映画評「マンデラ 自由への長い道」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年イギリス=南ア合作映画 監督ジャスティン・チャドウィック
ネタバレあり

一昨年亡くなった南アの元大統領ネルソン・マンデラについて、服役中は「マンデラの名もなき看守」、釈放されてからは「インビクタス/負けざる者たち」を観ている。彼が率いることになったANC(アフリカ民族会議)に関しても「輝く夜明けに向かって」を観た。つまり、新味という点では大いに不満があるわけだが、きちんとした作品ということで評価したくなった。

第二次大戦後黒人弁護士として活動していたネルソン(イドリス・エルバ)は、アパルトヘイト廃止を目指すANCに誘われて所属する一方、最初の妻との離婚後民生委員をしている美人ウィニー(ナオミ・ハリス)と再婚するが、数年後の1960年代初めテロ行為に転じて仲間と共に逮捕され、全員終身刑になる。
 その後ひどい扱いを受けるのは「マンデラの名もなき看守」で観たとおりで、後半出て来る温和そうな看守がその名もなき看守なのだろう。看守と囚人が双方で伝記を書いた珍しいケースということになりますな。

が、南アの差別政策を変えるのは、南アの黒人より先に世界的な動きであった。1980年代後半先進国が黒人差別をする南アを締め付け始めたのである。かくして解決を目指す白人政府は南アの黒人にとってアイドルであるネルソンを色々と懐柔し、特別な専門監獄(官憲付き別荘の趣き)に移して対話を繰り返すうちに、彼を釈放することに決定する。それが却って平和派と武闘派の黒人同士の対立に火をつけて収拾がつかなくなった為政府は彼が当選することの解りきっている選挙を行うことにするのである。

(伝記)映画としては正統派中の正統派で、どこと言って創意工夫をしているわけではないが、おかげでじっくり鑑賞できるのが良い。自分の不在の間に過激派に変身した妻を寂しく思いつつ静かに抵抗を続け、自分が白人を許せたのだから他の人も許せるであろうと釈放後も平和を唱え続け遂には大統領になってアパルトヘイトを終止符を打つネルソン・マンデラの姿には感動を誘われる。「大統領の執事の涙」同様平凡だが落涙させられるというタイプの作品である。

ジョン・レノンが“ラック・オブ・ジ・アイリッシュ”で「アイルランド人の運命を背負わされたら、きっと辛くて死んだ方がましと思うだろう」と歌ったように、「死んだ方がまし」と思わざるを得ない黒人の悲惨さを見るだにぞっとする。日本に生まれて良かったと思う。勿論それは僕らがあらゆる面でマジョリティーであるということもあるのだが。

「遠い夜明け」も 遠くになりにけり

この記事へのコメント

ねこのひげ
2015年08月09日 07:57
ねこのひげなどは、あんなところに1週間もいたら完全におかしくなっちゃうでしょうね。
1日でもなるかも・・・・(@_@)
オカピー
2015年08月09日 09:32
ねこのひげさん、こんにちは。

当時の南アに限らず、アフリカには生まれたくないですね。
一時的にでも怖すぎる。

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  • マンデラ 自由への長い道 ★★★.5

    Excerpt: 2013年12月5日に逝去した元南アフリカ大統領、ネルソン・マンデラの「自由への長い道 ネルソン・マンデラ自伝」を実写化した伝記ドラマ。人種隔離政策アパルトヘイトに挑む闘士から大統領となった彼が歩んだ.. Weblog: パピとママ映画のblog racked: 2015-08-08 21:50