映画評「男の世界」(1934年)

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1934年アメリカ映画 監督W・S・ヴァン・ダイク
ネタバレあり

同じ邦題のフランス映画(ジェラール・フィリップ主演)があるが、こちらはクラーク・ゲーブル主演のアメリカ映画である。最近とみに増えた図書館からのレンタル。

1904年の遊覧船事故(ニューヨークで実際に起きた事故)で孤児になった二少年ブラッキー(ミッキー・ルーニー)とジム(ジミー・バトラー)は、失った子供の代わりに二人を養子に迎えた養父をも馬の暴走により失う。時が流れて成長したブラッキー(ゲーブル)は賭博にはまり込んで暗黒街の顔役になり、ジム(ウィリアム・パウエル)は検事になる。対照的な人生を歩む二人ながら友情に変わりはない。
 ブラッキーの情婦エリナー(マーナ・ロイ)は実直なジムを知った後ブラッキーにまっとうな人生を歩むように説くものの聞き入れて貰えないので愛想を尽かしてジムに走る。ブラッキーは借金を返そうとしない男を射殺するが、検事としてのジムは証拠不十分として訴追を見送る。友情からではなくあくまで技術上の問題である。
 エリナーはジムが追い払った元選挙参謀から知事選挙の妨害をすると聞いてブラッキーに相談する。彼が男を殺した為にジムは知事に当選するが、逮捕されたブラッキーの為に助力をしようとしない。しかし、死刑直前になってエリナーが真相を告げた為さすがに職務に忠実な知事も刑務所に駆けつけ恩赦の手続きを持ちかけるが、ブラッキーは断って死刑になる。ジムは議員諸氏にブラッキーとの経緯を語り、潔く退任する。

正義の前には友情も意味を成さない愚直な検事・知事がさすがに友人の犠牲的精神に心を揺り動かされるお話で、前後で正反対の態度を取りながらも最後まで実直を貫き通す主人公が清々しく、原題通りメロドラマ的ながら二人の友情に感銘を呼び起こされる。友情と正義との相克に必要以上に悩まされないジムの明快な態度がいかにもアメリカ映画的で良い。【三つ子の魂百まで】を地で行くことを示す、子供時代の描写も楽しい。

構成もまた1930年代アメリカ映画らしい見通しの良さで、ゲーブル主演作の中では好きな部類に入る秀作。

僕はクーパー派だけれど、この作品のゲーブルは格好良いです。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2015年01月27日 12:30
こういう素直な作品は率直に観れて疲れなくてよろしいです。
クーパーもゲーブルも好きです。
静と動というところでしょうかね。
オカピー
2015年01月27日 18:52
ねこのひげさん、こんにちは。

昔のアメリカ映画は非常に明快で、多少出来が悪くても楽しめてしまう。本作の出来は良いわけですが。

ゲーブルは仰る通り動的であり、多かれ少なかれ不良なんですね。クーパーはジェームズ・スチュワートと並んで善人役ばかり。フランク・キャプラやサム・ウッドの映画などが実に似合う。しかし、ジミーさんのほうが能天気ですかな。

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