映画評「複製された男」
☆☆★(5点/10点満点中)
2013年カナダ=フランス=スペイン合作映画 監督ドニ・ヴィルヌーヴ
ネタバレあり
「灼熱の魂」「プリズナーズ」が続けて見事な出来栄えだったドニ・ヴィルヌーヴの新作で、「ブラインドネス」の原作者でもあるノーベル文学賞受賞者ジョゼ・サラマーゴの小説の映画化。戦後のノーベル受賞者の作品は、余りに形而上的すぎて、僕程度の文学愛好者では歯が立たないことが多い。観る前は原作者を含めてお話に関する情報を得ないのが僕の原則であるわけだが、難解な印象をそうした情報が裏打ちした形である。
平凡な歴史教師アダム(ジェイク・ギレンホール)が、同僚教師に勧められた観た映画DVDに、自分と瓜二つの端役男優を発見、サイトでその名前を調べて事務所から情報を盗む。
アンソニーというその役者(ジェイク二役)には、妊娠6か月の妊婦ヘレン(サラ・ガドン)がいて、アダムが彼にかけた不審な電話を昔の愛人メアリー(メラニー・ロラン)絡みのことと疑う。やがて、アンソニーとアダムとは服を交換して互いのダーリンの許に行くことになるが、アンソニー扮するアダムが別人と気付いたメアリーが騒ぎ出し、車での口論が元で二人とも事故死してしまう。
見た目通りに理解すれば極めて不条理なお話ということになるが、最初の秘密クラブでの描写が現実と考えると、案外単純なのかもしれない。
つまり、ヘレンと共にいる歴史教師アダム(実際の名前はアンソニーだと思う)の脳内幻想が、メアリーと俳優アンソニーが交通事故死した瞬間に終わる。換言すれば、歴史教師アダムは、幻想が生み出した俳優としてのアンソニーが事故で消えた瞬間、アンソニーと合一し、歴史教師アンソニーになる(戻る)のである。ややこしいですな(苦笑)。実世界のヘレンは教師の妻ということになるから「学校はどう?」と聞くのであろう。
平凡な教師が変幻自在の俳優に憧れた精神世界を映像化したと僕は勝手に思っている。原作もこの映画の題名により翻訳されているので、実際に読んで解説に当たればこの解釈が当たっているか解るだろう。当たっていたら、何かくれます?
しかし、映画言語的に合理的に作られていた前作「プリズナーズ」に比べて一人合点の部分が多く、現時点では余り誉められない。しかし、再鑑賞すれば評価が変わる可能性はある。
蜘蛛が嫌いな人は見ない方が無難かもね。
2013年カナダ=フランス=スペイン合作映画 監督ドニ・ヴィルヌーヴ
ネタバレあり
「灼熱の魂」「プリズナーズ」が続けて見事な出来栄えだったドニ・ヴィルヌーヴの新作で、「ブラインドネス」の原作者でもあるノーベル文学賞受賞者ジョゼ・サラマーゴの小説の映画化。戦後のノーベル受賞者の作品は、余りに形而上的すぎて、僕程度の文学愛好者では歯が立たないことが多い。観る前は原作者を含めてお話に関する情報を得ないのが僕の原則であるわけだが、難解な印象をそうした情報が裏打ちした形である。
平凡な歴史教師アダム(ジェイク・ギレンホール)が、同僚教師に勧められた観た映画DVDに、自分と瓜二つの端役男優を発見、サイトでその名前を調べて事務所から情報を盗む。
アンソニーというその役者(ジェイク二役)には、妊娠6か月の妊婦ヘレン(サラ・ガドン)がいて、アダムが彼にかけた不審な電話を昔の愛人メアリー(メラニー・ロラン)絡みのことと疑う。やがて、アンソニーとアダムとは服を交換して互いのダーリンの許に行くことになるが、アンソニー扮するアダムが別人と気付いたメアリーが騒ぎ出し、車での口論が元で二人とも事故死してしまう。
見た目通りに理解すれば極めて不条理なお話ということになるが、最初の秘密クラブでの描写が現実と考えると、案外単純なのかもしれない。
つまり、ヘレンと共にいる歴史教師アダム(実際の名前はアンソニーだと思う)の脳内幻想が、メアリーと俳優アンソニーが交通事故死した瞬間に終わる。換言すれば、歴史教師アダムは、幻想が生み出した俳優としてのアンソニーが事故で消えた瞬間、アンソニーと合一し、歴史教師アンソニーになる(戻る)のである。ややこしいですな(苦笑)。実世界のヘレンは教師の妻ということになるから「学校はどう?」と聞くのであろう。
平凡な教師が変幻自在の俳優に憧れた精神世界を映像化したと僕は勝手に思っている。原作もこの映画の題名により翻訳されているので、実際に読んで解説に当たればこの解釈が当たっているか解るだろう。当たっていたら、何かくれます?
しかし、映画言語的に合理的に作られていた前作「プリズナーズ」に比べて一人合点の部分が多く、現時点では余り誉められない。しかし、再鑑賞すれば評価が変わる可能性はある。
蜘蛛が嫌いな人は見ない方が無難かもね。
この記事へのコメント
最近、地上波でも深夜に映画が復活してきてうれしい限りでありますが、寝不足になります。
民放衛星放送の洋画放映は、吹き替えが多くて残念。当初は字幕が多かったと記憶していますがねえ。
地上波は仕方がないでしょうね。