映画評「フューリー」(2014年)
☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年アメリカ=イギリス=中国合作映画 監督デーヴィッド・エアー
ネタバレあり
1978年にブライアン・デ・パルマが作ったサスペンスと同じ邦題(原題は本作"Fury"、かの作"The Fury")であるが、全く関係のない戦争映画である。
ナチス・ドイツが敗れヒトラーが自殺する直前の1945年4月、連合軍はドイツに進攻するが、敵側の捨て身の作戦に予想外の苦戦を強いられる。軍曹ブラッド・ピットをリーダーとするアメリカの戦車部隊は、タイプライティングしか習っていないという新兵ローガン・レーマンを押し付けられ、その純情ぶりに困惑しつつ厳しく鍛えるうちに他の戦車を尽くやられて孤立し、たった5人で数百名のドイツ軍と戦う羽目になる。
というお話で、他の三人はこの間まで高校生役だったシャイア・ラブーフ、マイケル・ペーニャ、ジョン・バーンサルという顔ぶれで、個性的なつわものどもばかり。
しかし、さしものつわものも超人にあらず、多勢に無勢で次々と死地へ向かい、結局一人生き残ったレーマンが英雄になってしまう。
最近の戦争映画であるから基本はリアリズムである。特に人の殺し方がリアルと言えばリアルである一方、ここまでやる必要はないと思われるくらい人体損壊度がひどい。それでも日本ではこれが“General”というレイトで済んでいる。日本は本当に暴力に関しては甘い。
ところが、戦闘場面が一向にリアルでない。通常の銃撃がまるでSF映画のレーザー光線みたいに処理されているのだから呆れる。作戦面でもアメリカ側は無謀であるし、ドイツ側は無能である。
ドラマ的には、宗教を多く介在させている。レーマン君は宗教的な理由で人殺しは嫌いであるし、ラブーフはあだ名が“バイブル”で聖書に詳しく、ピットも最後に聖書に関する知識を披露する。一番粗野なバーンサルにしても自分たちが生き残ってきた理由を否定的であっても神と関連付けないわけにはいかない。
しかし、いくら宗教が“殺人”を禁じても戦争ではタブーを犯さなければらならない。信心深い若者にしても、知り合ったドイツ人女性(アリシア・フォン・リッツバーグ)が建物を破壊されて死んでから、ナチスをやっつけるという復讐心を持ってしまう。人間的には望ましくない“成長”であるが、これが戦争の狂気というものである。
彼女たちとの短い時間で見せるピットの様子から、彼も最初はレーマン君のように初心であったのだろうと想像させる。戦歴が彼をタフな男に変えたのだ。
ただ、僕にはこのドラマ部分が余りピンと来ず、大部分を占める戦闘場面に各人の心情が沈潜している感じが一向にして来ない以上、やはり戦闘場面を見せ場とした作品と理解するほかない。その戦闘場面に色々と問題があるのだからそう誉められないが、それでも迫力ある戦争大作という評価は何とかできる。
昔のアナログ戦争映画がやはり好きです。
2014年アメリカ=イギリス=中国合作映画 監督デーヴィッド・エアー
ネタバレあり
1978年にブライアン・デ・パルマが作ったサスペンスと同じ邦題(原題は本作"Fury"、かの作"The Fury")であるが、全く関係のない戦争映画である。
ナチス・ドイツが敗れヒトラーが自殺する直前の1945年4月、連合軍はドイツに進攻するが、敵側の捨て身の作戦に予想外の苦戦を強いられる。軍曹ブラッド・ピットをリーダーとするアメリカの戦車部隊は、タイプライティングしか習っていないという新兵ローガン・レーマンを押し付けられ、その純情ぶりに困惑しつつ厳しく鍛えるうちに他の戦車を尽くやられて孤立し、たった5人で数百名のドイツ軍と戦う羽目になる。
というお話で、他の三人はこの間まで高校生役だったシャイア・ラブーフ、マイケル・ペーニャ、ジョン・バーンサルという顔ぶれで、個性的なつわものどもばかり。
しかし、さしものつわものも超人にあらず、多勢に無勢で次々と死地へ向かい、結局一人生き残ったレーマンが英雄になってしまう。
最近の戦争映画であるから基本はリアリズムである。特に人の殺し方がリアルと言えばリアルである一方、ここまでやる必要はないと思われるくらい人体損壊度がひどい。それでも日本ではこれが“General”というレイトで済んでいる。日本は本当に暴力に関しては甘い。
ところが、戦闘場面が一向にリアルでない。通常の銃撃がまるでSF映画のレーザー光線みたいに処理されているのだから呆れる。作戦面でもアメリカ側は無謀であるし、ドイツ側は無能である。
ドラマ的には、宗教を多く介在させている。レーマン君は宗教的な理由で人殺しは嫌いであるし、ラブーフはあだ名が“バイブル”で聖書に詳しく、ピットも最後に聖書に関する知識を披露する。一番粗野なバーンサルにしても自分たちが生き残ってきた理由を否定的であっても神と関連付けないわけにはいかない。
しかし、いくら宗教が“殺人”を禁じても戦争ではタブーを犯さなければらならない。信心深い若者にしても、知り合ったドイツ人女性(アリシア・フォン・リッツバーグ)が建物を破壊されて死んでから、ナチスをやっつけるという復讐心を持ってしまう。人間的には望ましくない“成長”であるが、これが戦争の狂気というものである。
彼女たちとの短い時間で見せるピットの様子から、彼も最初はレーマン君のように初心であったのだろうと想像させる。戦歴が彼をタフな男に変えたのだ。
ただ、僕にはこのドラマ部分が余りピンと来ず、大部分を占める戦闘場面に各人の心情が沈潜している感じが一向にして来ない以上、やはり戦闘場面を見せ場とした作品と理解するほかない。その戦闘場面に色々と問題があるのだからそう誉められないが、それでも迫力ある戦争大作という評価は何とかできる。
昔のアナログ戦争映画がやはり好きです。
この記事へのコメント
『フューリー』・・・・ボガードの『サハラ戦車隊』のような内容を想像していたんですけどね~少数対多数ですからね。
ねこのひげは宮崎駿さんと一緒で、戦争は嫌いですが、戦車や戦闘機などの戦争の道具は好きなんですよね~
だから本物のタイガー戦車が出てくるだけでワクワクだったんですがね。
世界で一台しか残っていないタイガー戦車を博物館から借りてきたそうであります。
しかし、話がドラマが・・・・ねぇ?
まあ、ねこのひげも戦闘シーンだけで良しとしました。
20km南に雷雲が発生、夜半にかけてこちらに襲来することが予想されますので、早々にレスをして電源を落としますです。一日で壊れたらお話になりませんからねえ。
>『サハラ戦車隊』
着想的には似ていますね。
コンパクトでなかなか面白い作品でした。詳細は忘れましたが(笑)
>宮崎駿さん
僕も戦争は嫌いですが、戦車は嫌いでないですね。一番わくわくしたのが「バルジ大作戦」ですね。これと同じ素材を扱ったらしい「バトル・オブ・バルジ」という未公開作品がWOWOWに出るのですが、忙しいのでスキップです^^