映画評「バニシング・ポイント」(1971年版)

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1971年アメリカ映画 監督リチャード・C・サラフィアン
ネタバレあり

僕が映画鑑賞の楽しみに目覚めた頃世間を賑わせた作品の一つ。
 アメリカ映画はニューシネマ全盛期で、映画館にかかる作品と映画館に頻繁に行く年齢でもなかった僕が主に観るTVのアメリカ映画とかなり差異のある時代であった。西部劇でもTVではジョン・ウェイン、映画館では陰湿な「ソルジャー・ブルー」(1970年)という具合だった。

本作は日本でニューシネマを語る時必ず出て来る作品だが、「イージー・ライダー」(1969年)同様観る前は一般的なカー・アクション映画と思い込んでいた。しかし、風俗劇の要素の色濃い「イージー・ライダー」とは違い、こちらは実際にカー・アクションがふんだんに盛り込まれているので、純娯楽的に観ても一応は楽しめる内容になっている。僕は同時代に観ることが出来ず、数年後高校生時代くらいに初鑑賞、すっぽんぽんでオートバイに乗る女性の姿に吃驚した。尤も雑誌の紹介でそういうショットがあるのは知っていたと思う。

ベトナムで負傷して名誉の除隊をしたバリー・ニューマンは警官を首になった後レーサーになって一年で辞め、現在はその腕前を生かした運搬業を営んでいる。今乗っている白いハードトップ車のダッジ・チャレンジャーもカリフォルニアの客に届ける特別仕様車で、知り合いの黒人に二日後の午後三時に届けるのだと言ったことから、この時限をクリアできるかどうか賭けをすることになる。
 最高時速160マイル(250km)/hですっ飛ばし、追って来る白バイやパトカーを蹴散らし、競争する相手を痛い目に遭わすなどするうちに、彼を応援する黒人DJクリーヴォン・リトルの放送を通じて一種の英雄に祀り上げられた挙句、警察が用意したブルドーザーの列に突っ込んで壮絶な死を遂げる。

ニューシネマの主なテーマであった反体制的な態度はこの作品にも大いに見られ、ベトナム戦争後遺症の影がちらつく主人公のニヒリズムが車の爆走となって爆発、ぎくしゃくした作り(特にフラッシュバックの挿入の仕方が乱暴)が却って強烈な印象を生み出す、異色の秀作となっている。

車を疾駆させる主人公の脳裏にフラッシュバックが走り、最後は呆気なく死んでしまうという構成は、「あの胸にもういちど」(1968年)の自動車バージョンという印象で、或いは同作から影響を受けた可能性もある。リチャード・C・サラフィアンの紛うことなき代表作。主演のバリー・ニューマンも注目されて「ザルツブルク・コネクション」やその名も「爆走!」という映画に主演した後、主な活動の場をTVに移した。

25年後にリメイクされたTVムービーはWOWOWで放映されたけれど、結局観なかったのかなあ?

この記事へのコメント

十瑠
2015年01月30日 10:16
僕は高校生だったからリアルタイムで封切りを観ましたね。
「イージー・ライダー」と反対に中央部から西海岸に向かって走る暴走ロード・ムーヴィー。
カテゴリーは「アクション・スポーツ」にしましたが、底流をなす主人公の心情を感じとれないと面白さは半減ですよね。
2006年に再見しましたが、記憶通りに楽しめました。
オカピー
2015年01月30日 21:25
十瑠さん、こんにちは。

観ようと思えば観られる年齢でしたが、お小遣いのない家でしたから、まだ制限していましたね。
もう少しすると、毎月二本以上観るようになりました。大概映画ファンとしては先輩に当たる姉貴と一緒に見に行ったものです。その姉貴も勤めを始めてからはさっぱり映画から離れてしまいましたが。

>カテゴリー
僕は、広い意味で「青春」というのも考えましたが、少し違うだろうということで、迷った末に「ドラマ」にしました。
主人公の心情は、本人が何も語らないものですから正確に解らないのですが、体制や権力に対する反感がそれまでの軍隊経験や職歴から培われたのは間違いないでしょうね。最後に意図的に消失点に突っ込んでいく最後の心情は諦観ではなく、達観でしょうか。
2015年01月31日 23:18
この映画は、テレビで観ていて、はっきり覚えているのはハダカでバイクに乗った女の子だけだったりするのですが、話全体は自分のことも世の中のことも見切った男が、ばかげてると承知した上で最後車で突っ込んでいったなと記憶しています。同じようにテレビで観た「イージー・ライダー」よりはわかりやすかった気がしますね。「イージー・ライダー」は大人になってから再見して、たぶん当時のヒッピーのコミューンとかの風俗をデフォルメしてオフビートで描いていたのかなと見当をつけました。全体に何か変なのですよね。不条理ギャグというと言い過ぎですが。
バリー・ニューマンという名前は覚えていますし、顔も、いかにもユダヤ系の顔だったなあと思い出します。「ザルツブルグ・コネクション」もテレビで観たのでしょう、題名だけは覚えていますね。スパイものか犯罪ものでしたか。
2015年02月01日 10:18
ねこのひげは、ロードショーで観ました(^^ゞ
投げやりな虚無的な主人公に魅力がありましたね。
最後はああなるだろなと思ってましたがね。
オカピー
2015年02月01日 21:38
nesskoさん、こんにちは。

>ハダカでバイク
あの場面(というかショット)と幕切れがとにかく印象的でしたよね。
僕らも若かったから(笑)

>世の中のことも見切った男
僕も一応達観の末の行動と思います。自虐的な笑いだったのかなあ。

>「イージー・ライダー」
一種の風俗劇だと解釈していますが、主題はアメリカにおける一種の文化の衝突ですよね。大げさに言えば、現在の西欧文化とイスラム文化みたいな感じ。この混沌とした感じは扱い次第でやはりギャグになる気がします。

>いかにもユダヤ系
そうでしたね。ダスティン・ホフマンほど可愛げがありませんでしたが。
結局TVのほうへ行ってしまいました。
「ザルツブルク・コネクション」はいま一つでした。スパイものだったと思いますが、「フレンチ・コネクション」を意識したタイトルから判断して犯罪ものだったかも。
オカピー
2015年02月01日 21:43
ねこのひげさん、こんにちは。

>ロードショー
十瑠さんは僕より少し上で僕の姉くらい、ねこのひげさんはさらにもう少し上で僕の兄くらいの感じがします。
僕も観ようと思えば観られたけど、地元に来たかどうかは定かでないです。多分来たかな。

>最後
「明日に向って撃て!」「イージー・ライダー」、ニューシネマにおける反権力の青年たちは命を散らすことが多かったですね。

この記事へのトラックバック

  • バニシング・ポイント

    Excerpt: (1971/リチャード・C・サラフィアン監督/バリー・ニューマン、クリーヴォン・リトル、ディーン・ジャガー/106分) Weblog: テアトル十瑠 racked: 2015-01-30 10:04
  • 映画評「さらば冬のカモメ」

    Excerpt: ☆☆☆★(7点/10点満点中) 1973年アメリカ映画 監督ハル・アシュビー ネタバレあり Weblog: プロフェッサー・オカピーの部屋[別館] racked: 2016-04-04 09:13