映画評「キューティー&ボクサー」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督ザカリー・ヘインザーリング
ネタバレあり

現代美術には大して興味のない僕だから名前こそ憶えていなかったが、段ボールで作ったオートバイの彫刻は知っている。その作者が本ドキュメンタリーの取材対象である篠原有司男で、彼のボクシング・ペインティングもTVで観たことがあった。

それくらい有名な芸術家でありながら、40年以上過ごすアメリカでは貧乏で、家賃を払うのも苦労している始末。ゴッホなど19世紀の画家たちより多少ましな程度で、自ら作品を売りに出る一幕も紹介されている。

しかし、本作の本当の主人公は、21歳年下の妻・乃り子で、将来に対する展望もない生活力に乏しい芸術家などと結婚するのではなかったと彼女の理性は語りつつ、彼の弟子を自認する芸術家としての彼女の情熱は、もう一度やり直すにしてもまたこの人と一緒に生きるだろうと語る。
 芸術家同士であるから芸術故の結びつきといった特殊な要素があるにしても、最終的に本作が浮かび上がらせるのは、彼女が自身の作品に名付けたように「愛は闘いである」という人生の真実である。

篠原有司男の天衣無縫の生き方があっての面白さであるが、結局闘いながら信頼し合っている夫婦愛を上手く浮き彫りにしている佳作と言うべし。

2015年鑑賞第一作は、実に地味な作品でした^^

この記事へのコメント

ねこのひげ
2015年01月12日 18:00
作品の何点かは、上野美術館に展示されているんですが、生活に困窮するほどとは思いませんでしたね。
同じ段ボールでもうまく世渡りしている奴がいるし、アニメキャラの盗作のような作品で何百万何千万も稼いでいるのがいるんですがね・・・・
やっぱり世渡り下手なのか。
東京芸大の就職率は現役卒業時で5%だそうですがね。
芸術かはいつの時代でも食いにくいことはたしかで、稼いでいるのは商売人ですな。
オカピー
2015年01月12日 19:19
ねこのひげさん、こんにちは。

>世渡り下手
どうもそのようですよ。
彼も日本に帰れば、前衛芸術の大御所として十分食べられるようですが、アメリカでの生活に固執しているようです。芸術家もどきで働いていない息子は日本語が(理解できるようですが)喋れませんですしね。

>芸術家
情報網の発達した現在ですから、画家ならちょっと成功すれば食べられるのでしょうけどねえ。それにはそれなりのテクニックがいるのでしょう。

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