映画評「曹操暗殺 三国志外伝」
☆☆(4点/10点満点中)
2012年中国映画 監督チャオ・リンシャン
ネタバレあり
勘違いしやすいが、「レッドクリフ」で描かれた中国はまだ三国時代ではなく後漢末期であり、本作の舞台はそれよりさらに十年近く後だから正に臨終の床で喘いでいる後漢が舞台である。
後漢最後の皇帝となった献帝(アレック・スー)の指令により曹操暗殺の為に拉致され育てられた子供らのうち、穆順(ボウジュン=玉木宏)は献帝の宦官として、恋人の霊雎(レイショ=リウ・イーフェイ)は魏王となった曹操の侍女として曹操(チョウ・ユンファ)に接近することが可能になるが、実は皇帝のことを親身に考えている曹操と接するうちに複雑な心境に至り、結局目的を果たすことなく死んでいく。
「三国志演義」では完全な悪役として置かれている曹操が皇帝思いの義人であったという、通俗的な曹操像とは逆のアングルで描いているのが一応興味深い。
が、暗殺者をカップルにしたことから、長い戦闘の日々に疲労した曹操晩年の心境を描くのか、暗殺者カップルのジレンマを描くのか、狙いが曖昧になった感あり。描写のバランスの関係で、晩年の曹操の苦悩のうちに、ジレンマに苦悩するヒロインの悲恋を描くという狙いを上手く実現できなかったというのが実際だろう。
全体としてまるで正史を読むような正攻法な堂々たる描写なのに、ごく限られたアクション描写においては近頃流行りの劇画的な処理になりすぎて一貫性がなく、気に入らない。
「三国志」は何故「三国史」ではないのか?
2012年中国映画 監督チャオ・リンシャン
ネタバレあり
勘違いしやすいが、「レッドクリフ」で描かれた中国はまだ三国時代ではなく後漢末期であり、本作の舞台はそれよりさらに十年近く後だから正に臨終の床で喘いでいる後漢が舞台である。
後漢最後の皇帝となった献帝(アレック・スー)の指令により曹操暗殺の為に拉致され育てられた子供らのうち、穆順(ボウジュン=玉木宏)は献帝の宦官として、恋人の霊雎(レイショ=リウ・イーフェイ)は魏王となった曹操の侍女として曹操(チョウ・ユンファ)に接近することが可能になるが、実は皇帝のことを親身に考えている曹操と接するうちに複雑な心境に至り、結局目的を果たすことなく死んでいく。
「三国志演義」では完全な悪役として置かれている曹操が皇帝思いの義人であったという、通俗的な曹操像とは逆のアングルで描いているのが一応興味深い。
が、暗殺者をカップルにしたことから、長い戦闘の日々に疲労した曹操晩年の心境を描くのか、暗殺者カップルのジレンマを描くのか、狙いが曖昧になった感あり。描写のバランスの関係で、晩年の曹操の苦悩のうちに、ジレンマに苦悩するヒロインの悲恋を描くという狙いを上手く実現できなかったというのが実際だろう。
全体としてまるで正史を読むような正攻法な堂々たる描写なのに、ごく限られたアクション描写においては近頃流行りの劇画的な処理になりすぎて一貫性がなく、気に入らない。
「三国志」は何故「三国史」ではないのか?
この記事へのコメント
>「三国志」は何故「三国史」ではないのか?
三国志正史を書いた人物が、魏に滅ぼされた蜀の文官だったので、せめてもの反抗だったのでは?と考えています。
正式な王朝である魏を中心に書かなくてはならない中で、「史実ではなく、あくまでフィクションだ!」と暗に伝えていたのかもしれません。
韓国映画も香港映画も観る人が減って、かく言う僕も観るチャンスがあってもかなりスキップしているのですが、そんな事情もあってかアクセス数の少ないこの記事にコメント戴き有難うございます。
正史「三国志」は読もうと思いつつ、結局楽な「三国志演義」で済ませてしまったので、その辺の事情は疎いままです。
十分ありそうですね。参考にさせて戴きます<(_ _)>
北方健二さんが書いた三国志は史実に基づいて書いたので平等に描いたとご本人が書いておられましたよ。
どこまで、史実に近づけたかは誰にもわからんことでありますけどね。
100年も経っていない太平洋戦争でさえ、自虐史観だ、いやそうじゃない、といった論争があるくらいですからね。1800年も前のことは解りませんや。