映画評「サード・パーソン」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2013年アメリカ=ベルギー=ドイツ=フランス=イギリス合作映画 監督ポール・ハギス
ネタバレあり

ポール・ハギスという脚本家は、世評ほどは買わなかった「クラッシュ」(2004年)に代表されるように時空をバラバラにして若しくは並行して描くのが好んでいる。一時期この手の趣向が大流行したが、最近はオーソドックスな回想形式型は大量に作られていながらも、時系列操作型は相当減っている。

そんな中でまた群像劇風なドラマを並行進行させていくので「またか」という思いがしたものの、序盤作家リーアム・ニースンに対し、その原稿を斜め読みした愛人の作家志願オリヴィア・ワイルドが「自分なのに“彼”と書くのね」というところで、作劇上のヒントがここにあると、40余年映画を観てきた勘が働く。

ローマ、仕立服のコピー製品を売り歩いている実業家エイドリアン・ブロディが、感じの悪い酒場でロマ人美女モラン・アティアスに興味或いは好意を持ち、彼女が不良男(子供の父親?)に奪われた娘を奪い返すために大金を用意する羽目になる。ニューヨーク、息子への暴力疑惑で孤立してしまった元TV女優ミラ・クニスがホテルと清掃係として勤め始めるが、支援者や精神科医からも見放され、夫(元夫?)ジェームズ・フランコのせいで息子に会うこともできない。

という二つの挿話が、パリで新作を書いている作家と愛人の交情と並列して描かれるのであるが、この挿話はいずれも彼の作品の中の出来事である。
 共通点は男女の間に子供を巡っての確執があることで、作家は子供を失った自分たち夫婦を登場人物に反映する。例えば、ニューヨークのフランコには過失で子供を死なせた罪深い自分を反映し、ミラには子供を喪失した妻キム・ベイシンガーを反映する。ブロディもモランも同様である。ブロディのコピー服は自分の実人生を作り直す自作への自虐かもしれない。

作品としては、電話番号を書きつけたメモを介して時空(作品世界と現実)を交錯させるといった辺りに面白味があるわけであるが、これがハギスの限界でもあって、世間はともかく僕個人としては、ストレートな話を正攻法に見せた時彼が本当に後世に名を残す脚本家・監督であるか見当をつけたいと思う。ただ、小説家の書き続けている内容をそれと明かすことなしに並行進行させるアイデアと、小説を書くということについて思索したくなるところは少し買っておきたい。
 主人公が小説を書いていることになっているパリについても小説内ではないという保障はなく、そう考えるともう少し面白く感じられる。

これもまた創作についての物語。このお話を、登場人物への共感度で評価しますか。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2015年07月05日 07:34
自分らしさというか独創的な表現方法を見つけ出そうとしているんだろうけど、普通に映画を作ったときにどんな作品を作り出せるんでしょうかね?
オカピー
2015年07月05日 18:38
ねこのひげさん、こんにちは。

手法によって感動を深めるという手段はあっても良いと思いますが、40歳を過ぎたくらいから「それは本物ではないのではないか」という観念が芽生え始めましたね。
完全な正攻法でなくても、自然に映るようになったら本物かなあ。

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