして一番肝心な設定を生かし切れていないのは少々勿体ない。笑えるとしたら想像部分の大袈裟すぎる大騒ぎに対してである。ここがVFX時代の技術を生かした大アクションになっているのは良いだろう。
大いに違ってくるのはここから。宝石に関わる犯罪に巻き込まれるミステリー仕立てであったオリジナルと違い、こちらでは【LIFE】誌写真管理部に勤めるウォルターが写真家(ショーン・ペン)の送って来たネガに最終号に使うべきコマが見当たらない為に必死に探す羽目になり、内向きな性格を突き破って写真家の居ると思われるグリーンランドからアイスランド、果てはアフガニスタンまでそれまでの彼には考えられない冒険を繰り広げることになる。
つまり、このリメイクはオリジナルの巻き込まれ型によるお笑いを捨てて、自ら冒険に乗り出すヒューマンな、ほぼシリアスと言って良い内容に変えている。アメリカ喜劇に品のないお笑いしかない時代だけに、上品だがシチュエーションの面白さでゲラゲラ笑える作品を期待していたので、些かガッカリさせられた。
オリジナル鑑賞の段階では、ベン・スティラーはダニー・ケイのインテリ性の垣間見えるおバカぶりを現代に蘇らせるには十年前幻となった企画でキャスティングされていたジム・キャリーよりふさわしいと思ったが、理に落ちすぎているのである。また、実在するLIFE誌の名前を出すといった具合に、現実的に改変しすぎているのも夢がない。
但し、ヒューマン・ドラマとしては相当しっかりしていて、僕のように純コメディーとして観始めて軌道修正できないまま観終えない限りは佳作として印象付けられるだろう。最終印象は21世紀版フランク・キャプラ映画、主人公はダニー・ケイならで21世紀版ジェームズ・スチュワートと言うべし。
今日の東京新聞のコラムは、本作で一番印象的な「トム少佐」(in "Space Oddity" by David Bowie)について触れていました。タイミングから判断して担当者はWOWOW でご覧になったのではないかな?
2013年アメリカ映画 監督ベン・スティラー
ネタバレあり
前日(記事UPは同日)再鑑賞した「虹を掴む男」(1947年)のリメイク。主演のベン・スティラーが監督まで担当しているが、オリジナルのような純コメディーを期待すると当てが外れる。
オリジナルと名前も同じウォルター・ミティ(スティラー)は同じく雑誌社に勤める小心者で、同じ社の別部署に入ってきた美人シェリル(クリスティン・ウィグ)が気になっているのに告白できず、交際サイトで思いの丈を伝えようとする程。夢見がちで何かと幻の世界に入っていき、これにまつわる失敗も数え切れない。
という設定であるはずなのだが、このリメイクでは失敗らしい失敗がない。コメディーとして一番肝心な設定を生かし切れていないのは少々勿体ない。笑えるとしたら想像部分の大袈裟すぎる大騒ぎに対してである。ここがVFX時代の技術を生かした大アクションになっているのは良いだろう。
大いに違ってくるのはここから。宝石に関わる犯罪に巻き込まれるミステリー仕立てであったオリジナルと違い、こちらでは【LIFE】誌写真管理部に勤めるウォルターが写真家(ショーン・ペン)の送って来たネガに最終号に使うべきコマが見当たらない為に必死に探す羽目になり、内向きな性格を突き破って写真家の居ると思われるグリーンランドからアイスランド、果てはアフガニスタンまでそれまでの彼には考えられない冒険を繰り広げることになる。
つまり、このリメイクはオリジナルの巻き込まれ型によるお笑いを捨てて、自ら冒険に乗り出すヒューマンな、ほぼシリアスと言って良い内容に変えている。アメリカ喜劇に品のないお笑いしかない時代だけに、上品だがシチュエーションの面白さでゲラゲラ笑える作品を期待していたので、些かガッカリさせられた。
オリジナル鑑賞の段階では、ベン・スティラーはダニー・ケイのインテリ性の垣間見えるおバカぶりを現代に蘇らせるには十年前幻となった企画でキャスティングされていたジム・キャリーよりふさわしいと思ったが、理に落ちすぎているのである。また、実在するLIFE誌の名前を出すといった具合に、現実的に改変しすぎているのも夢がない。
但し、ヒューマン・ドラマとしては相当しっかりしていて、僕のように純コメディーとして観始めて軌道修正できないまま観終えない限りは佳作として印象付けられるだろう。最終印象は21世紀版フランク・キャプラ映画、主人公はダニー・ケイならで21世紀版ジェームズ・スチュワートと言うべし。
今日の東京新聞のコラムは、本作で一番印象的な「トム少佐」(in "Space Oddity" by David Bowie)について触れていました。タイミングから判断して担当者はWOWOW でご覧になったのではないかな?
この記事へのコメント
いまの人はリメイクと気づかずに観ている人が多いでしょうけどね。
僕の経験では、この作品は知らないで観るほうが、正解です。
尤も、仰る通り若い人は「虹を掴む男」を知らないから、そんな心配をするには及ばないでしょうね。