映画評「君よ憤怒の河を渉れ」
☆☆★(5点/10点満点中)
1976年日本映画 監督・佐藤純弥
ネタバレあり
1970年代後半俄かに西村寿行のミステリー・サスペンスが人気沸騰したが、或いはこの作品のせいだったのだろうか?
検事・高倉健が突然強盗・強姦の犯人として訴えられて逮捕される。自宅に連行された際に逃亡を図り、自分をはめた二人の男女を追って、まずは能登に探し当てた女は死体で発見される。為に、男女の偽名により強盗・強姦容疑が解けたというのに、今度は殺人容疑で追われることになる。男の居るはずの北海道で先回りしていた警察から逃げ込んだ山中で熊に襲われた美人・中野良子を救った事から、その父親である知事候補の実業家・大滝秀治に気に入られ、彼のセスナを融通してもらって東京に戻ることにする。彼を追う一匹狼的刑事・原田芳雄は、自己保身的で態度がころころ変わる検事正・池部良に嫌気がさして高倉の支援者のような心情になっていく。
アメリカのTVドラマ「逃亡者」に似た設定を日本流に翻案したサスペンスと言えば当たらずとも遠からずで、ある意味度肝を抜かれる作品となっている。つまり、街中で警官が発砲するなど、日本であって日本ではない無国籍映画の様相を呈しているのである。
それも1960年代までの日活のそれとは比較にならないスケールの大きさだから、無国籍映画の荒唐無稽ぶりを許せる度量の大きさを持っている人なら、かなりゴキゲンになれる筈。
実は二十代の時にTV放映があった際には嫌な予感がして観なかったが、当時の僕は日活の無国籍映画を馬鹿にしていたから観ていたら恐らく酷評していただろう。主人公はセスナの操縦は初めてなのに難儀しながらも乗りこなし、街中に馬の群れが疾走する場面まであるのだから。僕がその手の作品の面白さが理解できるようになったのは三十代後半くらいだと思う。
それでも全体としては点が伸びないケースが多いわけだが、本作の☆★が少ないのは背景音楽のひどさである。サスペンス映画なのに殆ど気の抜けたような音楽が終始流れて緊張感を殺ぐ。「砂の器」(1974年)のような重厚なのは求めないまでももう少しサスペンスフルな音楽は書けませんでしたかな、青山八郎さん?
この音楽を変えてくれれば☆一つ分がところ余分に増やすことができるというくらい、悪い意味で映画の出来栄えにこれほど影響を与えた背景音楽は僕の映画鑑賞史上初めてである。
西村寿行の作品は町の図書館にごまんと蔵書あるのにこの作品の原作だけなかった。何故?
1976年日本映画 監督・佐藤純弥
ネタバレあり
1970年代後半俄かに西村寿行のミステリー・サスペンスが人気沸騰したが、或いはこの作品のせいだったのだろうか?
検事・高倉健が突然強盗・強姦の犯人として訴えられて逮捕される。自宅に連行された際に逃亡を図り、自分をはめた二人の男女を追って、まずは能登に探し当てた女は死体で発見される。為に、男女の偽名により強盗・強姦容疑が解けたというのに、今度は殺人容疑で追われることになる。男の居るはずの北海道で先回りしていた警察から逃げ込んだ山中で熊に襲われた美人・中野良子を救った事から、その父親である知事候補の実業家・大滝秀治に気に入られ、彼のセスナを融通してもらって東京に戻ることにする。彼を追う一匹狼的刑事・原田芳雄は、自己保身的で態度がころころ変わる検事正・池部良に嫌気がさして高倉の支援者のような心情になっていく。
アメリカのTVドラマ「逃亡者」に似た設定を日本流に翻案したサスペンスと言えば当たらずとも遠からずで、ある意味度肝を抜かれる作品となっている。つまり、街中で警官が発砲するなど、日本であって日本ではない無国籍映画の様相を呈しているのである。
それも1960年代までの日活のそれとは比較にならないスケールの大きさだから、無国籍映画の荒唐無稽ぶりを許せる度量の大きさを持っている人なら、かなりゴキゲンになれる筈。
実は二十代の時にTV放映があった際には嫌な予感がして観なかったが、当時の僕は日活の無国籍映画を馬鹿にしていたから観ていたら恐らく酷評していただろう。主人公はセスナの操縦は初めてなのに難儀しながらも乗りこなし、街中に馬の群れが疾走する場面まであるのだから。僕がその手の作品の面白さが理解できるようになったのは三十代後半くらいだと思う。
それでも全体としては点が伸びないケースが多いわけだが、本作の☆★が少ないのは背景音楽のひどさである。サスペンス映画なのに殆ど気の抜けたような音楽が終始流れて緊張感を殺ぐ。「砂の器」(1974年)のような重厚なのは求めないまでももう少しサスペンスフルな音楽は書けませんでしたかな、青山八郎さん?
この音楽を変えてくれれば☆一つ分がところ余分に増やすことができるというくらい、悪い意味で映画の出来栄えにこれほど影響を与えた背景音楽は僕の映画鑑賞史上初めてである。
西村寿行の作品は町の図書館にごまんと蔵書あるのにこの作品の原作だけなかった。何故?
この記事へのコメント
これだけがないというのも面白いですね。
図書館員の中にこの作品が嫌いな人がいるのかな?
中国ではそのようですね。
チャン・イーモウが「単騎、千里を走る」という映画を作った理由が健さんの死によりやっと解りましたよ。
>図書館員
まあ、偶然なんでしょうけどね。
西村寿行で敢えて読むならこの作品と思ってチェックしたらないんですよ(笑)。
彼の作品は昔一作だけ読んだことがあります。
2年後に製作された「野性の証明」。この映画と似てると思いました。佐藤純弥が監督をした超大作。高倉健が主演。彼を助けるのが中野良子。そして健さんを追っていた刑事がいつの間にか助けてくれるようになる(「野性の証明」では夏八木勲)。
健さんがセスナを操縦して海面に不時着したり、新宿の街の中をたくさんの馬が走ったり、苦笑する場面がいくつかありました。
失敗作だけど話題になった作品だったんでしょうね。
>失敗作だけど話題になった作品だったんでしょうね。
これはですね、双葉師匠が意外な感じがするほど買っているんですよ。
音楽がもっとちゃんとしていれば、僕も、もう少し良い点を進呈できたのだけど。本当に音楽がずっこけ。
ところで、【オカピーの採点表】(勿論【ぼくの採点表】のパクリ)では、4月いっぱいでピートルズのオリジナル・アルバムを終えられるよう営為奮闘中。一生懸命コンポの大音量で聴き直しています(特に音質評価の為。去年手に入れた「ビートルズ・フォー・セール」のステレオ盤が従来持っていたモノ盤より遥かに良いので、ビックリしました)。
全く広告していませんので当然ですが、アクセス数が全く伸び悩んでおります。ジャケットの画像を付ければ、もしかして少し増えるかな?