映画評「LUCY/ルーシー」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2014年フランス映画 監督リュック・ベッソン
ネタバレあり
リュック・ベッソンが自らの脚本を映像化したこのSF映画は、人間は何故存在するのか、宇宙の果てはあるのだろうか、などと考えたことがある人なら相当楽しめる作品である。僕にとっては彼の女性アクション映画のベスト。
台北に留学しているスカーレット・ヨハンソンは1週間前に知り合ったばかりの不良に荷物のお届を頼まれたことから、韓国人マフィアのチェ・ミンシクの麻薬闇取引に巻き込まれてしまう。
粉の入った青い袋を腹部に封入された彼女は腹部を叩かれた衝撃で物質に侵食されるが、その麻薬が極めて特殊であった為に彼女の脳は進化を始め、徐々に超人化する。
人類は脳の能力をほんの僅かした使っていないと言われる説(本作では10%としている)に基づいて、その使用率の上昇に応じて可能になることがどんどん増え、他人をコントロールすることさえできるようになったから、彼女はチェ・ミンシクが繰り出す子分たちなど怖くもなんともない。初めて運転する自動車も離れ業の連続。
といった辺りがアクション映画としての面白さになっていて、VFXも交えたカー・アクションは大した見どころであるが、断然興味深いのは、ベッソンが恐らく真面目に哲学を語っている部分である。この類の作品によくある“おためごかし”とは違うと感じる。
超人になったヒロインは、人は無限を恐れるので数字により単純(限定)化する、と言う。僕などは宇宙にも際限があること、宇宙のない時があったこと(宇宙のない時には時間さえないはずだが)を考えると、非常に不思議な感覚に捉えられる。これが彼女の言う“恐れ”なのかもしれない。
ヒロインが後半コンタクトすることになる脳科学者モーガン・フリーマンによれば、種の保存は永遠を(永遠に)生きられない生命即ち生き物の対抗策なのだそうだ。そこで進化も偶発的に起きるわけであるが、「2001年宇宙の旅」(1968年)に似てヒロインは超人に進化する。最後には恐らく神(自然)になってしまうのだが、ヒロインがルーシーと名乗る所以である最初の人類(猿人)であるルーシーとも時空を超えて接触する。多分ヒロイン自身が「2001年」の猿人の触れる骨の役目を負い、接触することで猿だったルーシーは猿人に進化するのであろう。生命進化のループが完成し、ここにニーチェが「ツァラトゥストラはかく語りき」で言及した【永劫回帰】が成り立つ。こうなると「2001年」そのものではないか。
しかし、Yahoo!映画を覗いてみたら、専らSFアクション的に捉えて「面白くない」と言っている人が多い。実に勿体ない。
台湾なのに韓国人が悪役として登場するのは、意図的か単なるミスか。
2014年フランス映画 監督リュック・ベッソン
ネタバレあり
リュック・ベッソンが自らの脚本を映像化したこのSF映画は、人間は何故存在するのか、宇宙の果てはあるのだろうか、などと考えたことがある人なら相当楽しめる作品である。僕にとっては彼の女性アクション映画のベスト。
台北に留学しているスカーレット・ヨハンソンは1週間前に知り合ったばかりの不良に荷物のお届を頼まれたことから、韓国人マフィアのチェ・ミンシクの麻薬闇取引に巻き込まれてしまう。
粉の入った青い袋を腹部に封入された彼女は腹部を叩かれた衝撃で物質に侵食されるが、その麻薬が極めて特殊であった為に彼女の脳は進化を始め、徐々に超人化する。
人類は脳の能力をほんの僅かした使っていないと言われる説(本作では10%としている)に基づいて、その使用率の上昇に応じて可能になることがどんどん増え、他人をコントロールすることさえできるようになったから、彼女はチェ・ミンシクが繰り出す子分たちなど怖くもなんともない。初めて運転する自動車も離れ業の連続。
といった辺りがアクション映画としての面白さになっていて、VFXも交えたカー・アクションは大した見どころであるが、断然興味深いのは、ベッソンが恐らく真面目に哲学を語っている部分である。この類の作品によくある“おためごかし”とは違うと感じる。
超人になったヒロインは、人は無限を恐れるので数字により単純(限定)化する、と言う。僕などは宇宙にも際限があること、宇宙のない時があったこと(宇宙のない時には時間さえないはずだが)を考えると、非常に不思議な感覚に捉えられる。これが彼女の言う“恐れ”なのかもしれない。
ヒロインが後半コンタクトすることになる脳科学者モーガン・フリーマンによれば、種の保存は永遠を(永遠に)生きられない生命即ち生き物の対抗策なのだそうだ。そこで進化も偶発的に起きるわけであるが、「2001年宇宙の旅」(1968年)に似てヒロインは超人に進化する。最後には恐らく神(自然)になってしまうのだが、ヒロインがルーシーと名乗る所以である最初の人類(猿人)であるルーシーとも時空を超えて接触する。多分ヒロイン自身が「2001年」の猿人の触れる骨の役目を負い、接触することで猿だったルーシーは猿人に進化するのであろう。生命進化のループが完成し、ここにニーチェが「ツァラトゥストラはかく語りき」で言及した【永劫回帰】が成り立つ。こうなると「2001年」そのものではないか。
しかし、Yahoo!映画を覗いてみたら、専らSFアクション的に捉えて「面白くない」と言っている人が多い。実に勿体ない。
台湾なのに韓国人が悪役として登場するのは、意図的か単なるミスか。
この記事へのコメント
意図的でしょうな。
麻薬によりスーパーマンになるというのはあり得ますからね。
覚せい剤などもパイロットが眠くならないようにするために開発されましたからね。
いずれ、脳みそに効いて超天才になる麻薬が作り出される気がします。
切れたらアホの坂田になる可能性が大でありますけどね。
先般観た「ケープタウン」には、黒人だけ殺し合うようにする麻薬が出てきました。それ自体は失敗したわけですが、南アではそういう企画が本当にあったようです(?)。成功したらホロコーストだったですね。